世界一へ集中力高めるベネズエラ エース・ヘルナンデスの想い

丹羽政善

南米チームに共通する情熱

メジャー通算400本塁打を超えるカブレラを中心とした攻撃陣は今大会でも随一。やや不安なベネズエラ投手陣をバックアップする 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 さて、キャンプインし、調整を本格化させたヘルナンデスにライバルを挙げてもらうと、「ドミニカ共和国、プエルトリコ、米国」の3カ国の名前を口にし、続けた。

「特に、前回勝ったドミニカ共和国には、ウチのチームのロビー(ロビンソン・カノ)、ネリー(ネルソン・クルーズ)も出場するから、厄介だ」

 確かに、そのドミニカ共和国もプエルトリコも、ベストメンバーをそろえた。そんな戦力に加え、彼らに共通するのは、情熱だという。決してそこは侮れない。

「彼らはみんな、勝ちたいという思いが強い。そこで負けるわけにはいかない」

 それにしてもなぜ南米のチームは、大事なシーズン前に故障するリスクも顧みず、ここまで本気になれるのか。その問いにヘルナンデスは、「それは、日本も同じじゃないか」と応じたが、今回、日本人大リーガーの出場が青木宣親(アストロズ)1人にとどまった。それぞれ優先する事情がWBCを上回った。

 そのことが腑に落ちなかったヘルナンデスだが、「やはり、南米の各国は、盛り上がりが違う」と説明している。

「みんな、世界で一番になることを期待している。試合も中継される。期間中はそれ一色になる」

「優勝の瞬間を味わいたい」

 ヘルナンデスには、WBCを利用してベネズエラでの野球熱を一時的なものではなく、もっと持続的で、国全体の底上げにつなげたいとの思いもある。 

「そのためにも、今回は勝たなくてはいけない」

 もちろん、それだけが理由ではない――。

「まぁ、俺自身もタイトルがほしい。マリナーズではプレーオフに出たことがないし、WBCでも準決勝止まり。今回こそ勝ちたい。前回、ドミニカ共和国の優勝をテレビで見たけど、俺もあの瞬間を味わってみたい」

 最大のハードルは決勝ラウンドよりむしろ、2次ラウンドか。おそらく、米国、ドミニカ共和国、プエルトリコとの争い。その中で、ドジャー・スタジアムで行われる決勝ラウンドへ進むのは2チームのみ。ヘビー級同士の熾烈な戦いが予想される。

 ただ、「その方が、盛り上がる」とヘルナンデス。彼は、初タイトルだけを見据え、まるで、ポストシーズンに臨むかのように集中力を高め、大会を迎えようとしている。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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