山口蛍「ここまで劇的なゴールはない」 W杯最終予選 イラク戦後の選手コメント
誕生日に行われた試合の後半アディショナルタイムに決勝ゴールを決めた山口蛍 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
試合後、この日が誕生日だった山口は「ここまで劇的なものは正直ないかもしれない」と自身のゴールを振り返り、喜びを口にしたが、「次に負けてしまったり、引き分けてしまったりすると、今日こうやって苦しんで勝ったものもムダになってしまう」と11日にアウェーで行われるオーストラリア代表戦に気持ちを切り替えた。
また、本田圭佑もオーストラリア戦に向けて「想像以上に押されるシチュエーションになると思う。僕の頭の中では、この感じだとダメ」と危機感を募らせており、現在の日本代表が抱える課題などをじっくりと語った。
山口蛍(セレッソ大阪)
(ゴールシーンを振り返って)CKがこぼれてくるかなと思っていたので、準備していました。入ってよかったなと思います。(ダイレクトだったが、迷いはなかった?)あまりなかったですね。その前に(酒井)宏樹のクロスをヘディングでいったんですけれど、絶対ふかしてしまうと思って頭でいきました。2回目のやつはもう最後でしたし、思い切って振り抜こうと思いました。それがゴールにつながったので、よかったなと思います。たぶんあれ以上浮いていたら、相手に当たっていたと思うので、しっかり抑えられてよかったと思います。(ベンチに一目散に駆け寄っていったが?)やっぱりチームの勝利ですし、苦しい中でやっぱり個人というよりかはチームで勝ち取った勝利だと思うので、そういう意味もありました。
(今まで誕生日にゴールを決めたことは?)誕生日はないと思います。(こんなにうれしいゴールを決めたことは?)ここまで劇的なものは正直ないかもしれないです。でもゴールというよりは、やっぱり日本代表が勝ったことの方がうれしいですね。代表では東アジア(カップ)ではありましたけど、ちゃんとしたA代表の試合ではゴールを決めたことがなかったので、そろそろ取りたいなという思いも、いろいろ話はしていたので、それが今日にたまたま重なっただけです。まあよかったなと思います。
(監督に厳しいことを言われたこともあったが、底力を見せられた?)今日は90分通して出たわけではなかったですし、最後のああいう時間帯で入って、たまたまああいう展開で自分のところにこぼれてきただけなので。やっぱり90分出てもっと何かしようとしなくちゃいけないと思うので、このゴールで別に浮かれる必要もないと思う。次に切り替えて次のことだけをやっていかなくちゃいけない。次(オーストラリア戦)に負けてしまったり、引き分けてしまったりすると、今日こうやって苦しんで勝ったものもムダになってしまうと思うので、やっぱり次に切り替えてやっていきたいと思います。
本田圭佑(ミラン/イタリア)
日本代表の現状について、本田は課題や反省点をいくつも挙げた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
(劇的な勝利になったが、課題も感じたのでは?)そうですね。課題は多かったと思います。でも、それを笑って反省できるようなシチュエーションに蛍がしてくれたということで、前向きに受け止めたいと思います。僕自身も2点目を取るチャンスがありましたし、その辺の前向きな反省ができるのは勝ちゲームだけなのでよかったと思います。(この勝利が今後の予選に与える影響は?)楽観視はしていないので、これはこれ、次は次だという切り替えが大事かなと。本当に次につないだだけという認識なので、一喜一憂せずに今日は今日、明日から切り替えてオーストラリア戦に向けてチームとして準備したいと思います。
(体が重いように見えたが?)体が動いていないという感触は特になかったです。決めるときに決めていればとか、細かいところのニュアンスはいくらか反省があります。それが普段試合に出ているから、出ていないからという理由で特段気になったことはあまりなかったです。
(いつも以上にシンプルな部分とスペースを作ったりというところを意識しながらプレーしているように見えた。チームの中で話をした?)チームとして……結局、監督の言っていることも理解できます。サッカーは絶対に監督の言っていることだけではなく、それ以外のシチュエーションが起こるので、監督の指示以外のことが起きたときの対応は各選手がピッチの上で感じてやらないといけないところです。僕はいわゆるプラスアルファのところは何人か近い選手で話し合いながらとか、ここまで出た課題とか、特に戦術的な部分で付け加えるところは意識しています。ただ、やっぱり今日もまだまだ本当に組み立ての部分、ポジショニングの部分での課題が多いかな。技術以外、能力以外での部分、ここに入れば簡単に崩せるのになという場面の意思統一。そこに関しては本当に改善が必要かなと思います。もっと簡単に崩れると思うんですよね。
