2016年賞金王・池田勇太の魅力 現状に甘んじない姿勢と人を魅了する男気

北村収

クラブ契約変更もシーズン序盤で優勝

2016年国内男子ツアーで自身初の賞金王となった池田勇太 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 プロ10年目の30歳。節目の年となった今シーズン、シンガポールで開幕した国内男子ゴルフツアーの「SMBCシンガポールオープン」で池田勇太は激変した姿を見せた。

 角刈りだった髪は伸び、ダボダボのツータックパンツはスリムなノータックパンツに変わっていた。また、今シーズンから長年結んでいたブリヂストンスポーツとの契約を解消。クラブ契約はフリーとなり、シーズン中、バッグの中には様々なメーカーのクラブがおさまっていた。

 クラブ契約を変えると新しいクラブに慣れるまで苦戦する選手が多い中、池田はシーズン序盤で結果を出した。4月下旬に開催された国内2戦目となる「パナソニックオープン」で優勝。自分で選んだ変化を力にし、勝利をつかんだ。

義務感も強かったリオ五輪出場

リオ五輪には「ゴルフを盛り上げなければ」という義務感もあったという 【写真:青木紘二/アフロスポーツ】

 夏前、112年ぶりに五輪で復活するゴルフに誰が出場するのかが話題になっていた。

 上位選手の辞退が相次ぐ中、池田は一貫して出場する姿勢を崩さなかった。辞退した選手を責める訳でもなく、また時には辞退した選手のようにリオに行く怖さも率直に口にした。しかし、「五輪を起爆剤にできなかったら……」。3年間選手会長を務め、ツアーの活性化のために真剣に取り組んできた池田ならではの義務感が、背中を押したのは間違いなさそうだ。

 8月中旬に開催されたリオデジャネイロ五輪本番の最終日、池田は一時6位タイまで順位を上げたが、終盤にスコアを崩して21位タイ。ホールアウト後は、いつものように言い訳もせず誰のせいにもせず、ただただこの結果への口惜しさを露わにした。そして、その口惜しさを晴らすかのように、秋以降の国内ツアーで大活躍を見せる。

苦渋の決断で7年半一緒のキャディを交替

長年連れ添ったキャディとコンビ解消したことも変化を生み出す苦渋の決断だった 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 国内ツアーでは4月の勝利後、上位には入るもののしばらく優勝からは遠ざかった。そんな中、次なる大胆な変化を実行することになる。

 7年半共に戦ってきたキャディを8月の「RIZAP KBCオーガスタゴルフトーナメント」を最後に変えたのだ。「『次の新しい自分を探したくなった』と言った」とコンビ解消は池田から申し出た。池田が「感謝しかない」と語りそれまでの全14勝を支え続けたキャディの福田央さんとの別れは相当に大きくそしてつらい決断だったに違いない。

 そしてこの変化も勝利という形に変えたのは池田の凄さだ。10月上旬に行われた「HONMA TOURWORLD CUP AT TROPHIA GOLF」で優勝。優勝後のインタビューでは数カ月前に別れた福田さんへの感謝も改めて口にしていた。

1/2ページ

著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント