ドライビングだけではなかったニコの手腕 王者不在がメルセデスに及ぼす影響
若い時から抱いていた高い目標
第50回マカオGPに参戦した当時のニコ(右)。この頃から高い目標を語っていた 【田口浩次】
02年に開催された第50回マカオGPにF3ドライバーとしてカーリン・無限ホンダから出場したとき、インタビューしたのだが、とにかく驚かされたのがエンジニアリング知識の豊富さだった。自分でマシンを整備することも手伝い、「セッティングを詰めること、マシン構造を知ることが、これからのフォーミュラドライビングに必要だから」と断言していた。
このとき、父親に続くF1ワールドチャンピオンが目標かと聞くと、「それは分からない。父親を誇りに思うし、そうなることができるよう高く目標は持ちたい」と言っていた。
余談だが、この第50回マカオGPの出場者を撮影した記念写真を見ると、ニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトン、ロバート・クビサ、ライアン・ブリスコー、ナレイン・カーケティアン、ネルソン・ピケJr.、ニコラス・ラピエール、ロバート・ドーンボス、E.J.ヴィソと、後にF1ドライバーやインディカードライバー、はたまたル・マン24時間レースの常連として名をはせる才能が並んでいる。
ニコの役割をハミルトンが担えるか
これが果たして、メルセデスの盤石な牙城を守ることになるかは、まだ分からない。
というのも、ロズベルグの最大の強みはマシンをエンジニアと共に開発できることだった。F3時代からエンジニアリングの重要性を理解し、自らマシンの構造を学んできた。その後、ウィリアムズ入りしたとき、当時のマシン開発面で大いに才能を発揮していたマーク・ウエバーやアレキサンダー・ウルツと共に仕事をしたことで、マシン開発面における能力を高め、メルセデスへ移籍したときは、シューマッハの仕事ぶりを目の当たりにした。チャンピオンマシンの開発を先導してきたドライバーたちと共に働いた経験、そしてロズベルグ自身に蓄積されたノウハウは、メルセデスにとって大きな財産であったことはチームの成績を見れば明らかだろう。
メルセデスでは、常にロズベルグがマシン開発を主導してきた。ハミルトンは、そのロズベルグの才能と自分のドライビングの才能を重ね合わせてチャンピオンを獲得してきた。その方程式がボッタスと組むことで再現することは難しい。自らがマシン開発を主導しなければならないし、大きくレギュレーションが変化する今年、果たしてロズベルグのようにできるかの保障もない。
ニコ・ロズベルグという才能がいかに偉大だったのか、それこそが17年シーズンのメルセデスの結果いかんで分かることなのかもしれない。