今年のドラフト戦線に野手が多い理由 清宮、安田らスラッガーが話題の中心

西尾典文

高校1年から活躍した清宮の存在

昨春のセンバツ優勝に貢献した智弁学園・福元もドラフト候補に名を連ねる 【写真は共同】

 もう一つの要因は、やはり目玉である清宮の存在の大きさだ。その学年の象徴的な選手の名を冠した「○○世代」という言葉はすっかり定着しているが、松坂大輔(現福岡ソフトバンク)と同年代の「松坂世代」がその発端である。高校時代と変わらぬ輝きをプロでも放ち続けた松坂の存在に引っ張られるように同世代の選手、特に投手が大学、社会人で急成長を遂げて一大勢力となったことからその名がつけられた。

 松坂のプロ入り以降、自由獲得枠ないし1位指名でプロ入りした同学年の投手は実に12人にのぼる。同様の現象は田中将大(現ヤンキース)、大谷翔平(現・北海道日本ハム)と藤浪晋太郎(現・阪神)の世代にも起きており、両世代とも同じく12人の投手が大学ないし社会人を経由して上位指名(2位以内)でのプロ入りを果たしているのだ(ちなみに大学、社会人を経て上位指名を受けた野手の数は松坂世代と田中世代では2人、大谷・藤浪世代では4人と投手に比べるとかなり少ない数字にとどまっている)。

同世代への対抗意識から急成長

 野手が世代の象徴となって同様の現象が起きた例は近年では見当たらないが、プロ入り後の成績という意味ではイチロー(現マーリンズ)の世代がそれに当てはまるではないだろうか。同学年で通算2000安打を達成した小笠原道大(巨人ほか)、中村紀洋(近鉄ほか)はイチローと同じ下位指名の選手であり、三冠王を獲得した松中信彦(ソフトバンクほか)も高校時代は無名選手。

 また、通算1000安打以上を放った清水隆行(巨人ほか)、磯部公一(近鉄ほか)、小坂誠(ロッテほか)も3位以下の指名でプロ入りしており、上位指名以外の野手がこれだけ結果を残している世代も珍しい。イチローの存在が彼らに与えた影響は決して小さくはないはずだ。一方の清宮はリトルリーグ時代から注目を浴び、高校でも1年時から大活躍を見せたということもあり、同世代という意識を強く持った野手がその対抗意識から成長を遂げたとしても不思議はない。過去の例を見ても世代を代表する選手の影響力はそれほど大きいものなのである。

 清宮世代の強力打線が侍ジャパンの主力を担い、国際大会を戦う。そんな未来も決して夢物語ではないだろう。

2/2ページ

著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント