2016年賞金王・池田勇太の魅力 現状に甘んじない姿勢と人を魅了する男気

北村収

左肩の痛みに耐え、猛チャージをかけた

肩を痛めて棄権の可能性もあった中で、2位に食い込み、賞金王争いで優位に立った 【写真は共同】

 シーズン後半、谷原秀人との熾烈な賞金王争いに黄信号がともった瞬間があった。11月中旬に開催されたダンロップフェニックストーナメントの練習日、突然左肩に激痛が走ったのだ。

「欠場も考えた」というほどの激しい痛み。それでも昨年まで選手会長を3年間勤めた責任感か、大切なお客様とのラウンドである水曜日のプロアマ戦を欠場せずに乗り切った。

 そして迎えた初日、ライバルの谷原がトップに立った。一方で池田は、ラウンド中には氷嚢(ひょうのう)で常に患部を冷やしなからなんとか初日をホールアウトしたが、「明日、ラウンドができるかどうか」という状況。その時点での賞金ランクトップの谷原が勝ち、池田が棄権ということになれば賞金レースは谷原が断然有利になる。

 2日目、つらい状況の池田の顔が一時だけ満面の笑顔になった。試合では自身初となるホールイン・ワンを達成。「気は楽になった」とホールイン・ワンをきっかけに、スコアを伸ばし2日目を終えた時点でトップに並んだ。

 3日目は3位でホールアウトし迎えた最終日。トップと5打差でスタートし、フロントナインを終えた時点でも差は縮まらなかった。単独トップに立っていた海外選手、ブルックス・コエプカ(米国)の圧勝かと思われたが、サンデーバックナインでドラマを仕掛けたのは、左肩を氷嚢で冷やしながら最終日もプレーを続けていた池田勇太。15番ホールで首位に追いつくチャージをかけ、大ギャラリーを熱狂させた。結果は1打差で優勝を逃したが「見せつけたでしょ! 日本人の意地を」とホールアウト後は胸を張った。

契約外のクラブの話も断らない男気

ツアー中もいろいろなところで男気を見せた池田。来年にも期待がかかる 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 この大会の2位で獲得した賞金で賞金ランク1位の座を再び奪取。翌週のカシオワールドで優勝、さらに最終戦の日本シリーズでも2位タイに入り見事自身初の賞金王に輝いた。

 しかし賞金王を決めただけでは喜ばないのが池田らしさなのか? 最終戦で「勝てなかったのは悔しい」と賞金王の喜びよりも、勝てなかった悔しさを露わにした。

 今シーズン自ら決断して実行した変化を自身の力に変えるとともに、所々で男気を見せ賞金王につなげていった池田。この男気は使用しているクラブのメーカーにも見せていたようだ。契約していないクラブの話は詳しく話したがらないプロも多い中、池田は媒体などに掲載されることを避けなかった。むしろ露出を図ろうとするメーカーの動きにも、一部協力してくれていたという。人気選手が使用しているといったほうが、クラブは売れるのは明らか。

 これも池田ならではのゴルフ界を盛り上げようとする男気だったのかもしれない。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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