優勝は市船、青森山田、東福岡の争いか? 第95回高校サッカー選手権を展望する

平野貴也

夏冬2冠に挑む市立船橋

全国高校サッカー選手権大会が30日に開幕。夏の高校総体を制した市立船橋は冬も優勝候補だ 【写真は共同】

 今年も「熱い冬」が訪れる。第95回全国高校サッカー選手権大会が30日に開幕し、年明け1月9日の決勝戦まで高校日本一の座を懸けた戦いが繰り広げられる。有力チームが順当に都道府県の予選を勝ち上がり、充実したラインアップの今大会は、楽しみが多い。

 優勝争いは、実績十分の3強が引っ張る形になるだろう。夏の全国高校総体(インターハイ)を制した市立船橋(千葉)は、偉業達成に挑む。優勝すれば国見(長崎)、帝京(東京)に並ぶ戦後最多タイとなる6度目となり、史上7校目の夏冬2冠となる。

 中心となるDF原輝綺、杉岡大暉、MF高宇洋は、それぞれアルビレックス新潟、湘南ベルマーレ、ガンバ大阪への加入が内定している。両サイドが高い位置に張り出し、高を中心とするパスワークで攻撃を組み立て、好機と見れば原や杉岡が後方から飛び出すスタイルで相手に襲いかかる。

 絶対的なエースストライカーがいないため、決定力不足に陥ることもあるが、杉岡は「高い位置で展開できる時間を増やせば、攻撃の質を高められる。そのためにセカンドボールの争いを泥臭く勝ちたい」と球際を制して粘り強い攻撃につなげる意欲を見せた。インターハイでは1年生FW郡司篤也が通算5得点で優勝の原動力となった。再びラッキーボーイが現れれば、鬼に金棒だ。

青森山田と東福岡も優勝候補の一角

高円宮杯U−18サッカーリーグを制した青森山田も優勝候補の一角 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 また、青森山田(青森)も全国2冠を狙う存在で優勝候補の一角を担う。年間を通して行われるリーグ戦の最高峰である高円宮杯U−18プレミアリーグでEASTを制し、WEST王者とのチャンピオンシップも優勝。FC東京への加入が内定しているGK廣末陸は守備範囲が広く、キャッチした後には正確なパントキックでカウンターの起点にもなる。攻撃は、前回大会で4得点の活躍を見せたMF高橋壱晟(ジェフ千葉に加入内定)とインターハイの得点王であるFW鳴海彰人が中心となる。

 黒田剛監督は、チャンピオンシップ優勝後に「コンディション管理も大事だが、相手に多くのデータが入った状況になるので、また違うものを生み出さないといけない。これだけで勝てるとは思っていない」と話していた。セットプレーなどで奇策を用意してくることもありそうだ。

 優勝候補のもう1チームは、連覇を狙う東福岡(福岡)だ。いずれも主力として前回優勝に貢献したMF藤川虎太朗、高江麗央、DF小田逸稀(それぞれジュビロ磐田、G大阪、鹿島アントラーズ)の3人がプロ入りを決めている。インターハイでは昌平(埼玉)に敗れたが、相手が4強入りを果たし、後に2名のプロ入りが決まった隠れた実力校だったことを考えると、初戦敗退の言葉だけで評価を落とすことはできない。むしろ、動きが硬くなる初戦の戦い方に関して良い教訓を得たとも言える。スピード感あるサイド攻撃で名誉ばん回を図る。

東福岡が属するのは「死のブロック」

東福岡は前回優勝に貢献した藤川虎太朗らがいるが、「死のブロック」に入った 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 3強を追う存在としては2チームの名が挙げられるが、奇しくも1回戦で対戦することになった。類稀な身体能力を誇る左DFタビナス・ジェファーソン(川崎フロンターレに内定)、長身GK茂木秀(セレッソ大阪に内定)を擁する関東のタレント軍団・桐光学園(神奈川)と、かつて国見を最多6度の全国優勝に導いた小嶺忠敏監督が率いる長崎総科大附(長崎)だ。後者は、まだ全国大会での実績こそ乏しいが、今季はプリンスリーグ九州を16勝2分け無敗という驚異的な成績で優勝している。両チームの対戦だけでも注目に値するのだが、勝者は3回戦で東福岡と対戦する可能性がある。

 東福岡が属する第1シードのブロックは、ほかにも日本代表FW大迫勇也を輩出した鹿児島城西(鹿児島)もおり「死のブロック」と言える。序盤は、このブロックの動向から目が離せない。東福岡の森重潤也監督は「前回の決勝で対戦した國學院久我山さんも(前評判では優勝候補に挙がらなかったが)とても良いチームだった。『学校の名前で(実力を)見てしまったら、そうなる』という考えが、自分たちの落とし穴としてあるかもしれない」と気を引き締めていた。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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