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3勝1敗の侍ジャパンに残った消化不良感
世界一奪還への疑問は解消されず…
WBC前にメンバー選考へ向けた、また実戦でいろいろと試す最後の強化試合を3勝1敗で終えた侍ジャパン
WBC前にメンバー選考へ向けた、また実戦でいろいろと試す最後の強化試合を3勝1敗で終えた侍ジャパン【写真は共同】

 来年3月の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向けた選手選考、そして実戦でいろいろと試す最後の機会と位置付けられたメキシコ、オランダとの強化試合4試合を3勝1敗で終えて、残ったのは消化不良感だった。

小久保監督が考える大谷の起用法

第3戦で特大ホームランを放つなど、あらためて日本トップクラスの打力を見せつけた大谷
第3戦で特大ホームランを放つなど、あらためて日本トップクラスの打力を見せつけた大谷【写真は共同】

 その理由は、小久保裕紀監督の語った次の言葉に集約されている。強化試合の2戦目、11日のメキシコ戦に3番・指名打者で出場した大谷翔平(北海道日本ハム)が4打数2安打の活躍を見せた際、テレビ局の代表質問で「ファンはWBCでの打者起用(つまり二刀流)を見たいが」と振られると、指揮官はこう答えた。


「球界の宝なので、僕の一存では決められないと思います。体に負担がないように、一番いい方法を考えたいと思います」


 今回の4試合で最も輝いたのが、打者・大谷だった。先発出場した第2、3戦で計9打数4安打の活躍を見せると、4戦目では7回に代打出場して天井パネル部分に消える特大の二塁打(特別ルール)を放っている。だが、大谷が規格外の打力、そして走塁スピードを見せつけるたび、皮肉な思いに襲われた。大谷の二刀流が本番で実現する可能性は限りなく低く、あったとしても重要な試合に限られると思われるからだ。


 メキシコ、オランダとの4試合を終えて、小久保監督はこう明かしている。


「起用法については悩みしかないです。強化試合では2試合スタメンでの起用と、そうではない起用をしましたけど、大谷がいると打線に点が入りそうな雰囲気が実際にありました。ただ、基本は今のところ投手という考えでいます」


 世界中から優れた日本人選手たちを招集して一丸となって臨むサッカー日本代表とは異なり、野球の侍ジャパンはさまざまな制約の中で戦っている。今回の4試合でも、諸事情で招集を断った選手もいたと聞く。試合中の起用でも無理をさせられず、戦略面や采配面でWBC本番を想定できているとは言えなかった。


 そうした事情もあり、侍ジャパンが抱える3つの課題は本番まで先送りされた。その一つが、大谷の起用法だ。普通に考えれば本番では先発投手としての起用が濃厚だが、この4試合で日本トップレベルの打力を見せつけたことで、打者・大谷を簡単には捨てられなくなった。


 しかし、2016年ポストシーズンで見られたような二刀流の起用法は、WBCでは限りなく難しい。日本ハムに貸してもらう立場の侍ジャパンが、大谷を傷つけるわけにはいかないからだ。WBCがプロ野球開幕直前の大会であることを考えると、大きな負担をかけられず、代打出場が精いっぱいではないだろうか。

当落線上の先発が結果残せず……

先発の新戦力として期待された野村だが、第2戦に先発して4回3失点と結果を残せなかった
先発の新戦力として期待された野村だが、第2戦に先発して4回3失点と結果を残せなかった【写真は共同】

 投手陣の駒がそろっているなら大谷を打者で起用する手もあるが、そのプランは現実的に厳しい。代表入りの当落線上にいる石川歩(千葉ロッテ)、野村祐輔(広島)、藤浪晋太郎(阪神)、そして先発左腕として期待された石田健大(横浜DeNA)、田口麗斗(巨人)が滑るボール=WBC公式球に適応できていない影響か、今回、ことごとく結果を残せなかったからだ。


 強化試合が始まる前日の9日、小久保監督は「日本の一番の強みは投手力」と話したが、現状、ピッチャー陣の構成が最も悩ましい。本番で選ぶ13投手の内訳について聞かれた指揮官は、こう答えている。


「8−5(先発、第二先発を合わせて8人、中継ぎ5人)で考えています。というのは、(勝ち点で並んだ場合)2位・3位のプレーオフが今回入っていますので、5日間で4試合になると考えたときには、(先発)6人ではたぶん回せないんですね。ただ球数制限がある中で小刻みの継投のほうが計算が立つのであれば、7−6にすることも含めてこれから考えます。(出場できる)メジャーの選手も出てきてから、決めていきます」


 田中将大(ヤンキース)やダルビッシュ有(レンジャーズ)などメジャー投手が出場できるなら、これほど心強いことはない。実力はもちろん、WBC公式球に慣れているからだ。


 日本投手陣にとって、ボールへの適応は生命線になる。今回の強化試合で2試合に登板し、5人の打者を完璧に抑えた宮西尚生(日本ハム)は、12日のオランダ戦後にこう話した。


「極端に言えば、一番大事かもしれないですね。外国のバッターは当たると一発があるので。ボール(の感覚)が1球、1球違うのと、天候や、屋外かドームでも違いますし。手の汗のかき方でも、ちょっとずつ変わります。昨日よりも今日のほうが、ちょっと滑った感じがありました」


 10月29日まで日本シリーズを戦った宮西はほとんどボールに触らないまま侍ジャパンに合流し、大会公式球に触り始めてから間もない。WBCでは毎回のようにボールへの対応が問題になるが、いまだに日本球界として効果的な対策を打っておらず、個人頼みになっている。本気で「世界一奪還」を目指すのであれば、本来、そうしたところから行うべきである。

中島大輔
中島大輔

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた『野球消滅』(新潮新書)。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』がミズノスポーツライター賞の優秀賞。

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