海外で道を切り開く松坂暖と世川楓悟 イギリスから東京五輪を目指す

カルロス矢吹

イングランド3部所属のCB松坂暖

日本人の父とイギリス人の母を持ち、ロンドンで生まれ育った松坂暖。サウスエンド・ユナイテッドに所属している 【カルロス矢吹】

 バーレーンで開催されているAFC U−19選手権。U−20ワールドカップ(W杯)出場権が懸かるだけでなく、2020年東京五輪に向けても大きな試金石となるであろう今大会、U−19日本代表は準々決勝に勝利し、翌年の世界大会への切符を手にした。このチームは全員が「国内組」で占められているが、この世代にも「海外組」が存在する。

「日本はサッカーでは“Underdog(かませ犬・負け犬)”だと思われています。僕は父親が日本人ですから、そう言われると自分も悔しかったし、日本代表として試合に出たいと思うようになりました」

 そう語るのは、松坂暖。日本人の父とイギリス人の母を持ち、ロンドンで生まれ育った19歳のセンターバック(CB)だ。日本語と英語まじりのオットリとした口調とは裏腹に、190センチという立派な体格を誇る。

 クリスタルパレスの下部組織を経て、現在はイングランド・リーグ1(3部)のサウスエンド・ユナイテッドに所属。イングランドではなく日本代表入りを熱望しており、昨年11月にU−18日本代表がイングランド遠征を行った際にはトレーニングメンバーに選出され、バーミンガム・シティU18、リバプールU−18との対戦では日本代表としてプレーしている。その時のことを、松坂はこんなふうに振り返っている。

「日本の選手は、みんな足元の技術はとてもうまいけれど、フィジカルの勝負で押されることが多かった。僕の武器は、高さとパワー。僕が入ることで、そこをカバーできると思います」

「いつかはJリーグでもプレーしてみたい」

 松坂が所属するサウスエンド・ユナイテッドは今年で創立110年目。3部ながら、ロンドン中心部から電車で東へ1時間程の距離にある本拠地ルーツ・ホール・スタジアムは、平日夜の試合でも半分以上の客席が埋まる。トップチームの監督を務めるのは、ハル・シティなどプレミアリーグでも指揮を執ったフィル・ブラウン。チームメートにも、今季からリオ・ファーディナンドの弟であるアントン・ファーディナンドが加入しており、多くのプレミアリーグ経験者が所属している。彼らから学ぶことも多いようだ。

「フィル・ブラウンは良い意味で、自分が会った人の中で一番confident、自分に自信を持っている人ですね。こういう人が、プレミアリーグで戦えるんだなと思いました。僕は日本人の中では大きい方ですけれど、こっちでは普通です。チームメートには197センチのCBもいるし、対戦相手のFWも190センチ以上ある選手が多いので、いつも自分より大きい選手と当たっています。負けないでやれていますけれどね」

 チームの平均年齢は25歳と比較的若いが、松坂はチーム最年少で、現時点ではCBの3番手、4番手である。それでも、カップ戦を中心に既に今シーズン、出場機会を得ており、着実にチーム内での序列を高めている。チームが彼に求めている役割は、本人の言う通り高さとパワー。ロングボールでのダイレクトプレーが多いイングランドの中で、しっかりと競り勝ち、相手を止める能力に加え、イングランドらしいこんなプレーも要求されている。

「日本ではあまり見ませんけれど、チームがロングスローをよく使うんです。だからいいポジションでスローインが取れたら、上がってターゲットになることもあります。ただ、自分の武器はフィジカルだけじゃない。クリスタルパレスの時から現在のチームでも、練習ではちゃんとキーパーからつなぐ足元の技術もトレーニングし続けています。そこを求められても、やっていけると思います。

 東京五輪には絶対に出たい、目標です。そして、今はヨーロッパでどこまで自分ができるか試したいですけれど、いつかはJリーグでもプレーしてみたいので、日本の人には僕のことを見ていてほしいですね」

 イングランドの地で生まれ育ちながらも、松坂の目はしっかりと父親の故郷を見つめている。

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著者プロフィール

1985年宮崎県生まれ。作家、専門はポップカルチャー。(株)フードコマ代表。大学在学中より日本と海外を往復しながら執筆業を開始。2012年より、日本ボクシングコミッション試合役員に就任。山中慎介や井上尚弥ら、日本人世界チャンピオンのタイトルマッチを数多く担当。親子三代に渡る生粋の中日ドラゴンズファン。著書に『のんびりイビサ』、『北朝鮮ポップスの世界』、『世界のスノードーム図鑑』など多数。

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