明確な方針でステップアップ
スマイルJが向かう“理想的な到達地点”

結果を残した後に求められる発展型のスタイル

発展型の戦いを求められる中で、恐れずにFW陣が引かずにアグレッシブになることも求められる。写真は足立友里恵
発展型の戦いを求められる中で、恐れずにFW陣が引かずにアグレッシブになることも求められる。写真は足立友里恵【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 こうした徹底した強化策の末に、2大会連続五輪出場という結果を得ることができた。そこから浮き彫りになるのは「堅守と攻撃力向上」、「現実的戦略と一段上のプレースタイル」という対照的な要素の間のせめぎ合い、両立、移行の試行錯誤だ。


 向き合わなければならなかった現実とは、どうしても五輪切符を手にしなければならなかったこと。そうでなければ国民から集まった「スマイルジャパン」への注目が尻すぼみしかねなかった。


 だが、欲しかった五輪切符を注文通りに手にできる段階に達したからこそ、現実的な強化の先にある一段上のスタイルを手探りする一歩が求められる。その観点からは、ソチ五輪後の低迷にも意味があったと言える。「さらにステップアップするために、速いパス回しや個人技で得点力を向上させる試みだった」と、八反田強化副委員長が評価するように、進化の過程の一場面だったととらえられるからだし、着実に現在に受け継がれているからだ。


 世界最終予選では、現実的な堅守というスタイルをベースにしながらも、追求すべき発展型のプレーが垣間見えた。山中監督が「リスクを取って攻めなければ強豪からは得点できない。すぐにリカバリーできるスピードと体力がある」と語っている全員参加の攻撃だ。八反田強化副委員長が言う。

「パックを取られて反撃されるという怖さがあればなかなか積極的に攻め切れないもの。どうしてもFW3人うちの1人は常に引き目の位置にいて、守備的なところを意識したチェックなどに入ってしまいがちですが、そうではなかった。相手の脅威は十分に分かりつつ、常にアグレッシブにプレーができていたと思います」

若手選手の個人技の成長も

床秦留可(左)ら若手世代の技術力向上は平昌後のスマイルJにとって重要な要素
床秦留可(左)ら若手世代の技術力向上は平昌後のスマイルJにとって重要な要素【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 そして、もう一つ、個人技に関わる成長の息吹もあった。例えば、3月に20歳になる床秦留可。ソチ五輪代表から落選して悔しい思いをした彼女は、もともと視野の広いパスセンスを持っているのだが、「パックをしっかりキープできていた。だから彼女がパックを持てば、なかなか取られないし、そこから展開される攻撃はたいていチャンスにつながっていました」(八反田強化副委員長)


 個人技の根幹とは、パックのキープ力であり、「パックを意のままにできるということ」(八反田強化副委員長)。これを習得していれば、いつでもパスを出せるし(=速いパス回し)、ゴールも狙える。23歳の小池詩織や24歳の細山田茜らはアシストパスからダイレクトでゴールを狙うワンタイムシュートを積極的に放っていた。彼女ら10代や20代前半の若手が個人技を磨くことは、平昌の後を考えても重要なことであり、楽しみな要素ということになる。


 ただし、真価が問われるのは、世界ランクの下位と戦った世界最終予選でできたプレーを、上位国相手に表現できるかどうか。八反田強化副委員長は「カナダと米国に対しては簡単ではない」としつつも「3番手を争うチームとでは結構、通用するのではないか」との手応えも口にする。この見立て通りになったとき、飯塚元監督がつぶやいた理想に一歩近づけたことになるはずだ。

高野祐太

1969年北海道生まれ。業界紙記者などを経てフリーライター。ノンジャンルのテーマに当たっている。スポーツでは陸上競技やテニスなど一般スポーツを中心に取材し、五輪は北京大会から。著書に、『カーリングガールズ―2010年バンクーバーへ、新生チーム青森の第一歩―』(エムジーコーポレーション)、『〈10秒00の壁〉を破れ!陸上男子100m 若きアスリートたちの挑戦(世の中への扉)』(講談社)。

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