今回の侍ジャパンは絶対的な捕手不在…WBCへ向けて選考の評価ポイントは!?

中島大輔

リーダーシップを評価される嶋

昨年のプレミア12では主将としてチームをけん引した嶋。小久保監督もそのリーダーシップを高く評価する 【写真は共同】

 2017年3月の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む野球日本代表(侍ジャパン)には、過去3大会と決定的に異なる点がある。

 06年の第1回は里崎智也(当時・千葉ロッテ)、09年の第2回は城島健司(当時・米大リーグ・マリナーズ)、13年の前回は阿部慎之助(巨人)という球界を代表する捕手がいたものの、今回は絶対的なキャッチャーが見当たらないのだ。

 11月10日から行われるメキシコ代表、オランダ代表との強化試合に向けて選出されているのが、嶋基宏(東北楽天)、大野奨太(北海道日本ハム)、小林誠司(巨人)の3捕手。そのなかで、これまで小久保裕紀監督のチームをキャプテンとして牽引してきた嶋が、WBCでも選ばれることは確実だ。リーダーシップを評価されるこのキャッチャーは、練習、強化合宿の行われる今回の8日間で投手陣とのコミュニケーションを深めたいと考えている。

「一緒にやったことのないピッチャーが結構たくさんいるので、少しずつ話をしながらやっていきたいと思います。ブルペンに入れる機会があれば積極的に入って、試合中でも入れるときには入る。ピッチャーのいいところを引き出していくことが、キャッチャーとして一番大事です。それが悔いを残さないようにするところだと思うので、どんどん話をしていきたいと思います」

大事なのは結果うんぬんより安心感

大野は日本一に輝いた日本ハムの正捕手。キャッチングやスローイングに定評があり、今回が代表初選出となった 【写真は共同】

 一方、大野と小林の選出については、「本番への見極めだ」と村田善則バッテリーコーチは明かした。

「小林は今季12球団で試合を一番こなして、大野は優勝チームのキャッチャーというところで招集しました。今回の8日間で『これは春も任せられる』と判断した場合には春も呼ぶし、トータルで見て、もう少し経験のあるベテランのほうがいいかなと監督も含めて判断したときには、入れ替えるケースもあるわけですから。2人は今年頑張ったキャッチャーで、今回で判断していく。それが来季につながるかどうか、というところです」

 今季109試合に出場した大野は、キャッチングやスローイングに定評がある。一方、小林は129試合に出場し、12球団の捕手で唯一規定打席に到達した。打率2割4厘、クライマックスシリーズではキャッチングミスを犯すなど打力、守備力ともに課題を残すものの、現在の球界には「正捕手」といえる選手が少なく、小林はコンスタントに出場してきた点が評価された。

 11月10日から行われる強化試合では3人の捕手に同程度のチャンスが与えられ、来春の本番に向けた最終チェックが行われる予定だ。その評価ポイントについて、村田コーチはこう語った。

「結果うんぬんより、(マスクを)かぶっているときの安心感ですね。普段受けないピッチャーと組むケースも出てくると思いますけど、そういうときに無難にこなせるか。特別ものすごい何かを見せる、というところではないと思うので、安定感があるところを見せてくれればいいと思います」

 大野や小林がアピールできれば本番での代表入りに近づく一方、そうでない場合、炭谷銀仁朗(埼玉西武)、石原慶幸(広島)というWBC経験者が控えている。むしろ守備力を考えれば、彼らを選ぶのが妥当なところだろう。

チーム編成に大きく影響する捕手選考

ことし12球団の捕手として唯一規定打席に到達した小林。課題はあるものの、コンスタントに試合に出場してきたことが評価された 【写真は共同】

 問題は、その起用法だ。絶対的なキャッチャーが見当たらない以上、投手に合わせて捕手を変える手もある。そうした可能性について村田コーチは、「本番のメンバーが出そろった時点で、多少そういうのは出てくるかもしれません。今秋の時点では、そういうのは考えていないです」と話した。

 また、第3捕手が誰になるかも興味深い。実際に守る機会がそう多くないと考えられるだけに、守備力より打力を優先して森友哉(西武)、あるいは阿部を呼ぶ手もある。前回の例でいえば、WBCでベンチ入りできる人数は28人と限られており、打力に優れる捕手が強力な代打として控える利点は大きい。

 果たして、そうした選出はありえるのか。村田コーチに聞くと、こう答えた。

「これからの編成上のところだと思います。たとえば絶対的なキャッチャーが見つかれば、ということもあります。あるいは、3人をうまく先発で使うような使い方をしなければいけない場合では、人選が変わってくると思います。監督の考えのもとで、どっちを選択するかですね。今回の8日間が終わって、来年に向けてどういう位置づけの選手を呼んでいくのかという話し合いになると思います。そのときに、いろいろな意味での選択肢が出てくるかもしれません。ただ、いまの時点では、それを見極めている段階だと思ってもらいたいです」

 今回の8日間で、嶋が正捕手の座を確たるものにするのか。それとも大野や小林がその座を脅かすのか、あるいは彼らが第2捕手として首脳陣の信頼を勝ちとるか。過去のWBCでは、試合終盤に勝負をかけられる駒の重要性が何度も示されてきた。

 キャッチャーの3枠に誰を選ぶかで、チームの戦い方の幅にも大きく影響してくる。これまでの3大会と違って絶対的な捕手がいないだけに、その陣容をどうするか、首脳陣の眼が問われる。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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