侍J投手陣が強化試合で確認すべきこと WBCでの日本代表入りへ重要なマウンド

中島大輔

代表経験の浅い投手にチャンス

6日から始まった11月の強化試合への合同練習。代表歴のある山崎(写真右)は「クローザーの場所で投げたい」ときっぱり 【写真は共同】

 本番まで残り4カ月。2017年3月に開催される第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2大会ぶりの優勝を目指す野球日本代表(侍ジャパン)が11月6日、強化試合に向けた練習を千葉・QVCマリンフィールドで開始した。

「ひとつ言えることは、あの悔しさを忘れたことはないということです」

 メンバー発表会見で昨年辛酸を舐めた世界野球プレミア12をそう振り返った小久保裕紀監督にとって、来年のWBCはリベンジを果たす舞台にもなる。そのために11月10、11日のメキシコ代表、12、13日のオランダ代表との強化試合で必要になるのが、本番に臨む戦力の見極めだ。

 陣容が固まりつつある野手陣に対し、投手陣はこれから見定めていく。プレミア12のメンバーから則本昂大、松井裕樹(ともに東北楽天)、牧田和久(埼玉西武)が外れたが、彼らはシーズンの疲労を配慮されたのだろう。

 強化試合に臨む投手陣はフレッシュな顔ぶれで、小久保監督は「(WBCの選考には)今回の投球内容も入ってきます。あとはメジャー選手が絡んできます」と明かした。実績のある大野雄大(中日)や小川泰弘(東京ヤクルト)、涌井秀章(千葉ロッテ)らを今回は招集せず、戦力の底上げを図るべく、代表歴の浅い投手にチャンスを与えた格好だ。権藤博投手コーチは、「こっちが選ぶほど、格差はないよ。何番手で投げようと、みんなすごいピッチャー。それくらいいいメンバー」と期待をかけている。

新戦力のチェックに大事な修正能力

 すでに強化試合の登板日は決まっており、先発は初日から武田翔太(福岡ソフトバンク)、野村祐輔(広島)、石川歩(ロッテ)、石田健大(横浜DeNA)の順番だ。球数制限のあるWBCを睨み、先発投手陣に加えて第2先発も選ばれている。藤浪晋太郎(阪神)、増井浩俊(北海道日本ハム)、千賀滉大(ソフトバンク)、田口麗斗(巨人)の4人で、増井自身は2日目に投げる予定と明かした。先発と第2先発がそれぞれ3〜4イニング投げ、そこで好投した者が本番のメンバーに名を連ねてきそうだ。

 リリーフでは、プレミア12で欠けていた左のスペシャリストとして宮西尚生(日本ハム)、岡田俊哉(中日)。右では秋吉亮(ヤクルト)、大瀬良大地(広島)、山崎康晃(DeNA)が選ばれた。5人が投げる日は決まっておらず、権藤投手コーチは「毎日回るかもわからないし、1回も投げないかもわからん」と伝えている

 試合状況に応じて適任者を投げさせ、その場面で好投できるかどうか、本番を見据えての確認が行われる。先発、ブルペンともにチェックポイントになるのが、国際試合への対応力だ。指揮官は、具体的にこう話した。

「マウンドの硬さ、ボールの違いを1試合のなかで修正するのはなかなか難しいかもしれないけど、修正能力も問われるところだと思うので、新しい戦力に関してはチェックしたいと思います」

求められる国際試合への適応能力

 すでに代表歴のある投手にとっては、国際舞台への適応を含めてアピールが求められる。昨年のプレミア12、今年3月のチャイニーズタイペイ戦に続いて招集された増井は、当時の経験をふまえてこう話した。

「長打を恐れてカウントを悪くするのが、やってはいけないことだと思います。ストライクゾーンでどんどん勝負できればいいのかなと思います」

 今季途中にクローザーから先発に回った増井に対し、侍ジャパンで求められるのは後者の役割だ。そのうえで、「なるべく少ない球数で、イニングを稼げるようにできればいいと思います」と話している。

 同じくプレミア12から選ばれている山崎は、国際試合では自身の強みを発揮しやすい一方、普段とは異なる投球も求められると語った。

「外国のバッターなので落ちる系も有効だと思います。そういう意味では、僕の武器であるツーシームがカギになると思うので、有効的に使うためにも普段のシーズンでは投げないボールも必要だと思います。インコースにも行くし、高いボールも使うし、ツーシームもさらに精度を上げてストライク、ボールに投げ分けないといけない」

 山崎にとっても来年のWBCは、昨年の悔しさを晴らす機会だ。

「マウンドに上がるピッチャーは1人なので、一番いいところで投げたいと思っています。プレミアで最後(のクローザー)に名前を呼ばれず、信頼感という部分では、自分自身でまだ足りないところがたくさんあると思うし。同じ状況で、(クローザーとして)名前が呼ばれるようないい機会にしたいと個人的に思います」

 メキシコ、オランダとの4試合を終えれば、いよいよ迎えるは来年の本番だ。この日、小久保監督は「WBCモードに入れてやっていってくれ」と選手たちに伝えた。晴れ舞台での日本代表入り、そしてそれぞれが望む持ち場を確保するうえで、投手陣たちにとって今回の強化試合は重要なマウンドになる。
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著者プロフィール

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年夏、セルティックの中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。

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