武藤嘉紀がエゴイスト宣言「ゴールが必要」 17年は地位を確立するための勝負の年
長期離脱で自身を客観視「精神的に強くなった」
昨年は2月に負傷して以来、戦線離脱する期間が長かった武藤。「精神的には強くなった」と振り返る 【写真:アフロ】
その彼が16年2月のハノーファー戦での右ひざ負傷によって、長く苦しいトンネルに迷い込んだ。今シーズン頭にいったんピッチに戻ったものの、9月のヨーロッパリーグ・FKガバラ戦で再び右ひざを負傷。16年を棒に振ると同時に、マインツで手にしかけていたレギュラーFWの座、日本代表の定位置獲得もフイにしてしまった。
「去年は本当についていなかった。厄年だったし」と本人も苦笑いしたが、一方で「武藤フィーバー」とも言うべきメディアやサポーターの喧噪(けんそう)から離れて、自身を客観視する時間を持てたのも事実。「精神的には強くなりましたよ。落ち着きましたし」と武藤自身も言う通り、以前よりも自然体でサッカーと向き合えるようになった。その結果、点取り屋としての本能を呼び覚ますことができたのだろう。
「アウクスブルク戦もそうだったけれど、最近は試合をしていてもなかなかパスが来ないし、自分で全部やってやろうと思うくらいです。けが明け早々は失敗を恐れながらプレーしていましたけれど、4試合をこなしてコンディションも上がってきましたし、もっとエゴイストになっていいのかなと強く感じます。
(日本代表監督の)ハリル(ハリルホジッチ)も言っていますけれど、日本に強烈なストライカーがいないのは、日本人がエゴイストなところを嫌う傾向にある人種だから。確かに日本人はとても戦術理解力が高いし、真面目だし、監督に歯向かったりしないけれど、自分だけいい顔をして『チームのために』と言っていると、結果的には自分のためにならない。単なる走り屋で終わってしまう。それでは意味がないですよね。やっぱり外国人を見ると、全員がエゴイストの集団。そういう中でやっているから、自分もそうならなといけないと痛感します」と武藤は危機感を募らせる。
結果を残してクラブでも代表でも地位を確立したい
「今年結果を残して、マインツでのポジション、代表の地位も確立できたら最高」と決意を語った 【元川悦子】
「今の代表は『誰が結果を残すか』という話になってきている。前半戦は原口君とサコ(大迫)君が結果を残しましたけれど、そこに割って入っていかなければいけない。割って入るだけではなくて、そこで活躍しないといけないと思うので。マインツで試合に出られなかったら代表にも呼ばれないと思いますし、すごいプレッシャーですけれど、楽しみたいですね。
今年は本当に自分にとって勝負の年。W杯を決める年でもありますし、ここで自分が何か残さないと、このままズルズルいってしまうと思うので。もうひと花咲かせるためにも、何が何でも今年結果を残して、マインツでのポジション、代表の地位も確立できたら最高だと思います」
この野望を実現させるためにも、本人が繰り返している通り、マインツでゴールを奪うところからスタートするしかない。ユースとの練習試合の後、武藤は30分以上、練習場に残ってシュート練習に明け暮れていた。強くミートした形、浮き球など多彩な感触を確かめながら、少しでも精度を上げようと躍起になっていた。常に多くの人に注目されていたFC東京時代であれば、1人で黙々とシュートを蹴り続けることさえ難しい。ある意味、原点に戻って1つ1つ自分の感覚を確かめることで、武藤は再浮上のきっかけを追い求めていたのだろう。
その成果は、果たして2月18日のブレーメン戦で出るだろうか。マインツの2月から3月にかけての対戦カードはブレーメンの後、レバークーゼン、ボルフスブルク、ダルムシュタット、シャルケと続く。そこで背番号9がストライカーとしての潜在能力をいかんなく発揮し、ゴールを量産すれば、ボージャンとの競争に勝つだけでなく、コルドバが陣取っているエースFWの座も奪い取ることができるかもしれない。もともとは武藤がFWのファーストチョイスで、コルドバはサブだったのだから、結果次第では逆転も十分可能なはずだ。巻き返しを見せ、武藤嘉紀の存在価値をマインツのみならず、ドイツ、そして世界に再認識させること。それを期待してやまない。