新体操、日本に突きつけられた課題 強い選手の育成へ、強化策の転換を
垣間見せたスケール感
今季唯一となる日本開催の試合で、リスクの高い技に挑戦した皆川だったが、結果はついてこなかった 【写真:赤坂直人/スポーツナビ】
前半種目を終えた皆川は「日本で演技をする機会は少ないので、自分の持っている良いものを見せられたら、と楽しみな気持ちでいたが、それが欲になってしまい、演技中にその欲に勝つことができなかった。とても悔しい」と肩を落とした。しかし、落下以外の部分では、たしかに海外の選手たちの中でも見劣りしないスケール感や美しさがあった。ミスさえなければ、と思わせる演技ではあったのだ。
残る2種目へ向けて「明日は、欲を捨てて『踊っていて楽しい』という気持ちでやりたい。自分らしい演技を見ている人たちに届けたい」と意気込んだ最終日。クラブで17.966と全体5位の得点をマークし、リボンは一瞬首に巻きつくミスがあったものの、落下は防いだ。演技後に晴れやかな笑顔を見せた皆川だが、合計は68.215点。仮に落下がなかったとしても、全種目18点台以上をそろえてくる4位以上との差は大きいと言わざるを得ない結果だった。
「プレッシャーに勝てない」皆川の自己分析
大会終了後の会見で、皆川は「技の(成功)確率は上がってきていて、練習ではほぼミスなくできている」と言った。ただ、それが「本番になると演技中に不安も出てきてしまい、そのプレッシャーに勝てないでいる」と分析した。
リオ五輪を振り返っても、予選4種目とも落下はなかったが、得点が伸びなかった。「フープでのジャンプを連続にできなかったミスは大きかった。ほかの種目にも回転数が足りない、技の精度が低いなど、減点につながる細かいミスは多く、申告通りに演技をやりきる強さが足りなかった」と本人は言うが、それも、「4種目とも落下せずに決めたい」という気持ちが強すぎたことが原因だ。
アスリートが本番で実力を発揮するために必須とされる「平常心」を保つことが、今シーズンの皆川には難しかった。それが、五輪とイオンカップの両方での、ほろ苦い結果につながってしまった。
“新体操大国”ロシアで練習を積んだ3年半に及ぶ強化策は、皆川の実力の底上げという点では十分に成果を挙げたと言える。が、成績という結果で判断するならば、もう一歩、と言われても仕方がない。技術も能力も間違いなく伸びている。しかし、それを本番で発揮する「強さ」が欠如していたことは否めないのだ。