フェラーリの進歩、されど敵の背中は遠く 今宮純のイタリアGPインプレッション
セバスチャン・ベッテルがフェラーリへ移籍して2年目のシーズン。未勝利のプレッシャーがのしかかる 【Sutton】
車列が、ふたつに分かれた。ピット寄り先頭にニコ・ロズベルグ、背後にキミ・ライコネンがぴったりつける。スタンド側先頭にはセバスチャン・ベッテル、続いてバルテリ・ボッタスがハミルトンを回り込んで抜き、追従。ティフォシ(熱狂的フェラーリファン)たちにはベッテルが一瞬前のように見えたのだが……歓声は、ため息に変わる。インをしっかり固めたロズベルグが先頭を守った。右、左と切り込みベッテルは次のコーナー「クルバ・グランデ」に向けてトラクションを重視。何度かそこでアロンソと並走し、ロッジアまでに抜いたことがある。
ロズベルグは落ち着いていた。相手がチームメイトでないと気負わず、あせらずに集中できる。今シーズン序盤から何度も見せた単独走になったときの強み、1周目1.052秒、2周目1.404秒、全力走ベッテルを、じわじわ引き離しにかかる。悲惨なスタートによって予選までの勢いを台無しにしたハミルトンは6番手から、まずダニエル・リカルドを抜き5番手、前には「ボッタスの壁」ができていた。
話をスタートに戻すと、後方で間一髪の場面があった。今季初めて予選Q3突破、10位につけたエステバン・グティエレスが加速せず、真後ろの12位フェルナンド・アロンソが大きく右に避けた。すると左から11位フェリペ・マッサが転進、またこれをコース右側いっぱいまで使って避ける。ベテラン同士だから問題なく、お互い「3ポジション・アップ」で切り抜けた。
ジェンソン・バトンは、そうはいかなかった。危険地帯の14位グリッドから、やや鈍い加速で集団の中にはまった。1コーナーはスクランブル交差点状態、外側に出て難を逃れるが順位を下げてしまい、「レズモ」でザウバーに押し出される。最後尾まで落ちて22番手から、298戦目の“モンツァ・ラストラン”、追突されて1周リタイアとなったスパの二の舞だけは免れる。