剛腕・寺島を攻略したサインにベンチは…記事にならなかったコメント集

楊順行

履正社の剛腕・寺島を攻略した常総学院。チャンスでのあるサインにベンチ一同は驚きを隠せなかったとか…。今回は記事にならなかったスコアブックの余白を埋めた涙あり笑いありのコメントをお届けします 【写真は共同】

 夏の甲子園は前日でベスト4が決まり、19日は休養日。ここまでの45試合、スコアブックの余白には、記事にならなかったメモがあふれている。その中から拾った、涙あり笑いありのコメントをお届けします。
■「サヨナラの打球だけはよく見えた」

 第8日、4点ビハインドの9回裏に、5点を挙げて劇的なサヨナラ勝ちを果たした東邦高(愛知)・森田泰弘監督。2死からのミラクル4連打は、球場が一体となった大声援も味方につけてのものだった。
「いやぁ、すごかったですね。奇跡です。県大会では芯に当たらなかった打線が、甲子園に来てよくなったのは確か。それにしても……目が悪いので、打球が見えないことが多いんですが、(サヨナラ打の鈴木)理央の打球だけはよく見えた。あれは一生、忘れません」
■同郷の先輩は金メダリスト!?

 好守・巧打の鳴門高(徳島)のショート・日野洸太郎は、藍住町の出身。リオ五輪のバドミントン女子ダブルスで金メダルを獲得した、松友美佐紀選手は先輩にあたる。

「そうなんです。知りませんでしたが、記者の方に教えてもらいました。準決勝からは、地元でパブリック・ビューイングがあったらしいです。あ、でも、福島(由登・2008年夏に優勝した大阪桐蔭高のエース)さんが先輩だというのは知っています」
■2年連続“黙とう”は史上初!?
 
「私にとって今日が甲子園20試合目なんですが、なぜか朝からプレッシャーがかかり、一番緊張しました。71年前に長崎に原爆が落ちた日ですし、私自身長く指揮を執り、故郷でもある長崎の高校(長崎商高)が相手ということもあるんでしょうか」
 とは第3日、8月9日に長崎商高に5対3で勝利した山梨学院高・吉田洸二監督。

 関連してもうひとつは、大曲工高(秋田)との1回戦を6対1で突破した花咲徳栄高・岡崎大輔主将の話。
「1回戦に勝ち、組み合わせ抽選で第9日の第2試合を引いてすぐ、”ああ、15日だから黙とう試合だな”と。2年だった昨夏の3回戦は第10日第2試合で、やはり黙とうにあたりました。2年連続黙とうなんて……史上初かもしれませんね」
 事前に、戦争と平和に関する調査研究や展示を行う施設『ピースおおさか』を見学して臨んだ樟南高(鹿児島)との2回戦も、6対3で勝利した。
■「夢の続きはありませんでした…」

 敗因は私です、というのは第4日、その樟南高に1対9で敗れた京都翔英高・浅井敬由監督。昨年就任したばかりのチームを、初めて夏の甲子園に導き、
「出られたのが夢みたいでしたが、夢の続きはなかったということです」
■スリーバントスクイズに「えっ?」

 常総学院高(茨城)は、履正社高(大阪)との3回戦を7対4で制し、3年ぶりのベスト8に進出。1、2回に5安打を集中して5点を奪うと、5回には大会屈伸の左腕・寺島成輝からイニング4犠打で2点という緻密さも見せた。同校が2003年夏に全国制覇したときの主将だった松林康徳部長は、
「5回の1死二、三塁で、石川(大)にスリーバントスクイズのサインが出たときは、”エッ?”と思いましたよ。石川はバントがヘタですから。だけど佐々木(力)監督は、そういうマイナス要因に目をつぶるのがうまいんですね。木内(幸男)監督もそうでした。そして実際、石川のスクイズが決まったときは、ベンチのみんなして”うわっ、決まったよ……”と目を見合わせました」
■“作新の風”が後押しして4戦連発

 第12日の準々決勝。作新学院高(栃木)の入江大生一塁手は、木更津総合高(千葉)の好投手・早川隆久から初回、センターに先制アーチを放つ。大会記録に並ぶ、3試合連続アーチだった。
「ちょっと詰まったんですが、”作新の風”が後押ししてくれました。県大会の決勝でもホームランを打ったので、4試合連続です」

 ちなみに同校の校歌には、“作新の風 吹きおこる”という一説がある。

 さあ、明日は準決勝――。
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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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