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ヤクルト廣岡は山田2世か池山2世か
周囲も認める逸材は野球漬けの日々

「大切に育てたい」と杉村コーチ

昨季のデビュー戦で初打席で初本塁打を放った
昨季のデビュー戦で初打席で初本塁打を放った【写真は共同】

 翌日のスポーツ紙には「山田2世」の文字が躍った。山田のことを廣岡が意識しているのは周知の事実である。確かにバットの構え方、左足のタイミングの取り方は山田にソックリだ。しかし、昔からのヤクルトファンとしては「背番号『36』の大型遊撃手」「空振りを恐れないフルスイング」といえば、「ブンブン丸」こと池山隆寛(現・東北楽天1軍チーフコーチ)の雄姿を、どうしてもだぶらせてしまうのだ。


 ルーキーイヤーとなる昨年は、ファームでリーグ最多の141三振を喫しながら、チーム最多となる10本塁打を放った。「三振か、一発か?」こそ、躍進著しかった頃の池山の姿を思い起こさせる。


 現に、杉村繁チーフ打撃コーチは池山の名前を引き合いに出し、「山田の2年目や池山の19歳の頃よりもずっと遠くに飛ばすことができる」と褒め、「タイプで言えば、山田というよりは、池山タイプだと思いますよ」と語った。杉村コーチによれば、スイング軌道の安定、ヘッドスピードの向上など、「まずは正しいフォームを固めることが大切」だが、それでも「ヤクルトにとって久しぶりの大型内野手を大切に育てたい」との思いも強い。


 ホームランを放ち、チームが勝利したこの日も、廣岡は試合終了後にグラウンドに残って、特打を行い、宿舎に戻ってからは夜間練習に励んだ。翌14日の韓国・起亜との一戦では「7番・ショート」でスタメン起用され、前日同様、試合終了までフル出場を果たした。印象的だったのは、自軍の攻撃が終わって守備位置につく際に廣岡は常に全力疾走をしていた。それは、19歳らしいがむしゃらさが垣間見えるいい光景だった。そして両日とも宿舎に戻ったのはチームで最後だった。

昨季のデビュー戦で初打席アーチ

 昨年のオフにはメキシコでのU−23ワールドカップ、台湾でのウインターリーグで武者修行をし、1月には尊敬する山田らともに愛媛県松山市で自主トレに励んだ。昨年から、まったく休みなしで猛練習を続けている。常にユニホームは泥だらけで白球と格闘している。


 練習中から一切手を抜かず、常に全力プレーを続ける廣岡に、老婆心ながら「疲れませんか?」と尋ねると、一笑に付された。


「大丈夫です。まだ、若いですから!」


 4月に誕生日を迎えてもなお、廣岡は20歳だ。確かに若い。プロ2年目、期待の「山田2世」は、「池山2世」であり、やがては「廣岡1世」として、「ミスタースワローズ」の象徴である背番号「1」を背負えるだけの素質に満ちている。


 昨シーズン最終盤、廣岡は1軍デビューを果たした。廣岡にとってのプロ初出場、初スタメンとなる9月29日の横浜DeNA戦は、同時に「番長」こと三浦大輔のラスト登板でもあった。「8番・ショート」で出場した廣岡は、初打席で番長から見事なホームランをたたき込む。史上59人目となる初打席初本塁打。高卒野手としては高木守道(元中日)以来となる56年ぶりの快挙だった。


 番長引退の日に颯爽(さっそう)とデビューした大型ルーキー。時代のバトンを確実に託された廣岡はスターの素質に満ちあふれている。天性の華はキャンプにおいても存分に発揮されていたけれど、満員の神宮球場では、さらに大きく、さらにまばゆいばかりの光彩を放つことだろう。


 首脳陣が起用したくなる逸材は、ライターにとっては書きたくなる存在であり、ファンにとっては金を払ってでも見たくなり、応援したくなる選手なのだろう。いちライターとして、これから何度も「廣岡大志」という文字を記すことだろう。そして、いちヤクルトファンとして、これから何度もその名を神宮でコールすることだろう。彼の姿を見ていると、つい、そんなことを考えてしまう。


 廣岡大志――たとえヤクルトファンでなくても、今からその名前を覚えていて損はないはずだ。

長谷川晶一
長谷川晶一
1970年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経て独立。スポーツを中心にさまざまなノンフィクション作品を出版。主な著書に『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』(彩図社)、『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』(集英社)、『夏を赦す』(廣済堂出版)、『極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ』(日刊スポーツ出版社)など。

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