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熱戦続いた今夏の甲子園を象徴する3つのキーワード
54年ぶり2度目の優勝を果たし、優勝旗を手にした作新学院の山本拳輝主将
54年ぶり2度目の優勝を果たし、優勝旗を手にした作新学院の山本拳輝主将【写真は共同】

 作新学院高(栃木)が54年ぶり2度目の優勝を果たした第98回全国高校野球選手権大会を、3つのキーワードから振り返る。

2回戦スタート組の優勢

 ベスト4の作新学院高、明徳義塾高(高知)、北海高(南北海道)、秀岳館高(熊本)はいずれも大会5日目第3試合以降に初戦を迎える2回戦スタートのチームだった。これは49代表制が定着した1978年以降では初めてのこと。ベスト8まで広げても、鳴門高(徳島)と常総学院高(茨城)を除く6校が2回戦からの登場となっている。


 1回戦が17試合(34校)に対し、2回戦が初戦のカードは8試合(15校)と少ない。それを考えると、ここまで顕著に傾向が出たのは珍しいと言える。2回戦スタートは初戦まで待たされる反面、時間が楽になり、地方大会の疲れを取ることができるメリットがある。実際に選手からも、「時間があったので、疲れは完全に取れました」という声が聞かれた。


 優勝した作新学院高はこの間に紅白戦を行うなど、「強くなれる期間」と捉えて追い込んだ練習をしている。各チーム時間があることをプラスと考えて調整したことが2回戦スタート組の躍進へとつながった。さらに3回戦以降では1回戦スタート組と比べて1試合少ないことが、疲労などの面で有利なポイントとなった。『優勝するためには2回戦スタートを引くクジ運』が来年以降も大きな要素となるかどうか、注視してきたい。

難しい先発投手起用

 今大会注目投手と言われたのが、藤平尚真(横浜高/神奈川)、寺島成輝(履正社高/大阪)、高橋昂也(花咲徳栄高/埼玉)。この3投手に共通するのは、敗れた試合でいずれも先発していないことだ。3者三様の理由で先発をしなかったわけだが、結果として敗れたことが、準々決勝以降の他チームの監督の戦略に多少なりとも影響を与えたことは否めない。


 3校で先発した投手は横浜高は石川達也、履正社高は山口裕次郎、花咲徳栄高は綱脇慧。それぞれエースに負けない素質を持ち、チーム内でも信頼できる立ち位置にいる控え投手が先発した。しかし結果は序盤に失点し、不本意な形で最終的にエースにマウンドを託すことになった。試合に敗れ、インタビュールームで泣き崩れる控え投手の姿を見ると、責任を被っているようで痛々しかった。あらためて先発して試合を作る難しさを感じるとともに、ここで真っ先に『お前の責任じゃないんだ』と声をかける指導者がいてほしい。


 もうひとつエースが先発しないことで思わぬ作用をもたらしたのが相手チームだ。3回戦の履正社高vs.常総学院高を例に挙げると、寺島ではなく山口の先発だったことを知った常総学院打線は勢いづいた。さらに打撃でも注目される寺島がスタメンにいないことで、常総学院バッテリーは心理的に楽になった。中盤に寺島がリリーフして打線にも加わったが、それまでの6番ではなく9番に入ったことが、常総サイドには幸いした。「(9回のピンチでも)寺島投手の打順がまだ遠いことで、配球が楽になりました。もし6番だったら、全然違っていたと思います」と捕手の清水風馬は話している。野球は己だけではなく、相手と戦うスポーツ。その観点からも、エースを先発させない時、自チームの打順を含めてどう戦略を練るか。監督の覚悟と手腕が試される。


 では、どんな形が良いのか。そのヒントが準々決勝での常総学院高の投手起用。エース鈴木昭汰が先発し、3回を投げて2失点で降板。4回から控えの倉田希がリリーフした。結果として敗れたが、鈴木が試合を作ったおかげで、倉田は5回1安打、自責点0と好投した。エースに蓄積された疲労を考えると完投は難しい。その時、それまでの試合で経験がある先発として試合を作ってもらった方が、リリーフする他の投手もリズムに乗りやすい。そう感じることができる采配だった。その代わり、どんな展開であってもエースを途中で交代させる覚悟が必要だと考える。

松倉雄太
松倉雄太
 1980年12月5日生まれ。小学校時代はリトルリーグでプレーしていたが、中学時代からは野球観戦に没頭。極端な言い方をすれば、野球を観戦するためならば、どこへでも行ってしまう。2004年からスポーツライターとなり、野球雑誌『ホームラン』などに寄稿している。また、2005年からはABCテレビ『速報甲子園への道』のリサーチャーとしても活動中。