セブンズ日本代表、全敗からの再出発 「小さな目標を積み重ねていく」

斉藤健仁

リオ五輪では4位と大健闘を見せたが…

ほぼゼロからのスタートとなったセブンズ日本代表で、数少ないWS経験者として奮闘した小澤大 【Getty Images Sport】

 国内ラグビーシーズンが佳境になる中、セブンズ(7人制ラグビー)日本代表がウガンダに2度も金星を献上していたことはご存じだろうか。

 2016年夏のリオデジャネイロ五輪、日本ラグビーは昨秋のワールドカップに続いて世界に衝撃を与えた。
 瀬川智広HC(ヘッドコーチ)に率いられた男子セブンズ日本代表は、予選プールで優勝候補の一角、「オールブラックス」ことニュージーランド(NZ)を倒し、さらに決勝トーナメントではフランスを下すなど快進撃を続け、フィジー、南アフリカなどに敗れてメダルにこそ手が届かなかったが4位で大会を終えた。

 そして日本代表は今シーズンのセブンズワールドシリーズ(WS、F1のように世界10カ所を転戦するサーキット大会)で、一昨年のシーズンに続いて、コアチーム(全10大会に優先的に出場できる15チーム)に昇格し、2020年の東京五輪に向けて新たなスタートを切るはずだったのだが……。

新生日本代表に五輪メンバーはゼロ

ダミアン・カラウナ新HC(左)と岩渕健輔GM 【斉藤健仁】

 五輪後、日本代表の岩渕健輔ゼネラルマネージャー(GM)も「システム自体は理事会で作りました」と言っていたように、選手が所属チームから日本ラグビー協会に出向し、協会が代わりに給料を支払う専従契約制度(=プロ化)の準備も進められていた。だがトップリーグの各チームはあくまでもセブンズではなく、15人制ラグビーの強化のために選手を獲得しており、シーズン中に選手を派遣することには消極的。「一年中、セブンズをやるような選手なら採らない」とトップリーグの強豪チーム関係者が言うように、まだまだ両者の間に溝はあり、コンセンサスを取るのは容易ではない。

 12月のWS開幕まで1カ月を切った11月10日、やっと新体制が発表された。男子は瀬川HCが辞任し、新たに、NZのセブンズのコーチを務めており、NZセブンズ代表やサニックス(現・宗像サニックス)でプレーした経験も持つダミアン・カラウナ氏がHCに就任した。岩渕GMが実際にNZに足を運び、口説き落としたというセブンズの指導者のプロフェッショナルの一人で、日本におけるセブンズのコーチングの底上げも期待しての人選だった。

 そして肝心の選手はというと、リオ五輪に出場していたメンバー12人から、新生日本代表に招集された選手は何とゼロ。エースの一人だったレメキ ロマノ ラヴァのように、五輪を最後に15人制に集中することを明言していた選手もいたが、他の選手も15人制のシーズン中でしかも各チームで活躍、今年の8月まではセブンズに集中していたこともあって、12月のドバイ、南アフリカの2大会への出場を断念したことを責めることはできない。

トップリーガー2人のみで世界最高峰の戦いへ

WS初出場となった鶴田桂樹(左)、中孝祐(中)、韓尊文(右) 【斉藤健仁】

 そんな中でもまず、3名の日本代表候補選手が発表された。それは五輪出場を惜しくも逃したトップリーガーの2人、鶴ヶ崎好昭(パナソニック)と小澤大(トヨタ自動車)、そしてアジアシリーズで活躍した中野将宏(九州共立大3年)だった。さらに22名の練習生も発表。22名の中にはトップリーガーの名はなく、かつてWSで大活躍したジェイミー・ヘンリー(PSI)、さらに中野と同じようにアジアの舞台で日本選抜としてプレーしていた鶴田桂樹(同志社大3年)、韓尊文(流通経済大2年)、中孝祐(関西学院大1年)らの大学生と下部リーグに所属する外国人選手が中心だった。

 10日間ほどの合宿を経て、上記の選手たちを中心に選抜された12名で12月2〜3日のドバイセブンズ、そして10〜11日の南アフリカセブンズに参戦。セブンズでは15人制の国際試合の出場数を意味する「キャップ」に相当するのが、大会出場数だ。新生日本代表はドバイ大会前、WSを経験しているのは鶴ヶ崎、小澤、ヘンリーの3人で計18大会、他の9選手は初出場だった。ゲストとして招かれた初出場のウガンダこそゼロだったが、南アフリカやフランスは12名で300大会を超えており、コアチームで二桁のチームは皆無。「いったい、どこまでやれるのか……」と正直、不安の方が大きかった。だが蓋を開けて見ると、想像以上に善戦した。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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