ブロック向上もスパイカー生かせず 大山加奈が見た女子バレー・ロシア戦

田中夕子

スパイカーを生かすためのパスやトスを

好調を維持する迫田。日本は、「スパイカーを生かす意識をさらに高めるべき」と大山さんは指摘した 【写真は共同】

 これまでの3戦と比べ、ロシアの高さに対して日本のディフェンスはとてもよく対応できていました。

 ロシアの攻撃はさほど複雑ではなく、高い打点を生かすためにトスも高いので、ブロッカーはトスを見てから動くことができます。そのため、両サイドやオポジットの攻撃に対してもしつこく2枚、3枚ブロックでついていくことができていたので、うまくワンタッチを取っていました。ブラジル戦ではブロックに当たってもコート外へ弾かれることが多かったのですが、ロシア戦ではブロックに当たったボールが自チームのコートでつながっていましたし、手の出し方など、短い期間の中で修正されていました。また、ブロックが効果を発していたために、レシーブを守る位置が明確になり、木村選手や石井(優希)選手、佐藤選手や宮下(遥)選手がよくつないでいました。

 高さがある相手に対しては、読みで動くのではなく、どこに上がるかを見てから反応するブロックで十分対応できる。それが実証された試合でもありました。

 攻撃面に関しては、途中出場の迫田(さおり)選手がとても良かった。先発の長岡(望悠)選手も決して悪かったわけではありませんが、相手ブロックはストレートを空け、抜けたコースはリベロが拾うシフトを徹底していました。得意なコースへのスパイクがなかなか決まらず、クロスにも打つなど工夫していましたが、相手のディフェンスが1枚上手だったと思います。

 迫田選手は常に開いて、思い切り助走を取ってフルスイングで打つ選手なので、1点取るだけでチームに勢いを与えられる選手です。今大会は途中から投入されていますが、非常に調子が良いです。また、迫田選手の攻撃を生かすために木村選手や佐藤選手が1本目のパスを高く上げ、しっかり助走を取らせる間を作っていることも大きい。

 迫田選手に限らず、スパイカーはしっかり開いて助走を取って跳んで打つことがとても重要です。予選グループリーグも5戦目になり、疲労がたまってくる時期ではありますが、助走をしなければ跳べず、スパイクも打ち切れません。1本目のパス、2本目のトスはゆっくり余裕を持たせて、スパイカーを生かせるようにする。基本的なことかもしれませんが、全員に意識してほしいポイントです。

アルゼンチン戦ではもっとミドルを

 グループリーグ最終戦、アルゼンチンとの試合で勝ったほうが決勝トーナメントへ進出します。ロシアのように高さやパワーはないチームなので、ロシア戦のようにサーブで攻めて、ブロックでワンタッチを取り、レシーブでつなぎ、スパイカーが余裕を持って攻められる状況を作る。それが最大のポイントではないでしょうか。

 そして、ロシア戦ではディフェンス面はかなりの成果が見られましたが、気になるのはオフェンス、特にミドルの打数の少なさです。荒木(絵里香)選手に至っては、最初の2セットで1本もトスが上がってきませんでした。その前のパスや相手ブロックなどさまざまな要素があるのかもしれませんが、ミドルが使えないとサイドにマークが集中するのでかなり厳しい。特に第1セットで1本も上がってこなかった、というのは大きな課題ですし、スパイカーにすればトスが上がってこないというのは、周りの想像以上に心が折れるものです。アルゼンチン戦ではもっと前半から勇気を持ってミドルを使ってほしい。そうすれば、もっと攻撃に余裕が生まれるはずです。

 負けたら終わりという状況に追い込まれ、プレッシャーの中で戦うアルゼンチン戦。精神的な余裕を持って戦うことは非常に難しい試合です。だからこそ、パスは高く返して助走する間を取り、トスもゆっくり、スパイカーは十分な助走を取って思い切って打ち、ブロックされたボールはフォローする。バタバタせず、余裕を持ったプレーで臨んでほしいですね。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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