【リアルジャパンプロレス】レジェンド王者に挑むタカ・クノウ 「プロレスへの“思い”は負けない」

長谷川亮

大谷が持つレジェンド王座に挑むタカ・クノウ 【写真:長谷川亮】

 リアルジャパンプロレス「GOLDEN AGE OF THE TIGER 〜初代タイガーマスク35周年記念大会〜」(12月7日、東京・後楽園ホール)で第11代レジェンド王者・大谷晋二郎に挑むタカ・クノウ。プロレスに「導かれた」という“日本が誇る寝技師”は、対戦を前に原点となった金曜夜8時、ストロングスタイルの思い出を語る。大谷に対し「“思い”は負けない」と話すタカ、その本物の技で王座奪取はなるか。

遺伝子は金曜夜8時でアントニオ猪木

自分の原点を金曜夜8時だと話すタカ 【写真:長谷川亮】

――13年12月12日、リアルジャパンに初参戦した時以来のタイトルマッチが決定しました。

 もともとアントニオ猪木会長のIGFでデビューさせて頂いて、会長のところを拠点と思っていたので、他のところは考えていませんでした。なんですけど、佐山(聡)先生のところで毎週練習をするようになって「出てみたら?」と先生に言って頂いたので、心を決めて出ようと。でもプロレスラーになったのも、そもそも戦い出したのも会長の影響だし、始めたきっかけはストロングスタイル以外にありません。会見で大谷選手が「金曜夜8時のつもりで戦う」と言っていましたが、僕も同感です。金曜夜8時を見て育って、猪木会長にも確かめたことがあるんです。「会長、“戦い”って金曜夜8時でいいんですよね?」と言ったら、「バカヤロー」と言ってニヤッと笑ってくださって。やっぱりそういうこと、思いがあるので、大谷選手も同じ感覚でいると思います。僕はデビューもそうですし、小さい頃から、遺伝子はアントニオ猪木です。

――そんなタカ選手にとって、「金曜夜8時」の思い出や印象的なシーンだったりを教えてください。

 本当に自分の原点だし、自分の人生そのものというか。でも僕のルーツは本当は、3つの時とかそれぐらいに見た、多分日本プロレスだと思います。親戚のおばさんがプロレスが大好きで、よく一緒に見ていたんです。物心がつくかつかないぐらいの時でしたけど、でも覚えています。おばさんたちも熱狂して見ていたし、試合内容までは覚えてないんですけど、とにかく人間同士が裸でぶつかり合う姿がカッコよくて、こんなスゴいものがあるのかと思いました。それでプロレスラーになりたいっていうのがずっとあったんですけど、ある時期からちょっと遠ざかってしまって。でも縁なんですかね、アメリカに15年ぐらい行っていて、帰ってきて拾ってもらったのがアントニオ猪木だったという。

――アメリカに行っている間はプロレスラーになろうという思いはなかったのでしょうか?

 アメリカにはボディビルをしに行ったんですけど、ボディビルを辞めた後で何もすることがなくなって、目標がなくなってしまったんです。でも自分は柔道をやっていたのでそれをきっかけに柔術の試合に出るようになって、そうしたら周りの日本人が集まってきて、道場で練習を教えるという状況になって。その時道場にテレビがあって、近くにあった日本のビデオショップで新日・全日のビデオをそれこそ全部借りてきてよく見ていたんです。そこでプロレスへの思いが蘇ってきた感じですね。

――では、渡米した時やボディビルをやっていた時というのは、今のような状況というのは全く予想がつかなかったのではないですか?

 全然予想がつかないです。でも面白いことに、自分で選択している人生っていう感じじゃないんです。アメリカに行ったのも、ボディビルをやったのも自分の選択なんですが、それ以降っていうのは全て用意されているような、導かれてこっちに来ている感じがあります。格闘技の世界に入った時も、同じジムにジャン・ジャック・マチャド(“寝技世界一決定戦”アブダビコンバットで優勝を果たすなどした柔術の超強豪)がいて、「こいつ、柔道やっていたんだよ」なんて話をしたら、「じゃあうちの試合に出てみろよ」、「いいね」みたいな軽い気持ちから、そこから作り上げられていったんです。それで日本に帰ってきたら、今もお世話になっている社長が「お前、俺がプロデュースしてやるから格闘技デビューするか?」「じゃあ、お願いします」みたいな感じでトントントンと進んだ感じで。全部がそうやって導かれている感じがします。

――では、ボディビルを終えて以降はどんどんプロレスに呼び寄せられていったと。

 小さい頃なりたかったものの方向に、引力がそっちの方向へ行っていた感じです。やっと昔の思いが繋がった感じで。

「やっぱりここは僕の居場所」

キャリアではかなわないが、プロレスへの“思い”では負けない 【写真:長谷川亮】

――そこからIGFを経て、現在主戦場となっているリアルジャパンという団体についてどう思われているかお願いします。

 ここが自分の戦う、そして表現する場だと思っています。総合格闘技は遊びのない世界ですけど、リアルジャパンも真剣な世界で同じようなものを出せると思うし、やっぱりここは僕の居場所ですね。だから他の団体に出ていないっていうのもそういうことだと思います。

――そういった団体で再びタイトルマッチのチャンスが巡ってきました。

 これも導かれてというのがあると思います。ベルトが欲しい、欲しくないっていうことに関すると、ベルトに対しての欲っていうのはないんです。ただチャンスを与えてくださった佐山先生に自分がどれだけ返せるかっていうことを思っています。

――自分に夢を見せ、与えてくれた人たちに返したいというお気持ちなのですね。

 はい。自分が思っていた気持ちをどれだけ周りにも同じように伝えられるかっていうのもありますし、それってこちらが真剣じゃなきゃ伝わらないと思うんです。真剣な戦い、本物の技でなければ。なのでそこを真面目に、そして真剣に、怖さを出しながらやっていきたいです。

――では、小さい頃タカ選手が感じていたものを、見ている人にも同じように伝えたいというところでしょうか?

 全部は伝わらなくても同じ感覚と言いますか、大谷選手との会見でも出たワクワクするものを感じてもらえればと思います。そこから僕もこういう風になったので。なので自分がプロレスラーになりたいとかじゃなくても、何かのインパクトとして試合を見て頑張ろうと思ってくれたり、いろんな気持ちになってくれればいいかなと思います。

――そんな気持ちを込めて立つ試合に、改めて意気込みとメッセージをお願いします。

 僕はプロレスラーとしてのキャリアは大谷選手に遠く及ばないものがありますが、だけど“思い”っていうのは、もう50年近くプロレスに対してありますので、その思いをぶつけて戦いたいと思います。“思い”は負けないです。
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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