“大人になり切れない男たち”の戦い マッスル坂井監督2作目の映画公開へ

しべ超二

マッスル坂井(左)と松江哲明両監督による『俺たち文化系プロレスDDT』が完成。11月26日より全国順次ロードショーとなる 【写真:チナスキー】

『劇場版プロレスキャノンボール2014』に続くDDTのドキュメンタリー映画第2弾『俺たち文化系プロレスDDT』が完成、11月26日より全国順次ロードショーとなる。メガホンを取ったのは『プロレスキャノンボール』がヒット並びに高い評価を獲得したマッスル坂井、そしてテレビ作品『山田孝之の東京都北区赤羽』で知られる松江哲明両監督。プロレスを題材としながら、現実に抗う“大人になり切れない男たち”を描いた作品が誕生した。

映画の中心はHARASHIMAvs.棚橋の再戦

映画の中心となるのは2015年11月17日のHARASHIMA&大家健組vs.棚橋弘至&小松洋平組によるタッグマッチ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 映画の中心となるのは2015年11月17日、DDT後楽園ホール大会「#大家帝国主催興行〜マッスルメイツの2015〜」のメインイベントで行われたHARASHIMA&大家健組vs.棚橋弘至&小松洋平組によるタッグマッチ。この試合はさかのぼること3カ月前、同年8月23日に行われたDDT両国大会「両国ピーターパン2015〜DDTより愛をこめて〜」でのHARASHIMAvs.棚橋戦に端を発している。

 試合は熱戦の末に棚橋が勝利するも、棚橋はHARASHIMAを認めないかのように握手を交わすことなく退場。バックステージでは「オレは珍しく怒ってるよ」と切り出し、「ナメたらダメでしょ。これは悪い傾向にあるけど、全団体を横一列で見てもらっては困る。ロープへの振り方、受け身、クラッチの細かいところにいたるまで違うんだから」とコメント。この発言はDDTの選手、そしてファンに大きなしこりを残した。

 これを受け、「DDTドラマティック総選挙2015」で1位となったユニット「#大家帝国」(男色ディーノ、スーパー・ササダンゴ・マシン、大家健)は、1位の特典として得られた興行権での自主興行開催にあたり、HARASHIMAと棚橋の再戦を打ち上げた。

 映画は15年11月17日に実現したHARASHIMAと棚橋のタッグによる再戦を軸に、そこへ1997年に誕生したDDT、そして団体を彩るレスラーたちの歩みが挟み込まれて進んでいく。

勝ち負けでなく何かと戦うことがプロレス

2人の遺恨が清算される戦いの中で、DDT20年の歴史も振り返れる 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 DDT不動のエースといえばHARASHIMAだが、劇中で存在感を発揮するのが大家健。その激情型マイクや、試写会で笑いの起きたあまりにも散らかった自宅など画面をさらっていく。

 また、1997年にたった3人でスタートし、小規模会場を中心に興行を行っていたDDT創生期の映像や、各選手の若き日の姿もふんだんに盛り込まれる。まだ線の細いキャリア初期の姿や、薄暗い会場の様子も確認でき、本作は来年20年を迎えるDDT自体のドキュメンタリーともなっている。

 前作の『プロレスキャノンボール』は「プロレスとは何か?」を観る側に考えさせる作品であったが、今回は試合はもちろん、業界の盟主・新日本プロレスと戦うDDT、大会進行の台本と格闘する坂井と、それぞれの闘う姿が映し出され、「勝ち負けより何かと闘う姿を見せるのがプロレスではないか」と前作に連なり考えさせらされる。

『俺たち文化系プロレスDDT』――そのタイトルのごとく、あたかも“終わらない文化祭”のようにプロレスを続けるDDT。東京での上映は11月26日より新宿バルト9で始まるが、そこから7日間連続で舞台挨拶を実施と、DDTらしい尋常ならざる仕掛けで開幕となる。『新日本プロレスvs.DDT』、その戦いの結末、そして何が起こったのか? ぜひスクリーンで目撃されたし。
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著者プロフィール

映画ライター。ペンネームは『シベリア超特急2』に由来し、生前マイク水野監督に「どんどんやってください」と認可されたため一応公認。松濤館空手8級。

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