性格は正反対―知れば知るほど面白い兄弟 松永幹夫師が語るアウォーディー&ラニ
調教は“ラニ仕様”の特別メニュー
弟ラニも巻き返しへ向けて虎視眈々(撮影:下野雄規) 【netkeiba.com】
「他馬が近くにいると激しく嘶(いなな)く」
ラニの話題で松永師の口から出たこれらの表現からは、独特の個性を持つ馬だということが伝わってくる。
調教もその後の運動も、“ラニ仕様”の特別メニューだ。
兄アウォーディーは、現在のトレセンの主流の1つであるウッドチップコースを1周するのが普段の調教なのに対し、弟ラニは馬の少ないダートコースで調教を積んでいる。
「調教の後は、本当は厩舎周りを歩かせたいんだけど、他の馬を襲いに行ったら迷惑をかけるし、ラニ自身もケガをしたら大変だからね」
草食動物なのに相手を“襲う”。そのギャップからラニが他の馬とは違うことが分かる。
ラニは調教スタンド前の運動場奥に設けられたエリアでただ1頭、後運動をする。ここであればほとんど“襲う相手”はやって来ない。
「ラニは“ダートで走る”という点以外は兄や姉には似ていません。ヘヴンリーロマンスもやんちゃなところはありましたが、気性が激しいということはなかったです。ラニだけです、あんなに気性が荒いのは。特別ですね。でも、そんな勝ち気なところがいいのかな」
春はドバイでUAEダービーを勝ち、初夏はアメリカ三冠レースを戦った。
初めての環境、度々の長距離輸送、タイトなレース日程。我々人間でも精神的にも肉体的にも厳しいであろう条件下で、しっかりと成績を残した。肉体的な能力の高さもさることながら、強靭な精神力があったのだろう。
それだけに前走・みやこSで13着という結果はあまりにも意外だった。
「右回りが久しぶりだったり、あまり経験のない内枠だったり、力を出し切れる条件じゃなかったのかなと思います」
他馬に襲い掛からないように“ラニ仕様”の特別メニュー(撮影:大恵陽子) 【netkeiba.com】
「左回りはいいでしょうし、前走のような結果にはならないかなと思います。パドックではいつも他の馬から離れた後ろを歩くんですが、中京はコンパクトなのでどうしても前の馬と近づいて歩くことになると思います。パシュファイヤーをつけてできるだけ見えないように工夫はしますが、そこだけが不安ですね」
連勝中の兄アウォーディーが人気の中心となるだろう。しかし、ラニには他馬にはない勝ち気な性格と3歳の伸びしろが見込める。
「秋に入厩してから20kgくらい馬体重が増えています。まだ成長しているんでしょう。道中の位置取りはこだわりません。自分のリズムで走ってほしいです」
天皇賞馬の息子たちが、ダートGIでしのぎを削る。