過去の痛い教訓を生かした4強進出 錦織、執念でマリーとの死闘制す
4回戦で得たリターンへの自信
錦織がマリーを破り、2年ぶり2度目のベスト4進出を決めた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
第1セットの第1ゲーム、錦織はいきなり40−0と3本のブレークポイントを握りながら、このチャンスを逃した。立ち上がりはミスが続き、第4、第6ゲームをブレークされて第1セットを先行されてしまう。しかし、ビッグサーバーのイボ・カルロビッチ(クロアチア)との4回戦から、リターンへの自信を固めていた。
粘り強い打ち合いから、ジワジワと敵の壁に穴をあける――そんな戦術が見えたのは第2セットの第3ゲームだ。錦織は0−15から、いずれも長いラリー戦を繰り広げて4ポイントを連取。この辺りからリズムをつかみ始めた。このセットでも第5ゲームを先にブレークされたが、第6ゲームをすぐブレークバック。それもラブゲームで跳ね返されたマリーには嫌な感じがよぎっただろう。このセット、マリーのファーストサーブの確率は56%に落ち、そこからのポイント獲得も64%と低く、セカンドサーブからのポイントは45%まで落ちている。錦織のリターンへの警戒感が、マリーの武器の一つであるサーブに影を落とし始めた。
ミスを恐れずに攻めた錦織
粘り強い打ち合いから、錦織は徐々にリズムをつかんでいった 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
「そこまでは攻め急いでいた感じがあって、ミスも多かったですね。その中断で気持ちを切り替えられたという点では、助かりました」
第3セットは、両者の疲れを反映していきなりブレーク合戦の幕開け。錦織は第7ゲームを再びブレークされたが、崩れそうになる肉体にムチ打って第8ゲームをブレークバック、それを再びマリーが第9ゲームで崩すという目まぐるしい展開だ。すでに試合時間2時間を超えた第4セットに、微妙な動揺が走ったのは1−1で迎えた第3ゲーム、錦織のサービスゲームだ。マリーが長いラリー戦を3本とも奪って15−40。錦織がフォアハンドの逆クロスで1本目を凌ぎ、2本目のブレークポイントのラリー間に、会場の音響装置が衝撃音を発して中断、リプレーになった。この措置にマリーが過敏に反応した。ブレークできていたとは限らないが、疲労は極度に達し、精神的に追い込まれていたのだろう。この動揺を引きずって、錦織がこのセット6−1で追いついたのは大きい。
マリー相手に敗れた過去の教訓を生かし、攻め続けたことが、この結果を生んだ 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】
この日のウィナー数は錦織の48に対しマリーは29、アンフォーストエラーが錦織の60に対しマリーは46。ミスを恐れず、いかに攻めていたかが分かる。過去の痛い2敗の教訓を生かした鮮やかな4強進出だ。
(文:武田薫)
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