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海外で道を切り開く松坂暖と世川楓悟
イギリスから東京五輪を目指す

スウェーデン4部でプレーする世川楓悟

中学卒業後に単身渡英した世川楓悟は帝京ロンドン学園のサッカーコースを経て、現在はスウェーデン4部でプレー
中学卒業後に単身渡英した世川楓悟は帝京ロンドン学園のサッカーコースを経て、現在はスウェーデン4部でプレー【カルロス矢吹】

 そしてもう1人、松坂と同じく英国を出発点に海外で戦う同年代の日本人選手がいる。世川楓悟、現在スウェーデン4部のオンゲIFで左サイドバック(SB)としてプレーする彼は、日本に生れながら幼少期より強い海外志向を持ち、中学卒業後に単身渡英。英国の在外教育施設、帝京ロンドン学園のサッカーコースに進学し、卒業後スペイン4部クラブでのトレーニングを経て、今年7月にオンゲIFに移籍した。


「海外に行こうと決めたのは小学生の時。地元市川の市選抜に選ばれてドイツ遠征に行った時、そこでの環境に驚いて。天然芝が何面もあって施設もすごかったんですけれど、ドイツ人と相部屋だったんですよ。僕たち日本人は空いた時間に漫画を読んだりして遊んでいたのに、彼らは空き時間があればすぐ芝生のピッチに出てサッカーをやって、取り組み方が全然違った。『自分もこういう環境でサッカーをやりたい』と思うようになり、中学は英語を勉強して準備して、高校から帝京ロンドン学園のサッカーコースに進学しました」


 両親共にドイツのオーケストラに所属していたことから、家族も早くから海外に挑戦することには賛成で、サポートを惜しまなかったという。語学も含めてしっかりと準備をした世川だが、それでも最初は戸惑いの連続だったそうだ。


「自分が入学した時の帝京ロンドン学園は、州大会を制覇するくらい強かったんですけれど、初戦に出してもらえたんです。当時は中盤をやっていて、『抜いた!』と思っても、見えないところから手や足が伸びてきて取られて。そういうイングランド人との体格の差は、(試合に)出てすぐ感じましたね。SBにコンバートしたのも、1年生の頃に練習試合でSBを任された時に、自分の武器であるスタミナやスピードで勝負するにはヨーロッパではSBがベストだ、と考えて自分からポジションを変えました。その年でイングランドでのプレー環境に適応できて、あの1年は本当に充実していましたね」

「早く世界レベルになって、まずは東京五輪に出たい」

 卒業後トレーニングを積んだスペインでも、世川は大きなカルチャーショックを受ける。


「スペイン人は判断のスピードがすごく早いし、個人のエゴもすごい。フィジカルも強いし、練習でも身体を当ててくるんですよ。ただ、プレミアリーグとかだと、ちょっとくらい身体がぶつかっても倒れないし、審判も笛を吹かないじゃないですか。スペインは逆。試合になるとちょっと接触したらすぐにわざと倒れて、倒れている本人は笑っているのに、審判もファウルを取る。


 スペイン語の壁も感じました。スペインの練習はコーチの指示がすごく複雑で細かくて、考えさせる練習をするんです。身振り手振りで理解するのは無理で、チームメートもスペイン人同士で固まるので、スペインで活躍するのは難しいと思いましたね」


 そうした紆余曲折を経てたどり着いたスウェーデンの地に、世川はうまく適応できているようだ。


「このリーグはロングボール主体のダイレクトなプレーが多くて、その中で攻撃参加も含めて、ちゃんと自分を出せていると思います。ヨーロッパはどこに行ってもフィジカルが強いですけれど、そこの心配はもうしていません。今の自分の課題はクロスの精度だと思っているので、そこを磨いてもっとステップアップしていきたいです。


 日本とルールは一緒ですけど、ヨーロッパのサッカーはまた違います。その環境に合わせるためにも、本当に早くこっちに来てよかった。日本でやっている選手にはないダイナミックなプレーが自分の持ち味なので、早く世界レベルになって、まずは東京五輪に出たいですね」


 アンダー世代はメディアの扱いだけでなく、選手選考も国内に目線が集まりがちだが、五輪やW杯という国際舞台では「異文化」と直面することになる。その時、松坂や世川のように若くして海外で道を切り開いている選手の力や経験が、必ず日本代表の大きな助けになるはずだ。

カルロス矢吹
1985年宮崎県生まれ。大学在学中より、日本と海外を往復しながら、音楽・映画・スポーツ・ファッションなど世界各地のポップカルチャーを中心に執筆業を開始。コンサート運営、コンピレーション編集、美術展プロデュースなど、アーティストのサポートも行う。2012年より、日本ボクシングコミッション試合役員に就任し、山中慎介や井上尚弥ら、日本人世界チャンピオンのタイトルマッチを数多く担当している

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