過去の痛い教訓を生かした4強進出 錦織、執念でマリーとの死闘制す

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 錦織圭(日清食品)が第2シードのアンディ・マリー(イギリス)を3時間57分の激戦の末に、フルセットの3−2(1−6、6−4、4−6、6−1、7−5)で破り、準優勝した2014年以来、2年ぶり2度目のベスト4進出を決めた。錦織の準決勝進出はグランドスラム4大会を通じても2度目。

4回戦で得たリターンへの自信

錦織がマリーを破り、2年ぶり2度目のベスト4進出を決めた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 錦織の執念の勝利だった。マリーとはこれまで8度対戦し1勝7敗と大きく負け越している。特に今年は3月のデビスカップ1回戦でフルセットを戦って敗れ、先月のリオデジャネイロ五輪では準決勝で完敗していた。この重い2敗の悔しさが、最後まで力を振り絞れた勝因だろう。

 第1セットの第1ゲーム、錦織はいきなり40−0と3本のブレークポイントを握りながら、このチャンスを逃した。立ち上がりはミスが続き、第4、第6ゲームをブレークされて第1セットを先行されてしまう。しかし、ビッグサーバーのイボ・カルロビッチ(クロアチア)との4回戦から、リターンへの自信を固めていた。

 粘り強い打ち合いから、ジワジワと敵の壁に穴をあける――そんな戦術が見えたのは第2セットの第3ゲームだ。錦織は0−15から、いずれも長いラリー戦を繰り広げて4ポイントを連取。この辺りからリズムをつかみ始めた。このセットでも第5ゲームを先にブレークされたが、第6ゲームをすぐブレークバック。それもラブゲームで跳ね返されたマリーには嫌な感じがよぎっただろう。このセット、マリーのファーストサーブの確率は56%に落ち、そこからのポイント獲得も64%と低く、セカンドサーブからのポイントは45%まで落ちている。錦織のリターンへの警戒感が、マリーの武器の一つであるサーブに影を落とし始めた。

ミスを恐れずに攻めた錦織

粘り強い打ち合いから、錦織は徐々にリズムをつかんでいった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 マリーはウィンブルドンで優勝し、その後のリオ五輪では金メダルを獲得するという連戦の夏を過ごした。激戦での蓄積疲労は、マスターズ大会を挟んでリオに出向いた錦織も同じ。肉体疲労もさることながら、精神的な疲労は2人ともピークに達し、ピン1本落ちただけでも試合が左右されそうな緊張感を醸し出していた。第2セット、雨による中断が2度あって、屋根が閉じられた。

「そこまでは攻め急いでいた感じがあって、ミスも多かったですね。その中断で気持ちを切り替えられたという点では、助かりました」

 第3セットは、両者の疲れを反映していきなりブレーク合戦の幕開け。錦織は第7ゲームを再びブレークされたが、崩れそうになる肉体にムチ打って第8ゲームをブレークバック、それを再びマリーが第9ゲームで崩すという目まぐるしい展開だ。すでに試合時間2時間を超えた第4セットに、微妙な動揺が走ったのは1−1で迎えた第3ゲーム、錦織のサービスゲームだ。マリーが長いラリー戦を3本とも奪って15−40。錦織がフォアハンドの逆クロスで1本目を凌ぎ、2本目のブレークポイントのラリー間に、会場の音響装置が衝撃音を発して中断、リプレーになった。この措置にマリーが過敏に反応した。ブレークできていたとは限らないが、疲労は極度に達し、精神的に追い込まれていたのだろう。この動揺を引きずって、錦織がこのセット6−1で追いついたのは大きい。

マリー相手に敗れた過去の教訓を生かし、攻め続けたことが、この結果を生んだ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 ファイナルセットに入れば、受ける側のプレッシャーは大きく、挑戦する側に利がある。錦織が先にブレークし、マリーが追いつく展開が2度あり、マリーが5−4まで持ち直した危ない場面もあったが、錦織はありったけの力を振り絞って守り切り、攻め切って2年ぶりのベスト4を勝ち取った。

 この日のウィナー数は錦織の48に対しマリーは29、アンフォーストエラーが錦織の60に対しマリーは46。ミスを恐れず、いかに攻めていたかが分かる。過去の痛い2敗の教訓を生かした鮮やかな4強進出だ。

(文:武田薫)

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