sportsnavi

最後まで“瞬間を生きた”天龍源一郎
引退ロードを描いた映画が公開へ
天龍源一郎の引退ロードを映し出したドキュメンタリー映画「LIVE FOR TODAY−天龍源一郎−」が公開へ
天龍源一郎の引退ロードを映し出したドキュメンタリー映画「LIVE FOR TODAY−天龍源一郎−」が公開へ【天龍プロジェクト】

 2015年11月15日、相撲13年・プロレス40年という実に半世紀以上におよぶ格闘技人生に幕を下ろした天龍源一郎。


『LIVE FOR TODAY−天龍源一郎−』は、そんな天龍が15年2月に引退を発表した日から、新日本プロレスのオカダ・カズチカを相手に現役最後の一戦を行うまでを描いたドキュメンタリー映画である。天龍が何を思い、どんな感慨を持って引退ロードを駆け抜けたのか。プロレスラーとしての姿を映し出すのはもちろん、締めくくりの旅路を描いたロードムービーでもある。

口から出るのは「プロレスは面白い」の言葉

引退ロードでは胸を貸した若手たちに「プロレスで飯を食っていけるレスラーになってほしい」と思いを漏らす
引退ロードでは胸を貸した若手たちに「プロレスで飯を食っていけるレスラーになってほしい」と思いを漏らす【天龍プロジェクト】

「なったこともないのに横綱の真似をするんだよね、何かあると」


 北は北海道から南は沖縄まで、279日、全22戦におよんだ引退ロードの中、試合へ向け準備を整える天龍は四股を踏み、時に鉄柱へ向かって“鉄砲”を行う。


「横綱の真似をすると自分の気持ちが猛々しくなる」


 土俵入りの真似をしながらそんな風にも語り、自身のルーツである相撲への誇りが感じられる。


 一方で引退まで限られた試合の中で親子ほど歳の離れた若手選手たちに胸を貸し、「プロレスで飯を食っていけるレスラーになってほしい」と思いを漏らす。


「プロレスは伝承文化」――自身の魂を伝えるよう戦い続ける天龍に、俳優・染谷将太が担当するナレーションがかぶさる。

「プロレスは面白い」という言葉がたびたび口から出る
「プロレスは面白い」という言葉がたびたび口から出る【天龍プロジェクト】

 スタン・ハンセンや小橋建太、先にリングを去ったライバルたちも画面を彩り、天龍は引退を報告すべく郷里・山梨に眠るジャンボ鶴田を訪ねる。


 盟友ザ・グレート・カブキとの対話では「時代は流れてますよ」と言い、同年代・同時代の仲間たちに思いを馳せるかの様子を見せる。


 試合を終え充実した表情の天龍からは、たびたび「プロレスは面白い」という言葉が聞かれ、「こんな面白いものを辞めると思うと寂しい思いもある」と感慨、そして本音が口をつく。

懐古ではなく、最後まで全力で走り切る

引退発表から引退の日まで、全力で走り切った天龍源一郎
引退発表から引退の日まで、全力で走り切った天龍源一郎【天龍プロジェクト】

 22戦、10カ月におよぶ引退ロードの間も天龍は精力的にサイン会や撮影会といったファンイベントをこなしていく。プロレスを慈しみ、別れを惜しむように。


 そしてその傍らには娘である天龍プロジェクト・嶋田紋奈代表が常に付きそう。LIVE FOR TODAY――“瞬間(いま)を生きる”と銘打たれたタイトルのように、引退という締めくくりであっても、決して懐古ではなく、最後まで全力で走り切る。そしてそこに家族が伴走する。


 引退ロードはプロレスラー天龍にとって最後の、そして親子でともにした青春だったのだ。1人の人間が心血を注いだ仕事をどのように終わらせるのか。旅路を通し、その姿をとらえた作品になっている。

引退ロードはプロレスラー天龍にとって最後の、そして親子でともにした青春だった
引退ロードはプロレスラー天龍にとって最後の、そして親子でともにした青春だった【天龍プロジェクト】
しべ超二
映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。