連載:東京五輪世代、過去と今と可能性

課題を成長の糧に変える中山雄太 東京五輪世代、過去と今と可能性(2)

川端暁彦

1対1でボールを奪い切ることが課題

「ビルドアップは絶対に負けたくない部分」と中山。柏レイソルでも積極的にチャレンジしている 【Getty Images】

――柏レイソルU−18昇格後には年代別代表にも招集されました。

 初めて呼ばれたときは、やっぱり感じるものはありましたね(編注:中山は12年6月のU−16日本代表候補東西合宿で初招集)。全部が初めての経験でした。そもそもレイソルに来るまで、年代別の日本代表というものがあること自体を知らなかったくらいですから(笑)。

 でも当時の代表では、悔しさのほうが大きいです。目標にしていたU−17W杯のメンバーには残れませんでした。その時から「U−20W杯には絶対出たい」というのが大きな目標になっています。

――その意味ではAFC U−19選手権で主力選手として優勝できたのは大きな一歩でしたね。センターバックの相方である冨安健洋選手(アビスパ福岡)に中山選手のことを聞くと、いつも大絶賛が返ってくる。2人にはそれくらいの信頼感があります。

 そうやって言ってくれる、良いやつですよ(笑)。僕も引っ張っていきたいと思っていますし、逆に僕がトミ(冨安)から学ぶ部分もたくさんあります。良い関係でやれているなと思っています。

――ボランチもできる2人の特長はビルドアップですよね。

 ビルドアップは絶対に負けたくない部分ですね。僕は攻撃的なポジションをずっとやってきた選手ですから。いま守備の部分ではなかなか違いを出せていないと思います。だったら、自分の特長である攻撃で違いを出していけたらいいと思っています。トミが良いパスを出すと「自分も負けたくない!」と意識するくらいです(笑)。

――Jリーグでも出せている部分ですよね。

 狙いすぎてミスになることもありますね。ただ、それを恐れてチャレンジしないというのは好きではないんです。どんどんチャレンジしないと成長もないと思いますし。シモさん(下平監督)もあまり(ミスに関しては)言わないんですよ。自分としては「やって怒られたら、やめようかな」というチャレンジでもあるんですけれど、そういうチャレンジのミスでは怒られていないので。続けていいんだと思ってやっています(笑)。

――フィジカルも向上しましたよね。見た目も大きくなって、某テレビ番組では「胸板イケメン」と言われていました(笑)。

 いやいや(笑)。正直、胸板はあまりないと思うので、何でそう言われるのだろうと……。

――すごく姿勢が良いから、大きく見えるというのはあると思います。

 姿勢は確かに意識していますね。フィジカルコーチ(松原直哉)には高校のころから教わっていて、そのときに言われてからずっと意識してやっています。そういうところを指摘してもらえるのはうれしいですね。

――手応えや成長もある中で、課題に感じている部分は何でしょうか?

 1人で(攻撃を)断ち切る守備の能力です。1対1になった局面でボールを奪い切れないことが多いと感じています。相手のミスを待つのではなく、こちらから断ち切るプレーをもっとやれるようになりたいですね。

目標は東京五輪までにA代表で試合に出ること

中山が目指すのは、東京五輪までにA代表で試合に出る選手になること 【スポーツナビ】

――4年後の中山雄太はどんな選手になっていますか?

 理想ですけれど、自分が目指すのは東京五輪までにA代表で試合に出る選手になること。リオ五輪世代でいえば遠藤航選手(浦和レッズ)がそうだったように、五輪年代でありながらA代表にも入っている。東京五輪に出ることではなく、そこを目標にしたいですね。

――同じ学年の井手口陽介選手(ガンバ大阪)は早くもA代表に入りました。

 それは本当に悔しいです。同年代が活躍すると、「負けたくない!」という気持ちが湧きます。(同い年の)川崎フロンターレの三好康児と板倉滉がチャンピオンシップに出ていたのも本当に悔しかった。三好とはひそかにシーズン中も得点数を争っていたんですよ(笑)。そういった競える相手がいるのは幸せです。でもやっぱり、負けたくないんです。

 U−19日本代表の内山篤監督からは、「雄太はこちらが言わなくても分かっているから大丈夫」といった言葉をよく聞く。自分の頭で考えて、自分で課題を解決していく。そんなマインドを持っているから「言わなくても大丈夫」なのだそうだ。似たような話は下平監督も過去にしていた覚えがある。

 継続して取り組んだ成果である姿勢の良さや地道な筋力アップ。「勝っても負けても必ず課題はあるので確認する」という試合を振り返りながら磨かれてきた戦術的な判断力。その胸には強烈な負けず嫌い魂も秘めている。通り一遍の表現には収まらないようなキャパシティーとキャラクターを持った中山雄太は、新シーズンに迎える世界大会でもきっと新たな課題を見つけて、成長の糧に変えるに違いない。

中山雄太(なかやま ゆうた)

【スポーツナビ】

1997年2月16日生まれ、埼玉県出身。181センチ、76キロ。柏レイソルU−15に加入後、高校2年時には16歳ながらトップチームに2種登録された。15年にトップに昇格を果たすと、翌シーズンはスタメンに定着。13年8月にU−16日本代表に初選出され、以降は各世代別代表でキャプテンを務めるなど、代表でも中心選手として活躍している。16年10月のU−19選手権では、ディフェンスリーダーとしてチームをけん引した。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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