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石川祐希が2度目の海外挑戦を決めた理由
経験を積むだけでなく“勝負”するために

「ディフェンスが良い選手だ」という印象を与えたい

イタリアでは「ディフェンスが良い選手だ」という印象を与えたいと石川は語る
イタリアでは「ディフェンスが良い選手だ」という印象を与えたいと石川は語る【坂本清】

 現在行われている秋季リーグ、12月に行われる全日本インカレを終えたら、石川は海を渡り、約3カ月イタリアセリエAのラティーナでプレーする。2014年も同時期にモデナに留学という形で加入したが、石川自身も「どこまでできるのか、力試しという感覚だった」と語ったとおり、勝負することよりも経験を重ねることの方が大きな目的だったのは否めない。


 ワールドカップやOQTも経験した今、1人の選手としてもっとレベルアップを遂げるために何をすべきか。石川が「もう一度海外で挑戦したい」と願ったのと同時期、OQTでベネズエラ代表の監督を務めたビンチェンツォ・ナッチが率いるラティーナからオファーを受けた。


 イタリア代表のルカ・ベットーリやフランス代表のイアルバン・ヌガペトなどを擁し、セリエAの中でも、まさにトップチームとも言っても過言ではないモデナ。そんなモデナと比べれば、強豪チームとはいえないラティーナだが、その分試合に出場するチャンスがめぐってくる確率は高い。


 経験するためではなく、勝負するために。石川は2度目のイタリア挑戦を決めた。


――今回は「勝負にいく」と言っていましたが、自分のどんなところをアピールしたいですか?


 もう大学3年生で、進路も決まってくる時期なので、海外のクラブから声をかけてもらえるような選手になるように、そのためのアピールもしなければならないと思いますし、そうなるには自分が活躍しないといけない。強いチームと対戦することができるので、そこで力を発揮できたら、と思うし発揮したいです。


――海外での経験を重ねることで、プレーにはどんな違いが出る?


 全然違いますね。一言でいうと、楽というか。全日本で海外のチームと戦う時にも「高いな」とひるまない。普段からその高さに慣れておくだけでも、気持ちの部分で気楽にできるというのはすごく大きいと思います。


 相手のブロックに対しての攻撃だけでなく、サーブも全然違います。自分自身としては特にサーブレシーブが課題だと思っているので、そこを経験できるのも大きいですね。攻撃はある程度できると思っていますが、上背があるわけではないので「ディフェンスが良い選手だ」という印象を与えたいです。ディフェンスが通用すれば次につながると思っています。


――卒業後は海外でプレーしたいですか?


 そうですね。できるならプロとして海外でプレーする、というのを考えていないわけではないです。企業へ行くのか、企業に所属しながら海外へ行くのか、それとも海外でプレーするのか。これから進路を決めるので、今は何とも言えないですが、もし日本の企業に所属することになったとしても、海外には行きたいと思います。


 実際に海外に行ってみて、余計にそう思うようになりました。今は日本よりも海外の方がレベルも高いですし、実際に世界でも勝っています。そういう選手たちの中でやりたいという気持ちはあります。

新たな覚悟を持って、再び世界へ

当たり前のプレーに手を抜かず、意識だけでなく結果を残すことが石川のテーマなのだという
当たり前のプレーに手を抜かず、意識だけでなく結果を残すことが石川のテーマなのだという【スポーツナビ】

 石川は初めてのイタリア挑戦を終えた直後、大学2年時の春季リーグでは意識やプレーの面で「物足りなさを感じることもあった」という。確かに、大学生同士の対戦であれば攻撃も守備も、さほど意識しなくとも普通にやれば決まるだろう。分かっていても、その現状にいら立ちを感じることもあった。


 だが、今は違う。どんな状況にいたとしても、やるべきことはあると思えるようになった。春季リーグの試合時も、その意識の高さは端々で見られた。


 たとえばこんなシーンがあった。相手の攻撃を味方の選手がレシーブしたものの、拾うのが精いっぱいだったため、低く鋭い軌道で石川にボールが飛んできた。他の選手は同じような場面でドリブルをしてしまうのが大半だろう。しかし石川は「やばい、速いのがきた」と内心は焦ったというものの、そんな素振りは一切見せず冷静にオーバーハンドで処理し、味方の攻撃につなげた。


「結構良いトスでした。(オポジットの大竹)壱青に上げたんですが、途中でセッターが打ってしまいました。それを打つか……。と思いましたけれど(笑)」


 攻撃時には、いかなる状況でも助走に入り、後方へ弾かれたボールを追いかけた後も全力疾走で前衛に戻り、相手の攻撃に備えてブロックに跳ぶ。決して派手なプレーではなく、ごく当たり前の数字に残らないプレーの数々ではあるが、当たり前だからこそ、質の高さも意識の高さも際立っていた。


 常に注目される存在だからこそ、当たり前のプレーに手を抜かず、意識だけでなく結果を残す。それが、今の石川のテーマなのだという。


「イタリアへ行く前にしっかり体づくりをして、戦える状態になったうえで技術を獲得したいと思っています。(イタリアから)帰ってきたらまた大学に戻りますが、相手の高さや攻撃面に関しては変わっても、サーブやサーブレシーブなど、個のプレーにおいては他の選手より抜けていたいし、『やっぱりすごいな』と思ってもらわないと、自分が海外へ行く意味がない。


 自分が結果を見せられれば、周りにも『海外へ行くのは良いことなんだ』という印象を与えられるだろうし、逆に結果が残せなければ『海外へ行ってもダメなんだ』と思われるかもしれない。日本人が海外で結果を残すのは難しいかもしれないですけれど、そこを自分が変えたいなという気持ちはあります」


 石川は新たな覚悟を持って、再び世界に挑もうとしている。

田中夕子

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など、女子アスリートの著書や、前橋育英高校野球部・荒井直樹監督の『当たり前の積み重ねが本物になる』では構成を担当

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