収穫は石井の復調と攻めのサーブ 大山加奈がアルゼンチン戦を解説

田中夕子

ミドル、中央からのバックアタックを増やせ

この日サーブが好調だった日本。宮下らが多くのサーブポイントを挙げた 【写真は共同】

 今大会で大きな課題でもあるミドルブロッカーをどれだけ使えるかという点に関して、アルゼンチン戦では第1セットから宮下選手が荒木(絵里香)選手、島村(春世)選手にトスを上げ、ミドルを使おうという姿勢は見られました。2、3セットもこれまでの試合と比べて、ラリー中にもミドルを使っていたのはとても良かったのですが、まだまだ使えるはずです。

 リードを得て、余裕ができた段階でミドルを使うのはもちろんですが、第1セットからもっとミドルを多く使えると、相手にも「ミドルがある」と印象付けることができるので、攻撃が楽になります。ミドルの攻撃、中央からのバックアタックをもっともっと増やしてほしいですね。

 さらにアルゼンチン戦での収穫は、石井(優希)選手の復調でしょう。ここまでの4試合では、サーブレシーブで狙われることもあり、どこかプレーに自信がなく、スパイクの時も恐る恐る打っているような印象がありました。アルゼンチン戦はサイドアウトからの攻撃だけでなく、レシーブが崩された状況からのハイセットなど、しっかりと振り切って、石井選手の持ち味を生かしたスパイクが打てていました。グループリーグの最終戦で調子を取り戻せたことは、石井選手にとってはもちろんですが、チームにとっても本当に心強い。準々決勝でもアルゼンチン戦のような、思い切ったプレーが見たいですね。

 そしてもう1つ、アルゼンチン戦はサーブも走っていました。(アルゼンチンは)あまり守備力が高いチームではありませんが、サーブポイントも多く、それぞれが狙ったコースに良いサーブを打てていました。どんな相手であれ、日本の武器はサーブです。アルゼンチン戦のような攻めのサーブを、準々決勝以降の戦いでも打ち続けることは絶対条件と言えるのではないでしょうか。

米国の攻守の要・ヒルに注意

米国の攻守の要であるヒル(左)を抑えるために、日本は引き続きサーブで攻める必要がある 【Getty Images】

 グループリーグが終わり、いよいよ次は準々決勝。トーナメント戦になるこれからは、負けたら終わりの戦いが始まります。

 そして、日本が準々決勝で対戦するのは米国。2014年の世界選手権を制した強豪国であり、今大会もすべてのプレーのレベルが高く、個の力だけでなく組織としても非常に優れた本当に強いチームです。

 グループリーグを5戦全勝と波に乗る相手に対し、日本が勝つために大切なのは、やはりサーブ。攻守の要であるキンバリー・ヒル選手をどれだけ潰せるか。そして高い攻撃力を誇るミドルブロッカーをどれだけ封じられるかというのが大きなポイントです。

 日本はグループリーグを2勝3敗と苦戦しましたが、裏を返せば、もう失うものはない。強い相手に対してぶつかるしかない状況でもあります。チャレンジャーとして割り切って、思い切り、やってきたことを出し切ることができれば勝機はあるはずです。まずはサーブから、積極的に攻め続けてほしいですね。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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