宮崎合宿打ち上げの侍J、調整は順調? 状態良い投手陣に対し打線が気がかり

中島大輔

百戦錬磨の宮西が得た新たな引き出し

宮西は本番を想定し、クイックで投げる練習を行った 【写真は共同】

 また、この合宿で特に状態の良さを感じられたのは牧田和久、増井浩俊、宮西尚生というリリーフの鍵を握る3投手だった。3人ともこの日ブルペン入りし、キレのあるボールを投げていた。クローザー候補の平野佳寿、松井裕樹ともにWBC球への適応に不安を残しているだけに、抑えの経験もある牧田、増井がその役割に回ることもあるかもしれない。

 権藤博ピッチングコーチはブルペンの起用法について「メンバーがそろっているから、ボンボン突っ込んでいく」と語り、選手たちも「言われたところで行く」と話し、何度も肩をつくり直すことも厭わないとしている。

 しかし、2015年11月のプレミア12ではブルペンの起用法が明確になっておらず、「やりづらかった」と話した投手たちが敗退の要因になったことを考えれば、今回のWBCでは中継ぎ陣の役割をある程度はっきりさせておくべきだ。小久保監督は前日の試合後に「いまは3月7日に向けてどの形がベストなのかを探っている時期」と話しており、これから見極められていくだろう。

 何度も言うが、超短期決戦、そして球数制限のあるWBCにおいて、鍵を握るのは中継ぎ陣だ。そのなかで“左殺し”を任される宮西は、さすが百戦錬磨のリリーフと言える投球練習を見せていた。ランナーがいることを想定しながら目で確認し、クイックで投げていく。こうした練習方法が本番での好結果につながるのだろうと思って聞いてみると、普段は行っていないという。

「僕は(ブルペンで)クイックをあまりせず、本番でぶつけるタイプです。今回、求められているのは中継ぎで、ランナーを背負った場面だと思います。それをこのチームでは大事にしないといけないと思ったので、クイックを意識してやりました」

気持ちの面が重要と話す牧田 【写真は共同】

 練習から本番を意識して想定できるのは能力や経験値の高さゆえだ。そうした武器に加え、侍ジャパンの相乗効果で新たな引き出しを増やしている。宮西は同じブルペンを任される牧田と話し、新たな視点を得ることができた。

「ランナーを背負ったときに、バッターやランナーとのタイミングをどう考えているのかを聞いたら、秒数を大事にしていました。僕のなかではまったくなかった考え方をされていたので、すごく勉強になりました」

 対して、投手陣で唯一前回大会を経験している牧田は、チームメートに伝えたいことについてこう答えた。

「技術はみんな素晴らしいものを持っているので、あとは気持ち次第。気持ちの面で、打たれてもいいから思い切って攻めていく投球だと思います」

本番まで1週間余り、残るは4試合

4番・筒香に期待が持てるだけに、5番以降のコンディションが大事になってくる 【写真は共同】

 宮崎での4日間は個々の調整に充てられたように、WBCで世界一奪還を果たすための最大のポイントは、それぞれがどれだけコンディションを上げられるかだ。その点で野手陣は前日の福岡ソフトバンク戦で菊池涼介が3安打、筒香嘉智が1安打を放ったのみと不安を残した。この時期はまだ調整段階だが、本番までには残り4試合しか組まれていない。

 小久保監督は「バッターはこれから。課題は実戦感覚を戻すこと」と話し、合宿4日目は前日に右肩を打撲した内川聖一を除いて特打が行われた。松田宣浩は「本番で結果を残すために必死こいてやっています。残り4試合、結果、内容にこだわりたい」と語った。4番・筒香のバットに期待が持てるため、その後を任される5番以降のコンディショニングが打線のポイントになる。

 宮崎合宿の4日間を振り返れば、投手陣が全体的にいい調整を送っているだけに、打線の状態が気にかかった。侍ジャパンの持ち味が投手陣であることは確かだが、野球は点を取らなければ勝つことはできない。本番までに個々の調整に任せつつ、チームとして得点していく方法をどこまで詰めていけるか。

 いよいよキューバ戦まで残り1週間余り。最後の詰めで状態を上げていけるように期待したい。

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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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