王座争う二人の“メンタル・バトル” 今宮純のメキシコGPインプレッション

F1速報

ハミルトンはスタート直後、1コーナーの飛び込みでブレーキロックしつつも、首位を守った 【XPB Images】

 メキシコだけに“スパイシー”な後味が残るレースだった。タイトルマッチGPともなると直接争う者だけでなく、それぞれの決戦意識が強まる。昨年以上となる13万人の大観衆がぎっしり詰めかけ、その熱気がまた決戦空間をつくり出していた。

 ロケット点火、ポールポジションのルイス・ハミルトンはほんの一瞬出遅れたかに見えたが、クリーンなラインを加速。徐々に内側に進路を取り、約800メートルのダッシュ競争で先頭を守った。1コーナーまでが最も長く、最も高速な300キロオーバーからのビッグブレーキング。必ずと言っていいくらい、危うい場面が起きている。冷えたブレーキでいきなりフルブレーキングになるからだ。

「やってしまったな、ハミルトン!」

 フジテレビでのF1中継、1コーナーまでは西岡孝洋アナのリードでと打ち合わせがあり、絶叫はつつしみ実況描写がうまい彼に任せる。激しいロックアップ、曲がりきれず芝に逃げ2コーナーに先頭のまま戻ったリーダー。「これでいいの?」と思ったが、審議対象にはならず、他からのアピール無線もOAされない。さらにニコ・ロズベルグとマックス・フェルスタッペンも絡まり、これも危うかった。「おーっと、逃げたハミルトンと避けたロズベルグ、大勝負がかかっている二人ギリギリのコントロールだあッ」(と古館さんなら叫んだかも)。

 その先4コーナーまでも決まって何か起こるのが“ロドリゲス兄弟サーキット”。ロマン・グロージャン、マーカス・エリクソン、パスカル・ウェーレインが多重接触。バーチャルセーフティカ―からセーフティカ―へ。急展開するなか6番手ダニエル・リカルドがピットへ。1分足らずの間の決断にレッドブルの“瞬発力”を感じた。

 それにしてもハミルトンのフラットスポット(タイヤが摩擦で平面になった箇所)はどうか。きっと振動に襲われ、彼のハートも震えているに違いない。でもペースは落ちない。10周目には2位ロズベルグを3秒以上離していく。もしもまたロックアップしたら地獄に落ちるのに、この序盤ピンチをカバーした彼のドライビングに渾身の技が見て取れた。

 2位ロズベルグに追いこむ気配がないのはなぜだろう。勝負師の選択として彼はアメリカGPでも先を見越し、序盤から“勝負”に出てこなかった。決して消極的ではなく、落ち着いて構える今年のロズベルグ。追わずとも、ハミルトンは振動によってミスするかも。先に早くニューセットタイヤに換えるのは必至だ。焦って動こうとはしないロズベルグ。

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