怪物・松坂大輔、再び見せろ底力! MLB最終年と重なる逆境からの挑戦

丹羽政善

プエルトリコのウィンターリーグでの先発初戦、松坂は4回2失点だった 【写真は共同】

 かつて、「潜在意識には力が宿っている」と唱えたのは、米国で長年牧師を務めたジョセフ・マーフィーだ。生きる指針となるような、心に響く名言をいくつも残した。

「自分の仕事は素晴らしいと何度も言い聞かせれば、それは素晴らしいものになる。逆に、何があってもしてはいけないのは、それを卑下することだ」

「良いことが起きると思えば、良いことが起きる。悪いことが起きると思えば、悪いことが起きる」

「不平、不満は、不幸を招く。決して口にするな」

 果たして、メッツ(当時)の松坂大輔は、そうした言葉の一つ一つを知っていたのかどうか。大リーグでの最後の年となった2014年のシーズン終盤、松坂にシーズンの総括を求めると、顔を曇らせて暗にインタビューの断りを匂わせた後、その理由をこう口にした。

「今話すと、ネガティブなものになってしまうので」

 松坂の場合、おそらく経験則でそこにプラスがないことを知っていたのだろうが、そのとき、松坂にそう言わせた1年が走馬灯のように蘇った。

悔しさかみ殺し不平を口にせず

 14年のオープン戦では結果を残しながら、第5の先発枠争いに敗れると、「(契約上)競争であって競争ではないという感じですかね。自分がいい状態であっても、いいものを出しても、それが判断材料にならないっていう僕の立場ですかね。それももちろん分かっていたので」と悔しさをかみ殺した。

 シーズン中、故障者が出ると代わって先発マウンドに立ったが、そこで結果を残しても、また次の試合からはブルペン待機。リリーフ投手としては起用のタイミングが一定せず、難しい調整を迫られていた。

 思うところはあったはず。しかし、それを口に出したところで、ともすれば愚痴になる。得する人もいない。

 福岡ソフトバンクで日本球界に復帰後、15年の3月に肩の痛みを発症してから、8月に手術を行い、その後、長いリハビリ生活を強いられた。復帰後初登板となった10月2日の東北楽天戦では1回を投げ、被安打3、与四死球4で5点を失った。

 そのときも日本の報道陣に、「自分が望む結果ではなかった」と話すも、「投げることができて良かった。しっかり結果と内容を受け止めてこれからどうするかしっかり考える」と前向きだった。

 その松坂が今、プエルトリコで再起を図っている。

 冬に投げることで、来春のキャンプ、ひいては来季に疲労が残らないか。設備などが整っているとは言い難い環境で故障を招くことはないのか、といったリスクはあるものの、14年のキャンプに比べれば、はるかにフォーカスしやすいはず。自分の状態を上げていくことだけに専念できる。

 その春のキャンプについてはすでに少し触れたが、ある意味、壮絶な1カ月になった。

1/2ページ

著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

新着記事

スポーツナビからのお知らせ

編集部ピックアップ

女子ツアー3週連続で競技短縮へ 悪天候で…

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント