今年のドラフト戦線に野手が多い理由 清宮、安田らスラッガーが話題の中心

西尾典文

過去5年の野手1位は14人

高校1年から甲子園で活躍した早稲田実・清宮を中心に高校生野手が多い今年のドラフト戦線 【写真は共同】

 60人中14人。過去5年間のドラフト会議で1位指名された野手の人数である。この14人の中にはいわゆる外れ1位の選手も多く含まれており、1回目の入札で指名された選手に限るとわずか半数の7人であり以下のような顔ぶれとなる。

2013年:森友哉(埼玉西武)
2014年:中村奨吾(千葉ロッテ)、岡本和真(巨人)
2015年:平沢大河(千葉ロッテ)、高山俊(阪神)、吉田正尚(オリックス)
2016年:大山悠輔(阪神)

 この中で純粋なスラッガータイプと呼べるのは岡本、吉田、大山の3人でいずれも単独の1位指名である。いかに長距離打者でドラフトの目玉と呼べる選手が少ないかが分かる数字と言えるだろう。

高校生野手が話題の中心

 しかし、今年のドラフト戦線は少し状況が異なる。最大の注目選手である清宮幸太郎(早稲田実)はプロ入りを表明すれば複数球団の1位入札が予想される超大物だが、それ以外にも昨秋の明治神宮大会決勝で清宮とアーチを共演した安田尚憲(履正社高)、清宮と同じく1年春から中軸を任せられている大型捕手の村上宗隆(九州学院高)、守備なども含めた総合力で評価の高い増田珠(横浜高)の3人も現時点で既に上位候補に挙がる高い評価を受けているのだ。

 また、太田英毅、福元悠真(ともに智弁学園高)、岡田悠希(龍谷大平安高)、金成麗生(日大三高)、若林将平(履正社高)らも強打が魅力の選手たちで、春以降の活躍次第で評価が上がる可能性は十分にある。とにかく高校生を中心に野手が話題の中心となっている。

今年は即戦力投手が少ない!?

 年初の時点でこれだけ高校生野手の名前が挙がる年も珍しいが、その原因はまず最も人気になりやすい即戦力として期待できる投手の数が少ないことにある。昨年のドラフトでは5人の大学生投手が1位指名を受けたが、いずれも下級生からエースとして活躍していた投手ばかり。また明治大、創価大、立教大、立正大はそれぞれ2人の投手が指名されていることからも4年生投手への依存度が高いチームが多かったことがよく分かる。

 プロへの最大の供給源である東京六大学、東都大学(一部)のチームを見ても大学3年間で通算10勝以上をマークしているのは大竹耕太郎(早稲田大・10勝)のみ。その大竹も完全な技巧派タイプで、研究された昨年はわずか1勝に終わっている。東都二部まで範囲を広げても高橋礼(専修大・一部8勝、二部2勝)、東野龍二(駒沢大・一部6勝、二部6勝)、葛川知哉(青山学院大・二部10勝)の3人が加わるだけで、いずれも万全なエースとしての実績はなく、上位候補と呼べないのが現状なのだ。即戦力の投手がいないなら将来を考えてスケールの大きな野手へ向かう、そんな球団が増えるのも当然だろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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