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明暗分かれた侍の命運握る4番候補
初実戦のソフトバンク戦で完封負け
侍ジャパンの初実戦に5番で先発出場した中田だが、無安打に終わった
侍ジャパンの初実戦に5番で先発出場した中田だが、無安打に終わった【写真は共同】

 快晴の2月25日、2万7003人の大観衆がKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎に訪れた。しかし、野球日本代表「侍ジャパン」はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けたオープニングマッチで、福岡ソフトバンクに0対2で完封負け。試合後、小久保裕紀監督は「サンマリンにあれだけのお客さんが来てくれたけど、試合内容はファンの方に納得してもらうものではなかった」と肩を落とした。


 指揮官は投手陣に関して「松井(裕樹)以外は思ったところに投げられたと思います」と評価した一方、打線については「(3安打の)菊池(涼介)1人が目立った形」と話した。チーム全体で計4安打、菊池を除いてヒットを記録したのは筒香嘉智のみだった。


 もちろん、この試合はあくまで調整の位置付けであり、結果が問われるものではない。だが、試合後に特打が行われたように、本番に向けて不安を残したのは事実だ。

「状態は悪くない」も無安打の中田

 そのなかで明暗分かれたのが、侍ジャパンの4番を争ってきた2人だった。


「いまの段階では順調かなと思います」。状態をそう説明したのが、小久保監督から4番に指名された筒香だ。一方、5番に入った中田翔は、「状態は悪くない」と語っている。しかし、3打席ともに自分のスイングをできていなかった。


 筒香が安打を放って2死一、二塁で迎えた初回の中田は、東浜巨が外角低めに投じたスライダーに合わせにいくような形でショートゴロ。4回の第2打席では、先頭打者の筒香が四球を選んだ直後、外角低めのチェンジアップにタイミングを外されショートへの併殺に倒れた。7回、またしても無死一塁で迎えた第3打席は、140キロの内角ストレートに差し込まれてセンターフライに倒れている。


「特打ではいい感じで打てている。いまの段階で、とやかく言われることではない」


 帰りのバスに乗り込む直前、中田はそう言い残した。確かに、WBC本番までに状態を上げてくればいい話だ。もともと好不調の波が激しい打者であり、当たり出したら手をつけられないのは2015年のプレミア12でも実証済みである。


「(初戦のキューバ戦まで)あと10日あるので大丈夫でしょう。彼が打たないと話にならないですね」


 試合後、小久保監督は中田への変わらぬ信頼を口にしている。仮に状態が上がらなかったとしても、「クリーンアップは基本いじらない方向」と明かした。ただし、1敗が重くのしかかるWBCの超短期決戦で、そうした戦い方で「世界一奪還」までたどり着けるのだろうか。

打撃技術の高さを見せた筒香の一打

 中田の状態が上がるにこしたことはないが、仮にそうならなかったときに備えて、プランBを用意しておく必要はないのか。そう感じるのは、4番の筒香が内容のある打席を見せたからだ。打撃技術の高さを見せたのが初回で、外角のシュートにうまく体を残してレフト前に弾き返している。


「打球が自然に向こうに行きました。2ストライクだったので、ホームランを狙いにいくという感覚はなかったです」


 状況に応じての軽打は、状態が上がっていることを感じさせた。続く2、3打席目はボール球をきっちり選び、ともに四球で出塁している。


「(キャンプで)沖縄にいるときよりボールに合ってきました。ただ、自分のなかでまだ完璧に合っている感じではありません。キャンプ中にいろいろ試してやっていく中で、この方向というのは見えたので、そこを最後に詰めて行く作業をしていきます」


 この日、2番の菊池は猛打賞。「(キャンプから)やってきたことが(結果として)出て良かったと思います」と言うように、順調に調整が進んでいる。


 4番に入る筒香がさらに状態を上げてくれば、自ずとチャンスが回ってくるのは5番だ。小久保監督は常々「筒香の後がポイント」と話してきたが、WBC本番でも勝敗を分けるポイントになる。指揮官がプランBを用意せずにクリーンアップを固定でいくと決めている以上、中田がどこまで状態を上げられるかが、侍ジャパンの命運を大きく左右する。

ストライクゾーンで勝負した武田

先発候補として名前が挙がる武田は3回を無失点に抑える好投
先発候補として名前が挙がる武田は3回を無失点に抑える好投【写真は共同】

 一方、投手陣は順調な調整ぶりを示した。特に、先発の武田翔太は3回無失点と結果を残し、「とてもいい感じ」と笑顔を見せた。初回こそ四球が絡んで21球を要したが、2、3回はカーブのコントロールがよくなり、計18球で6人を打ち取った。


「(WBC球で)今日はいい感じで投げられたと思います。2、3イニング目に球数が減ったのはツーシームを使って、できるだけストライクゾーンで勝負する方向性に変えたからです。いい材料になりました」


 2番手以降は千賀滉大、藤浪晋太郎、平野佳寿、松井、秋吉亮が登板した。8回に上がった松井は先頭打者を含む2つの四球、さらにエラーが絡んで失点と課題を残した。前日のブルペンでも納得いかない様子を示していただけに、どこまで調整のペースを上げられるか気になるところだ。


 また8回の守備で、ファーストに入った内川聖一が相手走者と交錯して途中交代した。試合後に宮崎市内の病院に向かい、右肩の打撲と診断された。右の代打として欠かせない戦力であるだけに、脱臼や骨の異常で戦線離脱することにならなかったのは不幸中の幸いだ。


 課題と収穫がともにあったソフトバンク戦を終え、WBC本番までの実戦機会は残り4試合。小久保監督は「いまは3月7日に向けてどの形がベストかを探っている時期。課題というより、個々の状態を限られた時間で上げていくしかない」と話した。


 本番まで残り9日間で選手それぞれが状態を上げ、チームとしての戦い方を細かく決めていけるか。その二つをどこまで詰めていけるかで、WBCの結果は大きく変わってくる。

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』(新潮新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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