良くも悪くも主役となったハーフナー 痛恨のパネンカ失敗は「慢心」のため?

中田徹

「自信が慢心になった」

 引き分けに終わった試合後、ゼリコ・ペトロビッチ監督は、「PKを5回失敗しても別に構わないんだ。でも、あのハーフナーのPK失敗は、ADOデンハーグ(というチームのキャラクター)にふさわしくない。われわれはレアル・マドリーじゃない。(クリスティアーノ・)ロナウドでも、(リオネル・)メッシでもない。4−0の場面なら許されるけれど、1−1の場面で蹴るようなPKではなかった。私は怒っているわけじゃない。ただ、うんざりしているだけだ」とまくし立てた。
 
 ハーフナーはPK失敗のシーンを「慢心ですかね。1試合目に思いっきりPKをサイドに蹴った。多分、キーパーもその映像を見ていて、早めにどっちかに飛ぶだろうと思った。だから真ん中に緩い球を蹴ったんですけれど、ちょっと力が入りすぎた」と振り返る。プレーの判断は良かったけれど、プレーの実行でミスしたということだ。

 それにしても“慢心”とは、どういう意味だろう? ハーフナーの話を聞き進めていく。

「いつも練習が終わった時にPKの練習をしているんですけれど、ちょっといろいろやりすぎて、考え過ぎたというのもある。自分への自信が慢心になったのが悪かった」

“自信が過信になった”と言いたかったのだろう。

次節は首位フェイエノールトとの大一番

 私は開幕戦前日、ADOデンハーグの練習を見に行った。確かにチームの練習後、ハーフナーはGKを相手に、念入りにPKの練習をしていた。強いPK、コースを狙ったPK、その中に、パネンカもあった。こうした準備を重ねていたのだから、“慢心”ということはなかったはず。ただし、悔いは残る失敗だった。

「自分がPKを決めていれば2ー1で勝てたので、何日かは引きずるけれど、いい具合にインターナショナルマッチウィークに入る。しっかり切り替えて次にいきたいです」

“次”とは、現在4連勝中で単独首位に立つフェイエノールトとの大一番だ。もし、ハーフナーがこの移籍市場でADOデンハーグを去らなければ、この敵地のビッグゲームでジャイアント・キリングを狙いにいくことになる。移籍かどうか、その可能性を「フィフティーフィフティーです」とハーフナーは語っていた。

 ちなみにハーフナーに対する『アルへメーン・ダッハブラット』紙の採点はチーム最高タイの『6.5』。マッチレポートはほぼハーフナーのPK失敗にまつわる記事で埋まっているが、1試合を通じての評価は高かった。今季3ゴールのハーフナーは、得点ランキングで4ゴールのロリス・ブローニョ(スパルタ・ロッテルダム)、ダフィ・クラーセン(アヤックス)に次ぎ、3位タイである。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント