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マドンナジャパン、5連覇達成の裏側
女子野球ワールドカップ総括

決勝前夜に2016年版チームが完成

大会5連覇を達成し、胴上げされる大倉監督
大会5連覇を達成し、胴上げされる大倉監督【(C)SAMURAI JAPAN】

 9月10日、韓国・釜山。決戦前夜――。


 5連覇のかかった最終決戦を前に、侍ジャパン女子代表・マドンナジャパン20名は、大倉孝一監督(環太平洋大)の部屋に集っていた。監督が口火を切る。


「韓国で、こうして全員がそろってミーティングをするのは今晩が最後。全員で明日に向けての決意表明をしようじゃないか!」


 こうして、20名の選手たちによる「決意表明」が始まった。


「明日はこのメンバーで戦う最後の試合、悔いなく戦いましょう!」


「すべての力を出し切って、胸を張って日本に帰りましょう!」


「明日、最高の瞬間をみんなで味わいましょう!」


 約15分間、選手たちの力強い言葉が続いた後に大倉監督が締めくくる。


「今のみんなの言葉を聞いて、表情を見て、すごく安心した。2016バージョンのマドンナジャパンが、ようやく完成した。明日はすべてを出し切ること。10点取っても15点を奪うつもりでいくぞ。行けるところまで行って、出せるところまで出し切って、どんな展開になろうとも、やり切ろうぜ!」


 選手たちは大きくうなずく。決戦に向けて、静かに闘志がみなぎっていた――。

ライバル・アメリカ予選敗退の波乱

ヤクルト川端の妹・友紀は主に4番として打率5割、10打点。8試合81打点の強力打線をけん引した
ヤクルト川端の妹・友紀は主に4番として打率5割、10打点。8試合81打点の強力打線をけん引した【(C)SAMURAI JAPAN】

 マドンナジャパンの大会4連覇で迎えた「第7回WBSC女子野球ワールドカップ」は9月3〜11日にかけて韓国・釜山で行われた。大会序盤は3〜5日がオープニングラウンド全3戦。グループBの日本は3日にカナダ、4日はオランダ、そして5日にインドと対戦していずれも快勝。2次リーグ・スーパーラウンドへの進出を早々に決めた。


 予備日を挟んだ7日から10日にかけては決勝戦進出をかけたスーパーラウンドがスタート。グループA1位・ベネズエラ、2位・韓国。グループB1位・日本、2位・カナダ。グループC1位・チャイニーズ・タイペイ、2位・オーストラリアが同ラウンドに進出。


 2012年のカナダ大会、そして12年の日本大会で、マドンナジャパンと死闘を繰り広げたアメリカが予選敗退するという波乱の中で、日本代表は予選リーグで勝利したカナダ以外と4連戦を行い、こちらも危なげのない戦いぶりで全勝で決勝進出を決めたのだった。


 スーパーラウンド期間中には侍ジャパン特別顧問である王貞治ソフトバンク会長からメールが届いた。そこには、「アメリカが負けたことと、マドンナジャパンが勝ち進むことは関係ありません。相手がどこであろうが勝ち進むのみです。アメリカが負けたことは、明日は我が身です。初心に帰ってマドンナジャパンの野球をやり切るのみです」と綴られていた。

決勝は投手陣最年長の里が完投

投手陣最年長の里。決勝でも完投するなど3勝を挙げ、前回大会に続いてMVPを獲得した
投手陣最年長の里。決勝でも完投するなど3勝を挙げ、前回大会に続いてMVPを獲得した【(C)SAMURAI JAPAN】

 開催地である韓国には、多くの父兄や関係者、女子野球ファンが集っていた。国内外からの熱い声援に応えるべく、迎えたのが決戦の11日、対カナダ戦だった。


 大事な一戦を任されたのは、前回大会でMVPを獲得した大黒柱の里綾実(兵庫ディオーネ)。投手陣最年長としてチームを引っ張り、明るいキャラでムードメーカーとなった。ここまで2勝をマークし、名実ともにマドンナジャパン躍進の原動力となっていた。


 優勝のかかった大一番でも、里は落ち着いていた。「こんな大舞台で投げさせてくれる監督に感謝して、ここまでつないでくれたチームメイトに感謝して、野球を続けさせてくれた両親に感謝して、マウンドに上がりました」と、「感謝」の気持ちを胸に、持ち味である切れ味鋭いスライダーを武器にカナダ打線を翻弄。7回を投げてわずか2安打、無失点に抑えて2大会連続の胴上げ投手、今大会3勝目を挙げてMVPに輝いた。


「最終回、あと1人の場面では今までで一番のボールを投げるつもりでいました。優勝できて、本当にホッとしました。今回の5連覇をきっかけとして、日本でも世界でも女子野球が広まってほしいです」


 大倉監督率いるマドンナジャパンは強かった。監督の言う「すべてを出し切ること」を全選手が忠実に遂行し、前々回大会から続くW杯での連勝記録を21にまで伸ばした。前夜のミーティングで全選手たちが口にしていたように、すべてを出し切り、最高の瞬間を味わい、胸を張って日本に黄金カップをもたらした。


 おめでとう、マドンナジャパン! 20名の選手たちは最高で最強の野球選手だった――。

大会5連覇を達成したマドンナジャパンの面々。記念撮影では喜びの笑顔がはじけた
大会5連覇を達成したマドンナジャパンの面々。記念撮影では喜びの笑顔がはじけた【長谷川晶一】
長谷川晶一
長谷川晶一

1970年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、出版社勤務を経て独立。スポーツを中心にさまざまなノンフィクション作品を出版。主な著書に『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』(彩図社)、『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた!』(集英社)、『夏を赦す』(廣済堂出版)、『極貧球団 波瀾の福岡ライオンズ』(日刊スポーツ出版社)など。

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