17年センバツ出場32校の選考理由 その過程で感じられた改革とは

松倉雄太

近畿:大会内規と地域性

近畿7枠目で選出された高田商 【写真は共同】

 5番目に智弁学園(奈良)、6番目に報徳学園(兵庫)、7番目に高田商(奈良)と近畿大会ベスト8が順当に選出された。

 残る1校は上宮太子(大阪)だったが、杉中豊・地区別小委員会委員長は「選考対象の有力候補の1校だったが、(同一道府県から3校を選出しない)大会内規により対象外となり補欠1校目にも選出できなかったことを申し添えさせていただきます」と説明。選考委員会後の記者会見では地域性の質問が出たが、「近畿地区は2府4県で6枠ですので、地域性を重要視したことは少ない。地域性以前に勝ち数、チーム力を先に検討する。昨年は(最後に)地域性ということにしましたが、それは両チームを同等と判断したからです」と昨年との違いを話した。

 なお、同一道府県から3校以上は選出できない内規だが、唯一の例外は東京。もし神宮枠獲得で2校目が確定となると、関東5番目と比較されるのは東京3番目となるからだ。これについて日本高校野球連盟の竹中雅彦事務局長は、「東京(の秋季大会)は、一つの地区大会となっているので例外となります」と内規の解釈を語った。

中国・四国:ラスト1枠は創志学園へ

 基本数の中国2校と四国2校を選出。両地区とも決勝に進出した2校が順当に選ばれた。次に残り1枠を選考するために、両地区の3番目を選出する作業が行われた。

 中国地区は準決勝で敗れた創志学園(岡山)と鳥取城北(鳥取)の2校で検討が行われ、「投手力、守備力などを比較して総合的に判断した」(小川信幸・四国地区別小委員会委員長)として、創志学園が選考の土俵に残った。四国地区は準決勝で敗れた英明(香川)と済美(愛媛)、宇和島東(愛媛)の3校で検討。その結果、「総合的に英明の力が上と判断した」と英明が3校目となった。

 最後のラスト1枠は、エース・難波侑平(2年)の中国大会防御率1.96と1試合平均与四死球2個台の制球力、それにチーム打率3割7分3厘の創志学園が投攻守にわたって英明を上回ると判断された。

日程面の考慮で選考委員の生視察増加

 今年は一つの改革が感じられた。

「選考で漏れたチームができるだけ傷のつかないように説明してほしい」と、これまで一部指導者から挙がっていた声に配慮し、まず選出校を順番に全部読み上げてから選考経過を説明するスタイルに変更。4つに分かれる小委員会はそれぞれ別の部屋で会議をしているが、発表原稿をできるだけ統一して、これまで以上にライブ配信を意識してわかりやすい説明を心がけていた。

 毎年難航の、異なる大会を比較してラスト1枠を選ぶ地区に関しても触れたい。中国・四国地区はこれまでの両地区同日開催だった日程から、1週間ずらした日程に変更されたことでメリットが大きくなった。小川委員長は、「私たち選考委員にとっては両方にわたって、たくさんの試合を(生で)見ることができた。参考になることは多くなったと思います」と話し、物理的に不可能だった両地区の準決勝や決勝といった同一レベルの試合を、今回は生で視察ができたことに感謝している。

 逆に関東・東京地区は、関東大会決勝と東京大会準決勝の日にちが重なってしまったことにより、両方を同時に視察できない難しさが増した。それでも、「勝ち上がりを見ながら選考委員8名で、両地区で対象となる全校を必ず見られるようにしようと話し合いました」と磯部委員長は工夫を凝らしたことを話した。

 秋季大会は春の予選とは銘打っていないが、選考委員の“眼”を重要視するのがセンバツの出場校選考。球場事情などで年によっては難しい件ではあるが、今後も各地区大会の主催者には昨秋の中国・四国のような日程面での考慮を期待したい。

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著者プロフィール

 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。

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