ドライビングだけではなかったニコの手腕 王者不在がメルセデスに及ぼす影響
2016年王者に輝き喜びを爆発させるニコ・ロズベルグ。しかしこの5日後に現役引退を発表した 【Getty Images】
この発表を受け、多くのメディアは、長年F1のトップとして君臨してきたエクレストン氏の解任を、悲劇や事件のように扱ったが、ひとりの元ドライバーが非常に冷静なツイートをした。
「バーニーは偉大な仕事をしてきた。しかし、改革は停滞している。ミスター・キャリー、全力を尽くして、再び僕たちのスポーツを偉大にして欲しい!」と。
このツイートをした人物こそ、昨年のワールドチャンピオンであり、チャンピオン獲得5日後の2016年12月2日に突然F1引退を発表したニコ・ロズベルグだ。
突然の引退にも「ロズベルグなら……」
しかし、驚きだったのは、ワールドチャンピオンを獲得してからわずか5日後に、突然F1からの引退を発表したこと。このニュースは世界中を駆け巡ったが、意外にも一部関係者の間では「ロズベルグなら……」という声もあった。
その中のひとりは、ウィリアムズ時代の元チームメート中嶋一貴。関係者からの連絡で引退のニュースを知った中嶋だったが、そのとき、一部英国メディアでは「ロズベルグがインディやWECに参戦して、世界三大レース(モナコGP、インディ500、ル・マン24時間レース)への挑戦があるのではないか?」という報道がされていたのだが、中嶋は引退にとくに驚くこともなく、「もし本当にそうなら、なかなかやりますね」と、次の挑戦に対しても少し懐疑的な反応だった。
ロズベルグを知る関係者からすると、彼の目標は父親と同じくワールドチャンピオンを達成することであり、同じように家族を大事にすることだから、とくに引退には驚かなかったのかもしれない。それに、1993年にはアラン・プロストが、ワールドチャンピオンを置き土産にF1を引退していることからも、古参ジャーナリストや関係者からすると、“驚きだがそういうこともある”という受け止め方だった。
真面目一辺倒ではない一面も
ドイツ人らしく(父親はフィンランド人、母親はドイツ人でニコの国籍はドイツ国籍)、酔っ払うと普段の真面目な殻を破ってしまうタイプ。堅物で真面目一辺倒ではないところが、周囲からも好かれる魅力といえるだろう。
また、チャンピオンを獲得した16年11月27日の翌日に、家族3人での写真をツイートしていて、そのときから引退を示唆していたのと同時に、いつも優しく家族を大切にするロズベルグらしさが現れていた。
家族を大事にするというエピソードとしては、まだメルセデスでミハエル・シューマッハとチームメートだったとき、日本GPの鈴鹿サーキット入りをサポートする関係者が名古屋駅でロズベルグの到着を待っていると、新幹線から降りてきたのは、ひとり分とは思えないほどの荷物を抱えたロズベルグ。スタッフは「ヴィヴィアン(当時の彼女で後の奥さん)と一緒だと連絡を受けたが?」と問うと、「彼女、コリーナ(シューマッハーの奥さん)に京都旅行を誘われて、そのまま行っちゃったんだ。後から一緒に鈴鹿入りするって……」と一言。彼女の荷物を文句も言わず、先に持ち運びする姿に、スタッフはえらく驚いたと語っていた。