【全豪テニス】ナダル、死闘制しフェデラーとの決勝へ 徹底的なバック攻めで左手首全快も証明

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5時間近い死闘を制し、ナダルが3年ぶり4度目の決勝進出 【写真:ロイター/アフロ】

 テニスの全豪オープン大会12日目が26日に行われた。男子シングルス準決勝では、第9シードのラファエル・ナダル(スペイン)が第15シードのグリゴル・ディミトロフ(ブルガリア)を約5時間に渡るフルセット(6−3、5−7、7−6、6−7、6−4)で倒し、全豪オープンでは3年ぶり4度目の決勝進出を決めた。

 1日置いた現地29日の決勝ではロジャー・フェデラー(スイス)と対戦。2人の対戦成績はこれまでナダルの23勝11敗で、グランドスラム決勝の対戦が過去8度あり、これもナダルが6勝2敗でリード。しかし、クレーコートの全仏オープンを除くと2勝2敗の五分で、最後の対戦は2年前のバーゼル決勝で、この時はフェデラーが勝っている。

 35歳のフェデラー、30歳のナダル、ともに限界がささやかれながら復活をかけたこの大会。準決勝をともにフルセットで勝ち上がっての“夢の対決”実現に、世界中のテニスファンが狂喜、驚愕(きょうがく)しているだろう。

慎重な立ち上がりも長丁場を見込んだ戦術に徹する

ナダルの武器である強烈なスピンボールが、左手首が回復した証にもなった 【写真:ロイター/アフロ】

 準決勝ではナダルが往年の強じんな精神力をフルに発揮。新世代の旗頭、25歳のディミトロフを4時間56分の熱闘の末に制し、フェデラーへの挑戦権を手にした。

 生涯グランドスラムを含む通算14回のメジャー優勝を記録しているナダルにとって、この大会は大きな試金石だった。ケガの続いた昨年は、ウィンブルドン欠場を含め、全米オープンの4回戦が最高。しかも、10月のアジア遠征で左手首を痛めてツアーファイナル出場を断念し、年末ランキング9位と12年ぶりの低位置に終わっていた。

 7戦して7連勝だったディミトロフに初めて敗れたのもアジア遠征の北京でのこと。2014年の全仏以来になったメジャー準決勝進出、しかも“戦友”のフェデラーが先に決勝進出を決めており、相手ディミトロフは前哨戦で優勝して絶好調……慎重な立ち上がりだった。

 ナダルのサーブで始まった第1セットの第1ゲーム、15−40といきなり2本のブレークポイントを握られてのスタート。その窮地を6分かけて乗り切った。ディミトロフはデビュー時から“ベビー・フェデラー”と呼ばれた、フェデラーと同タイプのオールラウンドプレーヤーだ。ナダルはそのフェデラーに対してダブルスコア以上の23勝11敗と勝ち越し、ディミトロフには7連勝――左利きのナダルの最大の武器はフォアハンドの強烈なスピンボールで、それをバックサイドにたたいて高く弾ませるのが有効な片手打ち攻略法とされてきた。初めは対応できても、長引くほど疲れが溜まる――この日も、ナダルは徹底的にバックを攻めた。長丁場を見込み、決意しての戦術は、左手首全快の証しだった。

ディミトロフが攻めるもスコアはナダルがリード

 第1セットの第4ゲーム、ナダルが15−15からのラリーを制すなどブレークして先手を奪うと、続く第5ゲームのサービスゲームではセンター、ワイドへ2本のサービスエースを決めラブゲームでキープ。このセットのアンフォースドエラーがわずか2本の高い集中力で先行した。

 しかし、ディミトロフもそんな展開は覚悟のうえ。辛抱、我慢こそ“ベビー・フェデラー”時代に不足していたが、この日は違った。まず第2セット、ネットダッシュを増やし、第4ゲームを先にブレーク。しかし、前に出れば、ナダルは湾曲させた軌道でパスを決めにくる。時速190キロ台のサーブで攻めても、このセットのナダルのリターンミスはゼロ。ブレーク合戦で並んだ第12ゲーム、ディミトロフが15−30からの打ち合いで果敢なネットプレーを決め、なんとかセットタイに持ち込んだ。

 ディミトロフのサーブが本来でなかったのか、ナダルのリターンが冴えたのか。スタッツにはよく現れていないが、この日のディミトロフは、プレーでリードしながらスコア上はリードされる、そんな流れがあった。一気に勝負を詰めたかった第3セット、ブレークポイントで上回りながらタイブレークに引きずり込まれ、ここでもミニブレークを追いかける格好になって落としたのが痛い。

ナダル「ぼくが少しラッキーだった」

惜しくも敗戦となったディミトロフは「ラファは本当に素晴らしいファイター」と相手を称賛 【写真:ロイター/アフロ】

 第4セットのタイブレークは冷静に奪ってフルセットに持ち込んだディミトロフだが、ナダルの気力と執念が最後まで衰えない。これはまったくの想定外だっただろう。

 ファイナルセットの第1ゲーム、ディミトロフが3本のブレークポイントを必死にかわせば、ナダルも意表をついたドロップショット、ロブも駆使して持ち堪える。4−3で迎えた第8ゲーム、ナダルのサービスゲーム。ディミトロフは15−40と追い詰めたが、ナダルが捨て身のネットプレーでかわし、逆に次の第9ゲームをブレークした。ディミトロフは最後まであきらめず、マッチポイントを2本かわしたが、ナダルは気迫のすべてを吐き出して、念願の頂上再踏破に王手をかけた。

「どうしても勝ちたかった。ファイナルセットで全力を尽くそうと思ったし、いいプレーもできた。グリゴールも素晴らしかった。どちらが勝ってもおかしくない、決勝に進むにふさわしいプレーだった。2人とも素晴らしいプレーをし、ぼくが少しラッキーだった」

 ナダルが若い挑戦者を称賛すれば、ディミトロフも悔しさを脇に置いた。

「こういう試合に負けるのは辛いが、ラファは本当に素晴らしいファイターだった。彼とこれだけの試合ができたことを誇りに思うし、自分がやっていることが間違っていないと確信できた。この1カ月、自分を出し切った。コーチやみんなに心から感謝したい」

 それにしても、シングルスは男女の決勝2試合を残すだけになったいま、今年最初のグランドスラムは改めて信じられない展開になった。ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が2回戦で敗れ、4回戦でアンディ・マリー(イギリス)が沈み、最後に残ったのがフェデラーとナダル……誰が夢にでも予想しただろうか。そして、その夢の第一弾として、ウイリアムズ姉妹の決勝が間もなく始まる。だから、テニスは分からない。そして、面白い。

文:武田薫
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