(クラブと違って代表ではすり合わせる時間がない。そこの打開策、改善するためには?)基本はやりたいようにやるということだと思います。サッカーってやらされていいプレーができるものでもないんでね。とは言っても、そのベーシックを作るのは監督なので、ベースに乗りながらプラスアルファを選手が自分の得意としているプレーをその場、その場で加えていくということを意識していかないと。選手それぞれが窮屈に感じて自分の特徴を出せないと意味がないので、楽しくやる、自信を持ってやるということだと思います。
(マイボールの時間でもう少しコントロールできれば、こんな難しい試合にはならなかった?)本当にそう。ならないですね。もっと相手がじれるぐらいやりたいんですけどね。でも、それができなくなっているのは自分たちのせいでもあるので、課題は多いです。僕がさっき言ったプラスアルファの部分かもしれないですね。監督が嫌う部分かもしれないですし、その辺の調整が必要かもしれない。伝えていくことも大事だし、単純にピッチ上で判断するだけでもいいと思います。別にミーティングでそんなことを話さなくても。
(次のオーストラリア戦に向けて)もっと厳しくなる。アウェーでしょ。想像以上に押されるシチュエーションになると思います。僕の頭の中では、この感じだとダメですね。もう少しやっぱりずる賢さが、アウェーでの戦い方はあるんで、誰かが体を張って2〜3秒キープしただけでもシチュエーションが変わったりとか、クリアする場所とか……。本当に細かいんですけれど、意思の疎通というかサッカーをやっていれば分かるだろうというところを、どれだけピッチに立っている選手が分かるかですよね。苦しいときにはそれぞれの判断なので、そんなことをすり合わせて実現できる時間もない。ここまで自分たちで築いてきて、20年ぐらいサッカーやってくれば分かるやろということなので、そこを信じるしかないです。あうんの呼吸みたいなものがないと絶対にアウェーのオーストラリア戦では勝ち点3は取れないと思っています。
(途中交代について)今までは少なかったかもしれないですが、(ヴァイッド・)ハリルホジッチ監督になってからはそれなりに交代がある。監督の指示自体が前の3人に関しては疲れた選手から代えるということでした。だから(体力を)計算してやるなということです。今日で言ったら元気は点を取っていたし、オプション的に言えば元気は外さないですよね。順序的にはオカ(岡崎)、僕か元気やったら僕でしょうというところなので、当然かな。僕が監督でもそうしているかなという感じですね。
(1枚目の交代が柏木陽介から山口という守備的な交代だった。それをどう受け止めた?)本当はリードして代えたかったと思うんですよね。その矢先に点を取られたんで。本当は安定させたかったんだと思います。蛍に相手のエースを潰させようと。監督の中でそのプランが崩れたというのはあるかもしれないです。でも、それに対応するプランはなかったということで、蛍を入れざるを得なかったんでしょう。
(日本を必要以上にリスペクトしてくるアジアの国があるように思っていたが、イラクはそうではなかったように思う)それをこっちがやりたいんですよ。本当はこっちが向こうをバカにしたいんです。でも、あまりそれは今のところ戦術的に求めていない。それは僕やヤットさん(遠藤保仁)の真骨頂なので。悪く言えば、僕もその辺のスピーディーさが欠けるとか、いろいろな意見があるでしょうけれど、アジアレベルで言えば、徹底的に相手をバカにするようなプレーは得意としているところです。でもそれは今、求められてない。実際に怖い攻撃をもっとたくさん増やしていこうというのがこの代表のテーマなので。それはそれで、僕は前向きにチャレンジの気持ちで取り組んでいるし、実際、今までの自分になかったところに挑戦できていることにはやりがいを感じているので、否定的ではないです。ただ、本来はイラクみたいに、僕らをリスペクトしていないというのは腹立たしいことで、本当は向こうがうざいと思うぐらいに(ボールを)回さないといけないなというのは感じています。
(それは段階的なものなのか。この路線を貫いて強化していくのか?)監督と話す機会が僕だけではなく、みんな増えてきているし、ある程度、歩み寄っていくのが大事だと思います。やりたいことはもちろん伝えながら。監督がやりたいことは貫きながら。そこはちょっとずつ変わっていくと思います。