大坂なおみが秘める判断力と頭の良さ 杉山愛コラム「愛’s EYE」

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爆発的なパワーに加わった安定感

大坂なおみは持ち前のパワーに加え、判断力に磨きがかかったことで安定感が増した 【Getty Images】

 9月の東レ・パンパシフィック・オープンで準優勝という素晴らしい成績を残した大坂なおみ。彼女のポテンシャルは一体どれほどすごいのでしょうか。

 技術的なところでは、なんといっても時速200キロ近い、男子選手並みのサーブです。非公式には200キロを上回る記録も出していて、これは歴代でもトップ10、トップ5に相当するでしょう。このサーブ力は絶対的な武器になると思います。グラウンドストロークも、一発で決めるだけの爆発的なパワーを持っていて、フォアハンド、バックハンド両方から攻撃できるのも強みです。

 最近の成長としては、安定感が出てきたことでしょう。単にドカンドカンと打つ選手は女子ツアーにもいますが、彼女はそうではありません。状況に応じて入れるべきところは入れる、しかも入れるだけでなく、ショットを安定させ、強く打った上で入れるということができる選手です。勝負すべき状況なのか、そうすべきではない状況、ニュートラルな状況なのかという判断ができる、その判断が正しいから安定感が増す、というわけです。無理に打ってもミスが増えるだけですから、そのあたりのバランスと判断力が良くなっています。

メンタリティーはすでにトップ選手並み

 あの表情からも見てとれるように、どんな状況でも冷静で、舞い上がらないのも彼女の長所です。なおかつ、燃えるところは燃える、熱いものを持っています。スポーツ心理学では「逆U字曲線」で示されるのですが、緊張とリラックスの度合いがちょうどいいのでしょう。リラックスし過ぎず、かつ、緊張し過ぎず、両方をほどよく持ち合わせている状態を作り出すのがうまいのだと思います。

 だからこそ、多くの選手が舞い上がってしまう四大大会のセンターコートや、期待されるが故に緊張感の高まる日本での国際試合でも、平然とクールに、自分のやるべきことに徹してプレーできるのでしょう。そこは彼女の強み、魅力と言えるでしょう。そうしたメンタリティーはすでにトップ選手並みと言っていいかもしれません。トップになるべくしてなる選手なのだろうなと思わせます。

 全豪オープンでは予選を勝ち上がり、本戦3回戦に進出、初めてのセンターコートでビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)と対戦しました。本人は今までで一番緊張したと言っていましたが、その後、全米でセンターコートに入った時には緊張しなかったと言います。これも最初の経験を経験値としたからでしょう。その全米のマディソン・キーズ(米国)戦はタイブレークの末に悔しい負け方になりましたが、そこでもまた学習し、経験を積んだからこその、東レでの活躍だったのだと思います。

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