全日本女子、米国との差は何か? 大山加奈が見た五輪バレーの戦い

田中夕子

準々決勝での敗退が決まり肩を落とす荒木(右端)ら 【Getty Images】

 リオデジャネイロ五輪のバレーボール全日本女子は日本時間17日、準々決勝の米国戦に臨んだ。2大会連続のメダルを目指した日本だったが、米国に0−3とストレート負けを喫し、準々決勝で姿を消した。

 世界ランキング1位、グループBを1位で通過した米国と、日本の差は何だったのか。ロンドン五輪に続くメダル獲得を逃した日本の課題がこの試合から見えた。2004年のアテネ五輪に出場し、現在はバレーボール中継の解説などを務める大山加奈さんに語ってもらった。

ハイセットを打ち切れていた

 日本にとって最終戦になってしまった米国戦。結果はとても残念でしたが、内容は今大会の中で一番良かったのではないでしょうか。
 特に攻撃では、序盤から荒木(絵里香)選手を積極的に使っていただけでなく、トス自体に伸びがあり、これまでは短めのトスをクロスに打つしかなかった石井(優希)選手や長岡(望悠)選手が、ストレートへ伸びやかに打てる場面が何度もありました。ラリー中や勝負所で何本かトスが低くなってしまうシーンもありましたが、全般的には余裕を持って打ち切れていたように感じられました。

 そしてもう1つの大きな収穫は、レシーブが崩された場面や、相手の攻撃を切り返す際のハイセットをしっかり打ち切れて、得点につなげていたことです。
 小さい日本人だから低く速いトスを打たなければならない、と考えられがちですが、低くて速いトスは打つポイントが限られてしまうために選択肢が限られ、思い通りのコースに力の乗ったスパイクを打つのはとても難しい。たとえトスが高くても、いくつもの選択肢がある状況をつくればスパイクは決まる。それだけの選手がそろっています。

 出場国の中で平均身長が低い日本は「高さで負けた」と言われることが多くありますが、決してそうではありません。ハイセットのように高いトスでも自分のタイミングやポイントで、余裕を持って打つことができれば、パワーや高さも補えるのです。

アンダーカテゴリーからの大きな課題

大山さんは米国との一番の違いとして「ブロック」を指摘した 【Getty Images】

 では米国との差は何か。一番の違いはブロックでした。

 日本はミドルの選手がヤマを張って相手のスパイカーに釣られて跳んでしまうため、サイドのブロックが1枚になってしまうケースが多く見られました。米国はアキンラデウォ選手やアダムズ選手など、ミドルがライトへ移動し高い打点から打つスパイクの本数が多いにもかかわらず、日本のブロックは1枚しかいない。これではなかなか相手の攻撃を防ぐことはできません。

 米国はトスが上がってから移動するリードブロックが徹底されていて、なおかつ横への移動も速い。サイドステップが多い日本は移動のスピード自体が遅くなるだけでなく、ジャンプの高さを出すために一度しゃがみこまなければならないため、クロスステップで素早く左右へ移動する米国と比べると、その差は歴然としていました。

 攻撃と同様に、ブロックも「高さで負けた」と言われることが多いですが、サイドステップとクロスステップといったように、基本的な違いが大きな差につながっています。
 これはトップチームだけの問題ではありません。ジュニアやユースなど中学生や高校生などアンダーカテゴリーから取り組まなければならない大きな課題です。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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