若き侍ジャパンが見せた収穫と課題 U−23W杯初代王者の栄冠勝ち取る

ベースボール・タイムズ

目立った投の本田、打の真砂

大会MVPには打率3割8分7厘、4本塁打、14打点の真砂勇介が選出された 【Getty Images】

 選手個々に目を向けると、投手では本田圭佑(埼玉西武)、打者では真砂勇介(ソフトバンク)の2人の働きが光った。

 本田は初戦のニカラグア戦に先発し、テンポの良いピッチングで7回を2安打無失点に抑えると、宿敵・韓国戦ではソロ被弾も8回を4安打1失点で12奪三振の快投。さらに決勝戦では「使うかどうか迷ったんですけど、今一番いい本田で行こうと決めた。本人も“行ける”ということだった」(斎藤監督)と6回から3番手としてマウンドに上がり、打者6人から5三振を奪って試合の流れを決定づけた。

「結果には満足しています」と本田。これまではサッカー界のスターとの同姓同名で“名前先行”の感があったが、今回の大舞台で本家に負けず劣らずのメンタルの強さを披露。来季1軍で活躍する姿もイメージできたはずだ。

 そして真砂だ。全9試合で4番に座り、31打数12安打の打率3割8分7厘、4本塁打、14打点。オープニングラウンド5試合では全試合で打点を挙げ、先制を許したアルゼンチン戦、そしてスーパーラウンドの韓国戦ではともに同点弾を放つなど、まさに4番の仕事を遂行。パナマ戦、メキシコ戦では無安打に終わったが、決勝のオーストラリア戦では「気持ちで(スタンドに)入った」と復活アーチを架け、大会MVPを受賞した。

 プロ4年間で1軍出場はないが、「1戦1戦、こういう試合をして、自分にとってもいい経験になった」と真砂。長打力だけでなく、計7四球に隙を逃さない走塁、そしてメキシコ戦で見せた送りバント、パナマ戦で見せたレーザービームと走攻守で能力を存分に見せつけた。層の厚いホークス外野陣だが、多くのファンとともに工藤公康監督も“1軍で見てみたい”と思ったはずだ。

プロ・アマの“融合”は不完全

 その他、武田健吾(オリックス)、植田が1、2番コンビとして機能し、真砂とともに不動のクリーンアップを務めた乙坂智、山下幸輝(ともに横浜DeNA)の2人も能力の高さを披露。スピード自慢の吉持亮汰(楽天)は、今大会19打数10安打とラッキーボーイ的な活躍を見せた。

 しかしその一方で、背番号18を与えられて今チームのエースとして期待された安楽智大(楽天)は不満の残る内容だった。チャイニーズ・タイペイ戦では3回に本塁打を含む4本のヒットを集められて6回5安打3失点。パナマ戦では初回から5イニング中4イニングで先頭打者を許す投球で、3回、5回と失点して8回6安打3失点。自慢のストレートも現地の球場表示で最速130キロ台後半から140キロに乗るかどうかといったところで、エース然とした投球を見せることはできなかった。

 また、各世代の侍ジャパンの中で唯一の「プロ・アマ混合」チームとしても注目されたが、ポイントゲッターとして期待された丸子達也(JR東日本)が第3戦までに6打数無安打と結果を出せず、以降は出番なしに終わったこともあり、プロ・アマの“融合”という意味では不完全に終わった。

 そして大会自体にも課題は多く残る。世界一を決める大会ならば出場してしかるべき米国とキューバが不参加。プロ主体の日本も、仮に「23歳以下の最強チーム」をうたうならば、他に選ばれるべき選手がいたことも事実だろう。注目度の上でも、大会序盤が日本シリーズの開催時期と重なったことから、特にオープニングラウンドは世間的にほぼ無関心の状態だった。これらは4年後の開催が予定されている第2回大会以降の課題となる。

 ただ、優勝したことは事実であり、初代王者の持つ意味は大きい。勝てば官軍。実際に優勝したことで一気に露出も増えた。注目されることが選手の成長へとつながる。そして、大学代表、U−18代表から、女子代表、U−23代表と続いた歓喜の流れを、来年のWBCでトップチームが引き継ぐことができれば、今回の優勝の価値もまた大きくなる。

(三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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