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重い?滑る?WBC球の投手への影響は!?
NPB球との違いを江尻慎太郎氏に聞く
左は日本プロ野球で使用される公式球、右はWBC球。ヤマの高さ、皮の質に違いがあるという
左は日本プロ野球で使用される公式球、右はWBC球。ヤマの高さ、皮の質に違いがあるという【スポーツナビ】

 第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月6日、韓国ラウンドから開幕する。「投手力で点を与えない野球」を公言する小久保裕紀監督の下、侍ジャパンは第2回大会以来3度目の世界一奪還を狙う。


 メジャーリーガーの参加はなかったとはいえ、日本プロ野球界の一流どころが顔をそろえた侍ジャパン投手陣は世界でも評価が高い。ただ、国際大会でも問題となってきたのは、日本プロ野球と国際大会では使用されているボールが違う点。過去にはなかなかボールに馴染まないまま自分の実力を発揮できないピッチャーも少なからずいた。


 今回は現役時代にメジャーリーグ・ダイヤモンドバックスのアリゾナ春季キャンプに参加し、通算216勝を挙げた剛球右腕カート・シリングとも投手リレーをしたという江尻慎太郎氏に実際に両方のボールを手にとってもらいながら、ボールの違い、その影響について話を聞いた。

ヤマが高いNPB球、低いWBC球

 一番の大きな違いはヤマ(ボールの縫い目)の高さです。日本のボールは高くて、WBC球はやや低いんです。それに、触っていると日本のほうが重いし、大きくてズシッと感じるんだけど、WBC球は滑りそうで怖いですね。WBC球は皮がドライで、硬い感じです。指にグッとフィットする感じがあまりしてこないです。握るときに力が入るので指にマメができやすいでしょうね。


 あとは、ロジンバッグがアメリカのほうが日本に比べてスティッキーというか、ネバネバします。乾いたボールにロジンバッグをつけるから指の間がベッタベタになるんですよね。ロジンバッグをしっかりつけないと投げづらいです。逆に日本はロジンがパサパサなんですけど、ボールが湿気を帯びている皮だから滑りにくい。僕は日本のボールではロジンバッグをあまり使わなかったのですが、WBC球では必要だと思います。


 ピッチャーはWBC球だと最初は力が入ると思います。ヤマがなくて乾いている感じなので、ボールも握りにくく、投げるときにギュッと力が入るので、最初は前腕が張るんじゃないでしょうか。


 それに、ピッチャーはかなり繊細なので、実際は抜けたりせず投げられるかもしれないんですけど、「抜けそう」「引っ掛かりそう」と思った瞬間に腕の振り方を本能的に変えちゃって、そこで意図した投球ができないこともあると思います。僕自身もアリゾナキャンプに行ったときは1週間ぐらい、日本に比べてきれいなボールが投げづらい、と感じていました。


 でも、ピッチャーって一生懸命きれいな回転のボールを投げようとしてしまいそうな気がします。慣れるまではうまく行かないのではと思いますが、選手自身が「自分の調子が悪いんじゃないか」と思ってしまうことが心配です。あまり考えすぎないほうがいいかもしれません。1週間ぐらいで慣れる人は慣れると思うんですけどね。

WBC球は芯をいかにずらすかが効果的

江尻氏に実際、両方のボールを手に取りながら違いを説明してもらった。WBC球はカット系の芯を外すボールのほうが効果的ではないかとのこと
江尻氏に実際、両方のボールを手に取りながら違いを説明してもらった。WBC球はカット系の芯を外すボールのほうが効果的ではないかとのこと【スポーツナビ】

 ちなみに僕は「アメリカでチェンジアップを覚えてこい」と言われたんですけど、向こうのボールを使っていると、腕を思い切り振っても、ボールがいい感じにシュッと抜けて、いいブレーキをしながら落ちていたんですよね。ただ日本のボールはヤマが大きくて皮の質もあって、チェンジアップを投げるときも引っ掛かってしまい、日本では投げるのをやめてしまいました。


 ほかの変化球で言えば、緩いカーブを投げるピッチャーの中では、日本のボールだと高い縫い目にうまく指をかけるイメージだと思うんですけど、WBC球だと縫い目がないからボール全部をひねって投げる感じで、ボールにうまく摩擦がかかってくれないのではないかと思います。変化球は「進行方向にどれだけ力を伝えるか」「回転方向にどれだけ力を伝えるか」の割合で、それに合う握りをすればいいと思っています。例えば緩いカーブだと、全体のうちに9をスピンに掛けて(回転方向)、1を前(進行方向)にすれば緩いカーブになるんですけど、WBC球はスピンのための9の力が入れづらい。6対4ぐらいの力の入れ具合になると、緩く曲げることは難しい。


 緩くて大きい変化球より、小さい変化の扱いがうまいというか、カット系を操れるピッチャーのほうがボールに合うと感じます。空振りを取るというより、芯をいかにずらすかというピッチングのほうが効果的かもしれません。なので、勝手な想像ですけど、メジャーリーグに行った藤川(球児/現阪神)とか和田(毅/現福岡ソフトバンク)とかストレートがきれいなタイプはアメリカのボールは投げづらかったんじゃなかったかな。ダルビッシュ(有/レンジャーズ)は自分のことを「変化球投手だ」って言うぐらい、曲げるのが得意なピッチャーだったから、向こうのボールにも合っているかもしれません。

NPB球に指1本触れなかったダル

侍ジャパンに選出されたメンバーは2月のキャンプからWBC球で練習に励んでいる(写真は巨人・菅野)
侍ジャパンに選出されたメンバーは2月のキャンプからWBC球で練習に励んでいる(写真は巨人・菅野)【写真は共同】

 そういえばダルビッシュでめちゃくちゃ印象的だったのは、彼が選ばれた第2回WBC前の春季キャンプで日本のボールに指1本たりとも触れなかったことですね。守備練習でもダルビッシュのときはWBC球で打つんですよ。でも誰かが間違ってダルビッシュにNPB公式球のほうを投げちゃったことがあったんですが、ダルビッシュはグラブでそのボールを取って、そのままグラブから放って返しましたからね。それだけWBCに懸けていたし、自分の感覚というものをすごく研ぎ澄ましていたキャンプでした。あらためてすごい男だな、と思いましたね。


 メジャーリーグに移籍した建山(義紀/前北海道日本ハム、レンジャーズほか)さんも日本で自主トレを一緒にしたときは一切日本のボールは触らなかったですね。ちょっとでも違和感が出るのが嫌だったんだと思います。


 今回、WBCに選ばれた一流ピッチャーがどう適応して、どんなピッチングをしてくれるのか。菅野(智之/巨人)や宮西(尚生/日本ハム)ら先発、中継ぎ、抑えで適材適所のピッチャーを選んでいるのが特徴的です。自分も見るのが楽しみですね。

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