タレント集団が酷暑のインドで得た財産 U-17W杯へ、見せたクオリティーと可能性
00年以降に生まれたタレントぞろいの世代
来年のU−17W杯出場権を獲得した日本代表だったが、準決勝でイラクに敗れた(写真は6月) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
AFC・U−16選手権。アジアの16歳以下王者を決める大会にして、来年開催される17歳以下のワールドカップ(W杯)への出場権を争う大会は、そんな季節の変わり目のインド・ゴア州内にて、9月15日から10月2日までの日程で1次予選を突破した16カ国による争覇戦として開催されている。大会は4枚の世界切符の行方を決する準々決勝までの「世界切符獲得戦」と、準決勝以降の「アジア王者決定戦」の2段階に心理的に区分されている。「最低限の目標が世界大会出場。そしてアジア制覇」(森山佳郎監督)という形でターゲットを定めていたのは、別に日本に限った話ではない。そういう大会なのだ。
U−16日本代表は、2000年以降に生まれた選手たちで構成されるチーム。シドニー五輪の年に生まれ、02年のW杯日韓大会で1歳か2歳だった選手たちが軸である。初めてしっかり記憶している大会は、岡田武史監督の指揮下で16強入りした10年のW杯南アフリカ大会。そういう年の選手たちだ。そして「(小野伸二、遠藤保仁ら)黄金世代をほうふつとさせる」(西野朗技術委員長)と評されるタレントのそろった世代でもある。
「世界切符決定戦」で見えた課題
そして迎えた「世界切符決定戦」のクライマックスである準々決勝。対峙(たいじ)した相手は先日のロシアW杯予選で、A代表も苦杯をなめたUAEである。守備ベースで割り切ってカウンターを狙う中東スタイルの相手に対して、ここまで“ぬるい”相手とばかり試合をしてきただけに、苦戦したのは必然の部分もあった。それでも、難しい時間をよく耐え抜き、若き日本代表は敢闘。1−0の僅差ながらDF菅原由勢(名古屋グランパスU18)、瀬古歩夢(セレッソ大阪U−18)のセンターバックコンビの奮戦もあり、勝利を飾ってみせた。
「この世代全体に刺激と目標を与えるために、来年『世界大会』が見えていることは何より大事」(森山監督)と大きなプレッシャーを感じながらも勝ち切ったことは、チームにとって大きな財産となるものだった。「鳥肌が立った。今まで感じたことのないくらい、本当にうれしかった」(MF喜田陽=C大阪U−18)という勝利経験は、彼らの今後に生きてくるものでもあるだろう。
ただ、この試合の時点ですでに課題は見えていた。弱い相手に大爆発していた攻撃陣は沈黙。雨季の中での連戦で「デコボコのボッロボロ」(森山監督)になっていたピッチコンディションにも苦しみ、得意のドリブルやパスワークがミスになるシーンが増加し、自然とゴールに向かうプレーも減っていた。シュートミスも頻発した。「日本の選手は、ピッチ状態が悪いときに(踏み込む)軸足の感覚やイレギュラーバウンドのせいか、キックの質が極端に落ちる」というのは指揮官が大会前から懸念していた要素だったのだが、それが顔をのぞかせ始めていた。