山崎直之「まだやれることを示したい」 長い不振経て、オランダで取り戻した輝き

中田徹

マン・オブ・ザ・マッチを2度獲得

オランダ2部リーグのテルスターで存在感を示している山崎直之が過去のスランプ、復調のきっかけ、今後についてなど語ってくれた 【中田徹】

 今季からオランダ2部リーグのテルスターに入団したMF山崎直之(25)が、すでにマン・オブ・ザ・マッチを2度獲得するなど、チーム内で存在感を示している。時には観客やジャーナリストがわざわざ私のところまで寄ってきて「とても高いテクニックを持つ選手だ。むしろ1部リーグに向いている選手だよ」と声をかけにきたことも幾度かあった。

 山崎の経歴を振り返ってみると、「なぜ、25歳になって初めてプロになったのだろう」と不思議な気持ちになってくる。FC東京U−18、東京学芸大学出身。元U−19日本代表、全日本大学選抜の一員として日の丸を背負って戦ったこともある逸材だ。大学1年時には関東大学リーグ2部の新人王に輝き、翌年にはサッカー部の1部昇格に貢献。2部リーグで2年連続ベスト11にも選出された。彼は当時を振り返る。

「大学2、3年までは全日本大学選抜にも選ばれましたし、怖いものはありませんでした。“無双”は言いすぎですが、ボールを持ったら取られることもないし、好きにやっていました。サッカーが楽しくてしょうがなくて、ずっと笑いながらやっていました。『このまま行けば、普通にプロになれるんだろうなあ』と思っていました」

 しかし、その後の山崎は極度のスランプに陥り、空白の3年を過ごすことになる。本人にとっては、あまり思い出したくない3年だろう。しかし、彼は冷静に過去を分析しながら、これまでの経験を真摯(しんし)に語ってくれた。

大学時代、知識がないまま筋トレをやって不振に陥る

山崎は第6節のデ・フラーフスハップ戦以降、コンスタントに試合に出続けている 【Getty Images】

――第6節のデ・フラーフスハップ戦以降、コンスタントに試合に出続けていますね。

 何試合か様子を見て、チャンスがあればスタメンかなと思っていたので、最初からレギュラーになれるとは自分でも思っていませんでした。感謝しています。デビューマッチでマン・オブ・ザ・マッチに選ばれ、それで波に乗れたと思います。

――そんな山崎選手が25歳にして初めてプロ契約できたのが不思議です。大学卒業後、Jリーグのクラブからオファーはなかったのですか?

 大学3年の初めまでは調子が良かったのですが、それから不振に陥りました。試合に出ても思うようなプレーができず、悩み出したんです。僕は緩急を付けるドリブルが得意だったんですが、もっと力強いドリブルを身に着けようと知識がないまま筋トレをやってしまい、身体のキレも失ってしまいました。頭と体にギャップが生まれ、自分が思い描いたことが身体で表現できなくなりました。大学4年で結果を残せなかったので、プロからオファーをもらえず、テストも受かりませんでした。

――卒業後はJFLのアスルクラロ沼津に行きました。2014年シーズンのことです。

 主力として期待されて入団しました。契約はアマチュアで、小中学生相手に塾の講師をしながらサッカーをしていました。開幕前に腰椎の横突起を骨折し――ワールドカップ・ブラジル大会準々決勝でネイマールが負傷したのと同じ箇所です――、3カ月サッカーができませんでした。復帰してからもスタメンを取ることができず、沼津から(契約を)切られてしまいました。結果が全ての世界ですから厳しいですね。

――沼津を退団した後は?

 15年1月にフィンランドへ飛びました。自分のSNSに載せたプレー動画の反響が大きかったので、それがヘルシンキの関係者の目にとまったのかもしれません。日本国内には、僕を受け入れてくれるクラブがなかった。

 でも、自信は心の片隅にあったので、誰かしらが認めてくれるんじゃないかと思って、海外に挑戦しようと思いました。経費は向こう持ち。ホテルも良く、待遇は良かったです。トップクラブだけあって施設も素晴らしかった。でも、自分のコンディションが整っておらず、満足いくプレーができませんでした。自分でもダメだなと思いましたので、当然のことながら合格しませんでした。現場からの期待をヒシヒシと感じたので、ちょっと申し訳なかったです。

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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