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“新得点源”原口元気が残したインパクト
ドイツでの輝きを代表の左サイドでも発揮

ヘルタ・ベルリンで絶対的主軸に成長

原口はW杯最終予選4試合のうち、3試合で先制点を挙げる活躍を見せた
原口はW杯最終予選4試合のうち、3試合で先制点を挙げる活躍を見せた【Getty Images】

 ワールドカップ(W杯)アジア最終予選を4試合終え、2勝1分け1敗で3位につける日本。全6ゴールのうち、3試合で先制点を挙げ、チームの半分の得点をたたき出しているのが、ヘルタ・ベルリンに所属する原口元気だ。


 9月1日に行われた初戦・UAE戦では1−2で苦杯をなめ、黒星スタートとなった日本だったが、同6日の第2戦・タイ戦で、その重苦しいムードを吹き飛ばす急先鋒となったのが、値千金の先制点を挙げた原口だった。


「攻撃でも守備でも、走るとかそういう部分は(ヘルタ・ベルリンで)毎試合やっているので自然に出せた。そこは伸びている部分だと思います。だけど、代表ではそれ以外にもゴール前でのクオリティーが求められるので、そこをもっと追求していかないと。ドイツに帰ってから突き詰めていくのも、やはりゴール前。この仕事量を減らさずにフィニッシュの仕事をすることは大変ですけれど、トライしていきたいです」と、彼は目を輝かせながら語り、所属クラブへと戻っていった。


 その後の1カ月間、原口はドイツ・ブンデスリーガ5試合にフル出場。こだわっていたゴールを1つも奪えず、9月21日(現地時間)のバイエルン・ミュンヘン戦では圧倒的な力の差を突きつけられたが、走行距離とスプリント回数は毎試合、チームで上位を記録。目下、ブンデスリーガで2位につけるヘルタで絶対的主軸に成長したと言っても過言ではない存在感を示した。


 本田圭佑、岡崎慎司、香川真司という日本代表の“3枚看板”が今季に入ってから所属クラブで出場機会を大きく減らしている。得点はUAE戦で本田が1ゴールを決めたのみ、と苦境にあえいでいるだけに、日本代表の“新得点源”として、原口に対する期待は日に日に高まっていた。10月のイラク、オーストラリアとの2連戦に向け、チームに合流した原口は「僕はメンタルもコンディションもトップの状態。相手より強い気持ちを持ってプレーできれば、どう考えても技術的にも戦術的にも負けるところはない」と発言。強気の姿勢を前面に押し出すとともに、連続ゴールと左サイドの定位置奪取に燃えていた。

原口と本田の絡みで2試合連続ゴール

特徴の異なる本田とのコンビネーションもできつつある
特徴の異なる本田とのコンビネーションもできつつある【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 その言葉通り、6日のイラク戦では自らのボール奪取から先制点を生み出すことに成功する。前半26分、本田、清武弘嗣とつながった右の崩しに鋭く反応。清武の折り返しに飛び込んで右足ヒールで技あり弾を決め、チームに大きな勢いを与えた。


「ヘルタだとあそこには入れないですからね(笑)。いつもおこぼれを狙ってる感じですけれど、代表だとオカさん(岡崎)がうまく見てくれて、僕が入るスペースがあった。得点のシーンは落ち着いていたと思います」と原口は安堵感をにじませた。その後、リスタートから同点に追いつかれた日本は、山口蛍によるアディショナルタイムの決勝弾で勝ち点3を手にしたが、原口の2戦連続ゴールがなければ、そういう流れにもなりえなかった。


 タイ戦に続く際立った働きに「今回の最終予選のラッキーボーイ」という見方も強まってきたが、本人は「僕は運だとは思っていない」とキッパリと言い切った。「やるべきことをやって、それが形になるかならないかはチームの状況もある。僕が1人で点を取れるわけじゃないし、コンビネーションとかコンディションとかを気にしながらやっていくしかない」と全てが日々の細かいディテールの積み重ねの成果だとあらためて強調した。


 ヘルタでの3シーズンで得た確固たる自信と高い経験値、フィジカル的なバックグラウンドがあるから、原口は代表で堂々とした仕事が見せられる。かつての香川や本田らもそうだったが、所属クラブでのコンスタントな活躍があってこそ、選手は一気に成長するものだ。


 迎えた11日のオーストラリア戦。アジア王者との敵地でのゲームということで、ハリルホジッチ監督は自陣での組織的守備から素早いカウンターでゴールを狙うという、いわば“W杯仕様”とも言うべき戦術を採った。そこでも違いを生み出したのは、背番号8をつけるこの男だった。


 前半開始早々の5分。相手DFのミスパスをハーフウェーライン付近でカットした原口は、中央でフリーになっていた長谷部誠に預けてゴールへ一目散に走った。ただ、あまり早く前へ出すぎるとオフサイドラインに引っかかる。そのあたりを事前に本田から指摘されていたため、本田が持った瞬間、少しタイミングを遅らせてから飛び出したのだ。


「監督の言っていた通り、ショートカウンターがうまくはまった。圭佑君が『ひとつタメて、そのタイミングで裏に出てくれ』と話していたし、本当に狙い通りのゴールだったと思います」(原口)


 お膳立てした本田の方も、4年ぶりの1トップ先発で不慣れなところもあったはずだが、「ぶっつけ本番でもああやって1本出せて、自分自身にホッとしている部分がある。自分がFWをやる時はゼロトップ風な形なので、周りが点を取る可能性が高まるのかな」と少なからず手ごたえを口にした。


 爆発的なスピードと突破力を誇る原口と、高度な技術と老獪(ろうかい)さを併せ持つ本田。特徴の異なるこの2人が絡んでイラク戦に続くゴールを生み出したことは、10月2連戦の特筆すべき点だ。岡崎が左足首負傷で万全でなく、香川もゴールへのアイデアを思うように出せずに苦しむ中、彼らが日本の攻撃に新たな可能性をもたらしたのは大きい。同時に、原口は期待されていた通りの“新得点源”として十分なインパクトを残すことに成功した。そこは前向きに捉えていいだろう。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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