世界との差を感じた男子バスケが再始動 日本が示すべき強化への道筋

小永吉陽子

東京五輪を見据えて28歳以下を招集

9月3日、日本代表の公開練習時に東野技術委員長(左)と長谷川HC(右)がFIBAの大会フォーマット変更を説明した 【小永吉陽子】

 この大会は東京五輪につながるスタートの大会とはいえ、他国のメンバー構成を見ると、そこまで重要視しているとは思えず、来年のW杯予選にベストメンバーをそろえればいいという各国の思惑が読み取れる。世代交代をキーワードに掲げている国が多く、今回はフィリピン、チャイニーズ・タイペイなどが世代交代を図った選出。中国は完全な2軍で、18歳もいれば、最終テストともいえる25歳以上の選手も選出されている。日本と同グループの韓国にしても、多くの初代表組を試験する。開催国のイランはOQTと主要メンバーが不動であることから優勝の本命に挙げられるが、そのイランも世代交代を始めているところだ。

 そんな中で日本も次世代を視野に入れつつの選出になった。今大会の選手選考について、長谷川健志ヘッドコーチ(HC)はこのように説明する。

「日本の場合は、東京五輪を戦うには若すぎても勝負ができず、ある程度キャリアのある選手層を中心に戦うことになります。とはいっても若手との競争も必要なので、渡邊雄太や八村塁を招集したいのですが、彼らは大学の事情で毎回呼べないことから、国内でいつでもW杯予選に招集できる選手層を作っておく必要があります。

 そのため今回は、東京五輪で主力となりうる28歳以下の選手を選考しました。32歳の太田敦也に関しては、OQTでプレータイムが少なかったことからセンターとして再招集。帰化申請が下りたアイラ・ブラウンは日本代表入りを熱望していたことからも、その意欲と力を試してみたいので選出しました」

 また東野技術委員長は「今年は底上げをして層を厚くするが、来年のW杯予選には30代から海外組や若手の融合をめざして選手を選出したい」との構想を明かしている。

 その中で日本としては、「常にアジアのベスト4以上を継続して、上位と戦ってキャリアを積み上げていく」(長谷川HC)ことが目標となる。

OQTの大敗で目覚めた日本。今後の道筋を立てる大会に

OQTでラトビアとチェコに完敗した日本。アジアチャレンジを今後の道筋を立てる大会にしなければならない 【Getty Images】

 今年度はOQTで10年ぶりに世界舞台を経験したが、ラトビアとチェコの前に完敗に終わった。この大会から東京五輪に向けてスタートを切るとはいえ、FIBAから常に評価される立場にあることを忘れてはならない。

 8月中旬、ジョージ・ワシントン大(以下GW)との親善試合で日本は「準備不足」(長谷川HC)を理由に3連敗を喫した。選手たちに聞けば、「リーグとOQTが続いたことから、8月は疲労からコンディションが作れなかった」「OQT後、集中が途切れてモチベーションを上げられなかった」などの声が上がっていた。

 しかし、準備不足なのはオフシーズンだったGWも同じこと。それなのに相手は基本的な動きができているということは、いかに日本の日常レベルが低いかということを物語っている。OQTにおいても同様。日本は国内リーグでは見せたことがないような速い展開を出し、当たりを強くしても、ヨーロッパ勢には太刀打ちできず、対応力も組織力も稚拙(ちせつ)な現状があった。これらは、10年ぶりの世界に出たことで、より明確な差として浮き彫りになった。

 これらの結果から言えることは、日常を戦うリーグと日本代表での強化の2本立ての見直しだ。この2年間、長谷川HCが就任してからは、アジア競技大会とアジア選手権の2大会でベスト4入りし、確かに戦う集団へと引き上げられてはきた。しかしそれは「9〜10月まで引っ張ってようやくひとつのチームになった結果」であり、世界に出れば「これ以上はメンタル強化だけでは解決できる問題ではなく、海外に出てゲームをすること」だと長谷川HCは長期スパンでの準備体制を要求している。

 それに対し、JBAの東野技術委員長は、「OQTでは世界との差を見せつけられ、今は目覚まし時計で起こされた状態。男子は何を武器にして戦うのか、OQTを検証してそこから作り始める」と言い、その体制作りとマンパワーの集結に着手し始めたところだ。

 今大会が東京五輪へのスタートになるというのであれば、この大会後には、東京五輪までどう向かっていけばいいのか、具体的な強化方針の道筋を示す必要がある。まずは、この大会で28歳以下の世代が東アジアの枠を勝ち取ってくることがミッションとなるが、大会の内容いかんでは、軌道修正という生ぬるいものではなく、「日本のバスケットボールとは何か」を見直すための根本的な大改革が必要になる。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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