男子やり投げ32年ぶりの入賞ならず 新井涼平よ、新たな夢の放物線を描け
リオの夜空に吸い込まれた希望
男子やり投げ決勝を11位で終えた新井涼平。目指していたメダル獲得はならなかった 【写真:ロイター/アフロ】
リオデジャネイロ五輪の陸上競技、男子やり投げ決勝が現地時間(以下同)20日に行われ、日本の新井涼平(スズキ浜松AC)は前半3投で79メートル47を記録したが、8位以上に入ることができなかったため4投目に進めず、11位に終わった。かつてない注目を浴びたことは、うれしかった。しかし、自身の希望にも、周囲の期待にも応えられなかった。ふがいなさに襲われた新井は「すいませんでした」と言葉を絞り出した。
つい3日前、同じ場所で意気揚々と話していた選手が、悔し涙を流していた。新井は18日の予選で、ボーダーラインの83メートルを最初の1投で軽々とクリア。昨年の世界選手権で惜しくも9位と、あと一歩で入賞を逃した悔しさをバネにして、エンジン全開だった。間違いなく、調子は良かった。しかし、決勝では1投目が77メートル98で9位、2投目で79メートル47に伸ばしたが10位に落ち、最後は3投目が力なく刺さって72メートル49。予選で投げた84メートル16を超えることはおろか、記録を80メートル台に乗せることすらできなかった。
「試合が始まっても修正できなかった」
こだわってきた足の運びができなかった。助走でリズムがつかめず、手足のバランスが崩れた。足から得る反発力を上半身に伝えられず、記録は伸びなかった。けがが理由なら、悔しくても納得はできる。ベストの記録を出しても届かなかったのなら、諦めもつく。しかし、問題のない状態であるはずなのに、感覚はズレてしまい、修正が効かなかった。試合中に修正していくことは珍しいことではない。しかし、あまりにたくさんのポイントがズレてしまっては、限られた時間の中で直し切れない。新井は「技術が安定していないから、こういうことが起こる」と自らを戒めるように話した。
最後の投てきとなった3投目は、シンプルに足の力を使うことだけを考えて投げたが、流れた上体を倒れることで抑えるようなフォームとなり、力は出せなかった。なぜ、感覚が狂ってしまったのか。分かっていれば苦労はしないが、新井は悔やむように何度も自分の投てきを振り返った。
鉄人・室伏を継ぐ投てき界のヒーローに
初の五輪出場ながら決勝に進んだ新井。この悔しさをバネにできるか 【写真:ロイター/アフロ】
日本陸上界にとっても、新たなヒーロー候補である。投てきと言えば、これまでは何と言っても「世界の室伏広治」だった。04年アテネ五輪、11年世界選手権の男子ハンマー投王者であり、前回のロンドン五輪でも銅メダルを獲得した日本が誇る鉄人の功績は、あまりに大きい。それだけに、今年6月の日本選手権を最後に引退する意向を示したことによる喪失感は大きかった。種目こそ違えども、偉人が去った投てき界に新たなヒーロー候補が登場したことで、今大会のように見る者は多くの楽しみを受けられる。
新井は「日本でたくさんの人が応援してくれたのに、申し訳ない気持ちでいっぱいです」と最後まで頭を垂れたが、予選でキラリと光らせた潜在能力への期待は変わらない。来年の世界選手権で、あるいは4年後の東京五輪で、入賞を果たし、メダル獲得へと目標を引き上げることを、新井は期待され続けるだろう。今回の悔しさをバネにしたリベンジのチャンスは、必ずやって来る。
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