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屈辱にまみれたソフトバンクに充実の秋
基礎練習を重視したキャンプの意図

夕刻に聞こえる声にならない悲鳴

3連覇を達成できなかったソフトバンクの秋季キャンプは工藤監督の号令のもと、徹底的な基礎練習で体力アップ、筋力アップを図った
3連覇を達成できなかったソフトバンクの秋季キャンプは工藤監督の号令のもと、徹底的な基礎練習で体力アップ、筋力アップを図った【写真は共同】

 声にならない悲鳴が、夕刻の球場のあちこちから上がっていた。


 ロングティーを行っていた若手野手6人が苦悶の表情を浮かべながらグラウンドに倒れ込んだ。なかでも19歳のスラッガー候補である黒瀬健太は両脚と両脇腹など計6カ所がつり、身動きできずにうめき声を絞り出すことしか出来なかった。


 10月29日、秋季キャンプ初日の出来事だ。午前中ラストのランニングメニューが引き金となっていた。100メートルを15秒以内に走り切り、すぐに45秒以内に折り返し戻ってくる。休みなくまたスタートするのを繰り返すこと10本。これが1セットで、計4セットの“4キロダッシュ”だった。そのダメージが午後の特打に表れたというわけだ。


 3年ぶりに味わった敗者の秋。福岡ソフトバンクは11月19日まで、宮崎市で秋季キャンプを張った。V10構想を掲げながら3連覇に失敗。しかも一時は11.5差をつけながら北海道日本ハムに逆転され、CSファイナルでも敗れるという、屈辱にまみれた1年の終わり方だった。

抑えた、打ったはあまり重視されず

 覇権奪回へのリスタート。毎日の練習メニューの右端には、明確な目標が大きな文字で書き込まれていた。


「体力・筋力アップ!!」


 他球団を見渡せば、巨人や阪神などは対外試合を行ったり、千葉ロッテも紅白戦を実施したりするなど、秋も実戦形式を取り入れたチームは多かった。シーズン終了まもないこの時期は選手たちの体が出来上がっており、技術練習に時間を割く球団が多くなる傾向が多い。


 しかし、ソフトバンクはシート打撃こそ3回行ったが、それは一部の投手と打者のみで、守備を担当したのは打撃投手などチームスタッフだった。つまり抑えた、打ったという結果はあまり重視されなかった。


 また、キャンプ参加メンバーは極端に若手中心だった。30代以上は基本的に免除。序盤こそ侍ジャパン組の姿があったが、キャンプを通して参加した主力級といえば野手では柳田悠岐、投手では岩嵜翔、東浜巨、森唯斗くらいなもの。どうしても地味に映る。そのためか、毎春のキャンプでは大賑わいの生目の杜運動公園も今秋は寂しいものだった。メディア露出も例年以上に少なかったと思う。


 だが、地味で結構。終わってみれば、これほど充実した秋季キャンプはなかったのではないかと胸を張れるほど、ソフトバンクの若手たちは大きく成長した。

体力があるからこその技術練習

 実戦よりも基礎練習を重視した理由を、工藤公康監督はこう述べる。


「土台がしっかりしていなければ、技術練習もできない。体力がついていない選手が無理に練習をすれば故障につながってしまう。逆に言えば体力や筋力をしっかりつけていれば、それだけ技術練習にも打ち込むことが出来る。初めはきついと思うが、じきに走っても疲れないとか、トレーニングをしても体が張らないとか、そう前向きにとらえられるようになると思う。キャンプが終わる頃にはそうなってくれればいいよね」


 現役時代から運動生理学などを学んだ指揮官が言うには、「人間の肉体の疲労は72時間もあればとれる」とのこと。にやりと笑って、こう続けるのだった。


「最初の3日間はしんどい。ベッドから起き上がるのもきついと感じる時もある。でも、それを乗り越えれば徐々に楽になる。あとは気持ちの問題だよ」

田尻耕太郎
田尻耕太郎

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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