ADOデンハーグが見せた粘りの逆転勝利 太田とハーフナーの日本人対決はお預けに

中田徹

スタメン落ちも、前を向く太田

日本人が所属するチーム同士の対戦となったフィテッセとADOデンハーグの試合。ハーフナー(左)は、出場するも太田はスタメン落ちとなった 【Getty Images】

 オランダリーグ第2節のフィテッセ対ADOデンハーグは、両チームに日本人選手がいるとあって、試合会場のヘルレドームには多くの日本人が観戦に訪れていた。しかし、プレシーズンからずっと主力メンバーだったフィテッセの太田宏介はこの試合では出場機会がなかった。ADOデンハーグのハーフナー・マイクは、太田と仲が良い。試合後、太田のがっかりした姿を見つけると、「フィテッセの監督は(日本人対決なのに)空気を読まないね」と冗談交じりに語っていた。

 試合前日も先発組で練習したという太田が、スタメン落ちを聞かされたのは試合当日のミーティングだったという。

「個人的には、マイクがいるというのもあるし、今日は知り合いの日本人がたくさん来てくれていたので、試合に出たい気持ちが強かったです」(太田)

 突然スタメンを外された理由を、太田は聞かされていないという。ヘンク・フレーサー監督は試合前のインタビューで、左サイドバック(SB)のポジションを太田からアーノルド・クライスバイクに変えたことに関して、「戦術的な理由だ。ADOデンハーグはロングボールを使ってくるだろうから、高さのあるクライスバイクでいくことにした」と説明していた。

 そのクライスバイクはADOデンハーグの右ウインガー、ルベン・スハーケンを完封した上、“3人目のセンターバック”として中に絞って守備をした時も安定していたから、勝ち負けを別にすればフレーサー監督の采配は当たったのかもしれない。

 だが、太田とすれば先発する気満々でスタジアムに来たのにスタメンを外されたショックがある。しかし、引きずってもいられない。その気持ちを太田はこう表した。

「こういうこともあるんだなと思います。監督も、もちろん考えがあって選手を変えていると思う。それを尊重しながら、練習からアピールしていかなければいけないと思います」

ADOデンハーグは開幕から2連勝

 試合はフィテッセが終始押し気味に進め、22分にストライカーのリッキー・ファン・ボルフスビンケルのゴールで先制した。ADOデンハーグのセンターバック、トム・ブーヘルスデイクも「フィテッセはパスがティックティックと回って、すごく良いチームだった」と感じていたほどだった。

 それでも試合はADOデンハーグが勝った。ヒーローは2ゴールを挙げた20歳の左ウインガー、ゲルバネ・カスタネール。31分に左SB、セルゲ・ウィルフリード・カノンのクロスを左足ボレーで合わせて1−1にすると、61分には鮮やかなカウンターから勝ち越しゴールを決めた。

「(カスタネールは)若いけれど、すごいポテンシャルを持っています」(ハーフナー)

 61分のゴールは、味方のクリアボールを、敵のマークを背負いながらハーフナーが懸命にキープし、しっかりアーロン・マイエルスにつないだのが起点となった。マイエルスはフィテッセのDFラインの背後にある大きなスペースにミドルパスを出し、マーカーとのスプリント競争に勝ったカスタネールがフリーで抜け出したのだ。

 この日のハーフナーは相手ゴール前では必ずしも脅威になっていたわけではなかったが、セカンドストライカーのように中に入ってくるカスタネールの動きを殺さないような連係を見せていた。

「彼は爆発力のある選手なので、そういう選手はたまには休ませておいた方がいい。この前のゴー・アヘッド・イーグルス戦(3−0)もそうだったのですが、自分が彼のポジションに走ってカバーします。普段は俺が(前線で)サボる役なんですけれど、サボる役が2人いたら誰かが動かないといけない。しょうがないから俺が動くしかない」(ハーフナー)

 前節はハットトリックを狙ったにもかかわらず、終盤でベンチに下げられ、不服そうだったハーフナー。だが、この日はハードワークで疲れたこともあってか、89分に納得の交代となる。その時、古巣フィテッセのサポーターからも送られた拍手はうれしかったと言う。

 同時刻に行われた試合で、アヤックスがローダJCを相手に勝ち点を取りこぼした(2−2)。現地時間19日のエクセルシオール対ADOデンハーグは地味なカードながら、2連勝中のチーム同士の戦いとなる。つまり、上位対決を意味する“トッパー”だ。

「今日の試合では『フィテッセが勝つ』という予想が多い中、粘って勝つことができた。次の試合もしっかり粘りたい。うまくいけば、この前のゴー・アヘッド・イーグルス戦みたいに簡単に勝てると思う」と、ハーフナーは次節に向けて意気込みを語った。
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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